北朝鮮の核武装にたいする関係諸国の対応の中で、日本の安倍政権の対応には、きわだった特徴がある。「外交的解決」と「武力による解決」について、選択肢として許容しているか(○)・排除しているか(×)を、最近の言動から見てみると、以下のようになる。
「外交的解決」に反対しているのは、6カ国の中で、日本の安倍政権だけである。
外交的解決 武力による解決
アメリカ・トランプ大統領 ○ ○
北朝鮮 ○ ○
中国 ○ ×
韓国・文在寅大統領 ○ ×
ロシア ○ ×
日本・安倍政権 × ○
アメリカ・トランプ大統領は、「正しい条件があれば、金正恩委員長を招いて会う」と言い、北朝鮮も「条件が整えば会う」と応じている。ティラーソン米国務長官は、さらに踏み込んで、北朝鮮が核・ミサイル開発を放棄すれば「四つのノー」――(1)体制転換を求めない(2)金政権崩壊を求めない(3)朝鮮半島再統一を急がない(4)朝鮮半島を南北に分ける北緯38度線を越えて米軍が北朝鮮側に侵攻しない――を保証すると表明した。
すでに米朝の極秘協議が、5月8~9日の2日間、ノルウェーのオスロで開催され、北朝鮮外務省の崔善姫北米局長と米国の元政府高官らが話し合った[日本経済新聞5月11日]。
中国は、アメリカに催促されて、石炭輸入・原油輸出の縮小などの経済的圧力を強める姿勢を見せてはいるが、一貫して米朝対話による解決を主張している。
韓国の文在寅新大統領は、選挙中に公言した「まっさきに金正恩と会う」に「中米のあとに」と条件をつけたが、「対話による解決」、さらには南北宥和を求めている姿勢は一貫している。
これに対して日本の安倍政権は、どうか。北朝鮮について口を開けば「制裁強化による非核化」である。
5月11日安倍首相は・韓国で南北宥和派とされる文大統領とのはじめての電話会談で「北朝鮮問題については、平和的、外交的に解決することが重要だが、対話のための対話では意味がない。北朝鮮の非核化に向けた具体的な行動を示すことが必要だ」と南北会談に釘を刺した。
安倍首相は、シリアに対する巡航ミサイル攻撃と巨大爆弾MOABのあとの4月24日のトランプ大統領との電話会談について、「私からは、すべての選択肢がテーブルの上にあることを、言葉と行動で示すトランプ大統領の姿勢を高く評価した。いまだに危険な挑発行動を繰り返す北朝鮮に強く自制を求めていくことで完全に一致した」と語り(朝日新聞2017年4月24日)、その直後に、自衛艦の米艦との合同演習と米艦護衛を決めた。トランプ大統領の「北朝鮮に対してはすべての選択肢がある」を支持すると言うが、支持するのはその中の経済制裁や軍事的威嚇など「圧力をかける」手段だけであリ、「米朝会談」に向けての動きに期待する言葉は、まったく出てこない。
北朝鮮の非核化は、現下の重要問題であるが、安倍政権は、奇妙なことに、米朝直接対話によるその外交的解決を望んでいない。むしろ米朝会談に反対している。
安倍首相は「北朝鮮の脅威」がつづく方が(日本を国防軍を保持する普通の国家にするために)好都合だ、と考えているのではないか。北朝鮮のミサイル発射時にくり返される安倍政権のほとんど欣喜雀躍といえる諸行動――NSC招集、非難声明、アラート発信、迎撃ミサイル配備、…――を見ていると、このように考えたくなる。
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