きょうも、当ブログをお訪ねくださいまして、ありがとうございます。国の内外の不安は去りませんが、皆さまにはすこやかな一年となりますよう祈っております。
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『ポトナム』1月号の時評、相変わらずのテーマですが、寄稿しましたので、お読みいただければ幸いです。
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昨秋、俵万智が紫綬褒章を受章したが
もういい加減にして」の声も聞こえるが、やはり、私は、書きとどめておきたい。
俵万智(六〇)が二〇二三年秋の紫綬褒章を受章した。多くのマス・メディアには、彼女のよろこびの言葉が報じられていた。短歌関係の雑誌は、どう扱うだろうか。
紫綬褒章は、内閣府によれば「科学技術分野における発明・発見や、学術及びスポーツ・芸術文化分野における優れた業績を挙げた方」に与えられるとある。
一九五五年に新設された紫綬褒章は、これまでも多くの歌人たちが受章している。近年では、二〇一四年栗木京子、一七年小島ゆかり、今年の俵万智と女性が続いたが、一九九四年馬場あき子以来女性は見当たらず、一九九六年岡井隆、一九九九年篠弘、二〇〇二年佐佐木幸綱、〇四年高野公彦、〇九年永田和宏、一一年三枝昂之、一三年小池光と続いてきた。女性が続いて、歌壇の現状がようやく反映されるようになったとよろこんでばかりいられない事情を知るのだった。
そもそも、紫綬褒章は、いったい誰が決めるのだろうか。
「褒章受章者の選考手続について(平成一五年五月二〇日)(閣議了解)」によれば、根拠法は、なんと「褒章条例(明治一四年太政官布告第六三号)」とあり、「明治」なのである。
褒章の種類は、紅綬、緑綬、黄綬、紫綬及び藍綬で、受章者の予定者数は、毎回おおむね八〇〇名とし、春は四月二九日に、秋は一一月三日に発令する、とある。
衆参議長・最高裁判所長官・内閣総理大臣、三権の長をはじめ、各省庁大臣その他の内閣府外局の長などが褒章候補者を内閣総理大臣に推薦し、内閣府賞勲局との協議、審査を経て内示され、閣議で決定される。最初の候補者リスト作成は各自治体、関係団体になるのだろう。
春の発令日はかつての「天皇誕生日」、昭和天皇の誕生日であった。秋の発令日は「明治節」、明治天皇の誕生日で、戦後は「文化の日」という祝日になった。
要するに、紫綬褒章は役人たちが選んでいるので、「文書」に幾つかの押印があったとしても不問に近い。歌人を対象にした民間の賞には、選者や選考委員が示されるのが常である。
新憲法のもとでは、国家による勲章や褒章制度は否定されたはずである。私も結論的には不要と思っている。というより、法の下の平等に反し、人間のランキングを助長する害悪とも思っている。さらに、選考過程をみると、役人サイドで“綿密な審査”がなされていることもわかる。文化勲章、文化功労者、芸術院会員にしても、形式的な選考委員会は立ち上げられるが、役人サイドのリストの承認機関に過ぎない。文化功労者選考委員十人は、毎年九月に任命され、会は一度しか開催されない。メディアはこぞって受章者の栄誉を称えるが、誰がどのように選んだかには、触れようとしない。(『ポトナム』 2024年1月)
初出:「内野光子のブログ」2024.1.1より許可を得て転載
http://dmituko.cocolog-nifty.com/utino/2024/01/post-df4528.html
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 https://chikyuza.net/
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