半澤健市氏の『山本太郎政権の可能性 - 参院選2019の結果をみて -2019年7月26日』を拝読した。半澤氏は問う:《山本太郎政権は夢物語だろうか》。しかし「実際は,山本内閣というより野党連合政権への「れいわ」の少数名入閣が現実的であろう」とも指摘される。半澤氏のこの文章を読んでそういう可能性が高いと小生も考える。
さきに「今年の十大ニュ-ズと参院選分析」で文芸評論家故加藤周一の選挙を見る視座,A改革願望とB現状維持願望を紹介した(AとBとは矛盾する)。中国で買った水晶玉は「れいわ新選組」が1200万票とるだろうと予測して大外れであったが,小生は,加藤のもう一つ視座C既成政党不信(脱イデオロギ-)を紹介しなかった。なぜなら,太郎氏は政治的無関心層あるいは投票所に足を運ばない人から支持を得ようとしていた。そのとき,彼らが既成政党不信の人々であるとレッテル貼りをされることが「れいわ新選組」への得票率を上げるかどうか,自信がなかったからである。
その心配は杞憂であった。当落が判明した後でも支持者は席を立たず,翌日も詰め掛けた。熱狂已まず。そして太郎氏は初めてTVに呼ばれた(そもそも総研,玉川氏司会)。久しぶりのTV出演で「れいわ」が何をしたいのか十分に説明しきれなかった。それはさておき,出演者の高木氏がAの現状維持願望について質問した。自公支持者の話であるから太郎氏は返答に一瞬詰まった。
低投票率の中で,自民が約二百数十,公明が百万,立憲民主が二百万以上票を落としたと言った分析が出ていない中でA現状維持とかB改革願望とか言ってもショウガない話であるが,C既成政党不信・離れは明瞭であろう。区議をもつN党も票を伸ばした。区議を持たないれいわは大躍進。区議を持たないオリ-ブの木と,地方議員をもつ幸福の科学は議席を得ることはできなかった。こう見てくるとC既成政党不信は明らかであり,『8つの緊急政策』が無関心層や浮動票層に強く訴えたことは否定できない。しかしそれだけではない。
4月10日の「れいわ」の立ち上げ以来,3ヶ月で3億円を集めた。新聞広告が必要だと訴えたら残り十日ぐらいで1億円増えて4億円となった。すなわち,「れいわ新選組」支持者の広がりは尋常ではない。Bの改革願望とCの既成政党不信は明らかである。ゆえに半澤氏の「山本太郎政権の誕生」に賛成する。
しかし中野晃一上智大教授が指摘したように政党要件を満たした「れいわ新選組」には茨の道(primrose pass)が待ち受けている。例えば政党になったとすれば既成政党であるからC既成政党不信に直面する可能性があるという。中野氏の考えにも小生は賛成する。しかし『8つの緊急政策』が実現するまで既成政党(Anの現状維持願望と重なる)ではないがゆえに,かえって熱狂(ユ-フォリア)は続くのではないのか。そう考えたとき,半澤氏の太郎政権により賛成するのである。それを「人民戦線」と呼ぶかどうかは,言葉の定義によるだろう。
追加:Cの既成政党不信は『戦後の日本』加藤周一+P.R,ド-ア監修,講談社現代新書 一九二頁 一九七八)で読むことができる。
追加2:中野教授の発言はデモクラシ-タイムス「参議院選を総括する ウィークエンドニュ-ス 20190726」の中で拝聴できる。