●日銀 新たな金融緩和策決定 当座預金金利マイナスに NHKニュース
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160129/k10010390301000.html
●日銀トレードが生む、マイナス金利の異常さ 週刊東洋経済(政治・経済) 東洋経済オンライン 経済ニュースの新基準
http://toyokeizai.net/articles/-/60244
1.マイナス金利は、今まで日銀に預けてある銀行の預け金には適用されません。マイナス金利はこれから日銀がオペによって銀行などに資金を供給する際の金利に適用となります。つまり「限界部分」についてマイナス金利となるのです。日経記事の「日銀の決定内容のポイント」という黒線四角で囲んだ中には「日銀当座預金を3段階に分割し、それぞれプラス・ゼロ・マイナス金利を適用する」とありますが、これと記事本文中の「銀行がすでに日銀に預けた当座預金の金利は0.1%のままで据え置く、銀行が新たに積み増す当座預金にマイナス金利を適用する」という記述と矛盾します。おそらくは、ゆくゆくそうしていきますということなのだろうと思われます。マイナス金利は、さしあたり、「▲0.1%」でスタートするようです。
2.これを受けて、各銀行が今後、自分たちの資金をどのように動かすのかは少し見
ものです。ただ、銀行にとっての採算性から見ますと、一方ではマイナス金利があるので、もはや日銀への預け金を増やしたりはしないと思われるかもしれませんが、その資金を他の銀行等に預けますと、それに対応したBIS規制上の自己資本を要求されますから、必ずしも表面金利だけの単純な話ではありません。また、預け先の民間銀行には信用リスクがありますから(日銀にはありません≒正確には自国の中央銀行には信用リスクはない、他国の中央銀行には信用リスクはある)、リスクマネジメント上も問題が出てきます(クレジットライン他)。
日銀による銀行への資金供給は、①公定歩合貸出(ほとんどなし=シンボル的)、
②手形オペ(国債担保)、③公開市場操作(公開オペ)と言われる銀行からの国債等の買入、がありますが、昨今は③が巨額になっています。ですので、銀行が公開オペでの日銀による資産買上げに今後応じていくのかどうかが注目です。銀行の有利子資産などを日銀オペに対応して売却してマイナス金利の日銀預け金にしておいても意味がないので、消極的になるのではないかと推測されます。だとすると、日銀は今後、どうやって銀行などに資金供給を増やしていくのでしょうか。この「マイナス金利」は、金融の量的緩和の自己否定のようにも見えます。
ただ、銀行と日銀の関係もいろいろあり、銀行は日銀の顔色をうかがいながら動くことが多いので、ある程度のマイナス金利の日銀預け金をやむを得ないと考える可能性もあり、何とも言えません。
3.私は今回の「マイナス金利」を、日銀による量的緩和政策の行き詰まりを示すものととらえています。何故なら、上記で申しあげたように、今後、民間銀行への資金の追加供給が難しくなるからです。また、政策当局としての日銀から見ますと、せっかく供給した資金が日銀への預け金になるだけで、ちっとも景気をよくするような使われ方がされないから、もっと積極的に企業活動などに使われるように、銀行からの預かり金にマイナス金利を付けることで、日銀の口座からその銀行資金を追い払おう、というわけですから、今までの日銀の資金の大量供給は効果がなかったと言っているようなものです。日銀に意味もなく預けられている銀行の資金のことを「ブタ積み」といいますが、まさに日銀の量的金融緩和とは「ブタ積み」預金の増大政策に過ぎなかったということです。
4.しかし、その「ブタ積み」に対してはこれまで0.1%の金利が付けられていたのですから、100兆円を超えていると思われる日銀への預け金には、100兆円×0.1%=1千億円以上もの、一種の補助金がノーリスクで日銀から銀行等へ交付されていたことになります。銀行の今の預金金利は0.1%未満=0.01%くらいでしょうから、銀行は労せずして坊主丸儲けをしていたわけで、マイナス金利はともかく、日銀への銀行の預け金については、もっと早い段階でゼロ金利にしておくべきでした。何を今頃、という感じです。
5.そもそもの間違いは、景気回復を金融政策を柱にしてやろうとしている「アベノミクス」の旧「3本の矢」が経済政策として誤っているということです。いくら金融を緩和しても景気は良くならないということは、いわゆるゼロ金利が始まって(1990年代の終わりころ)、もうかれこれ15年近くになりますが、事態は少しも変わらないことを見ても明らかでしょう。その理由は簡単で、日銀の「ブタ積み」を増やしたところで、それが銀行の貸出増加には結びつかないからです。
現代経済社会の通貨は、いわゆる現金ではなく、銀行に預けられている預金が大半です。およそ8割以上が「預金通貨」です。現金は、その預金を引き出す際に発生するもので、常識的には一般国民の消費生活に必要な分だけが流通しますので、金額は限られていますし、そもそも現金の流通量を日銀がコントロールすることは難しいのです。現金とは「払出結果通貨」とも言えるもので、一般国民の現金使用の需要に応じて発行され、従ってまた、あまり景気に左右されず安定的な発行量になります(この辺を勘違いしているおバカな経済学者が多いので要注意です。現金通貨の発行量を日銀が直接コントロールできると思っている、実態経済知らずのオバカ学者です)。
一方、預金通貨は銀行の信用創造=貸出によって新たに創りだされます。つまり預金通貨の方は伸縮的なのです。そしてもちろん、景気が良くなれば預金通貨の量は増大し、景気が悪くなれば減ります。その預金通貨の量を日銀が金融政策を通じてコントロールするということは、つまり、日銀が銀行の貸出を増やしたり、減らしたりする、そのコントロールをしているということを意味します。昔は、日銀のスタンスが厳しくて、常に銀行はカネが足りない=日銀がカネを供給してくれれば、いくらでもそれをもとにして新規の貸出でき、その結果、預金通貨が増えていく、そういう高度成長の時代がありました。その頃の日銀の金融政策は非常に有力・強力で、景気の循環をコントロールする重要な手段の一つだったのです。
しかし、考えていただきたいのですが、いくら銀行側にカネがじゃぶじゃぶあっても、資金需要が企業の側、あるいは国民の側になければ、そんなものは「宝の持ち腐れ」になってしまうでしょう。事実、そうなって、もう15年にもなるのです。つまり、現状は企業の側に資金を投資して事業を拡大しようとする経済的なインセンティブがなく、大半の企業は内部留保を膨らませたり、配当や役員・幹部職員の報酬に資金を使っているにすぎないのです。そんなところに金融緩和をしても無意味なのは、誰が見てもわかることです。つまり、景気が悪いから資金需要に乏しく、従って、銀行貸出が伸びないのですが、日銀がやっていることは、そういう環境下で、銀行貸出を伸ばすことによって景気をよくしよう、ということですから、うまくいくわけがありません。いくら量的緩和だ、マイナス金利だ、といって「一人芝居」をしてみても、そんなものは日本経済の景気には「カンケーネー」ということなのです。
6.この愚かな金融政策を提唱し続けているのは、マネタリストを中心にした市場原理主義アホダラ教信者の経済学者たちです。彼らは「インフレターゲット」論という、これまた珍妙丸出しの「似非政策論」をセットにして「インフレ目標」を日銀が決めろ、それを断固として実現するという態度を示せば、インフレ期待が高まり、実体経済もよくなると、ほんとうにアホダラ宗教のようなことを言い続けて今日に至っています。まあ、言ってみれば、根性モノの少年漫画のようなことを真顔で言い続けて、いまでもその政策方針を変えないで15年も続けているということです。まさに、アホ、アホダラ教です。「これこれのインフレ率を実現するぞ」と日銀が言えば、そのインフレ率が実現する????? あんた頭がおかしいのとちゃうの? ではありませんか? これが現代経済学の現実です。(現代経済学は、金融政策の有効性と財政政策の無効性を主張しています。アホダラ教の完成形態ですね)
7.金融の量的緩和は狙いとする政策効果がないだけでなく、弊害が伴いますから、トータルで見れば日本経済にとってはマイナスです。たとえば預金者に入るべき金利がゼロになってしまいます。また、資金調達に節操がなくなり、バブルを生みやすくなります。更には、いわゆるアナウンスメント効果により、日銀は容易にはこの量的金融緩和政策から抜け出せなくなります。いわゆる「出口政策」の困難性です(アメリカのFRBは今これで悩んでいます)。また、日銀は今では国債以外の信用リスクが伴うような資産を買い入れているようですが、これは従来の日銀の方針(信用リスクの一定レベル以上あるものは基本的には受け入れない、また、信用リスクを取る時はダブル・クレジットにする(日銀買入手形の裏書など))にも反し、中央銀行の信用度低下につながりかねません。中央銀行の信用度低下の結果は、恐ろしいほどの「円安」です。
8.私は、今日の日本経済に蔓延するデフレ=物価が横ばいかややマイナス、は、インフレよりは「マシ」だと思った方がいい、と考えています。何故なら、今の状態の日本経済をインフレが襲えば、これはもう、一般の消費者・国民の生活は大変なことになるからです。1970年代の「狂乱物価」の時代を思い出してほしいのですが、あの頃はまだ、日本は経済成長の時代でしたから、それなりに賃金も上昇し、インフレの苦しみは幾分かは緩和されました。しかし、今日のような景気が悪い中でインフレが襲って来れば、これはもう大変で、賃金が上がらない・収入が増えない中で、物価がどんどん上がれば、首が締まってしまいますね。おそらく、インフレが来るとすれば、景気が悪い中での物価上昇=いわゆるスタグフレーションとなるでしょうから、これは一般の消費者・国民を苦しめるだけになってしまいます。(企業にとっては、デフレよりもインフレ状態の方が心地いいかもしれません)
9.上記で申しあげた「インフレターゲット」論者のもう一つの愚かさは、インフレを政策当局=日銀がコントロールできると思い込んでいる点です。しかし、過去数十年間、日銀がインフレ率=物価を適切にコントロールできたことなど一度もありません。つまり、仮にインフレが襲ってくるとすると、それは、とめどもなくどんどん進むインフレ=つまり、生活費の不断の上昇と賃金・収入の横ばいが続き、TVでは日銀と政治家が、なんとかしますの言い訳を続ける、という事態を意味しているのです。
今のデフレ時代に代わり、このコントロールできないインフレ時代がやってくると
すると、おそらく私が想像するに、相当程度の円安が伴っているだろうと推測しま
す。その時には、日銀は金利を相当程度引き上げているでしょうから、今度はそれに
よる景気のマイナス効果が大きくなって、景気もイマイチ、ないしはよろしくない、
ということになり、一部の巨大企業を除いて、消費者・国民や中小零細企業は四苦八
苦状態に陥るでしょう。この円安とインフレのセットは、もしそうなったら、非常に
大変です。今の日本経済では、その苦しい状況から抜け出るのは非常に難しく、長期
にわたって消費者・国民を苦しめることになるだろうと思われます。従って、そんな
ことになるくらいなら、今のデフレ状態の方がまだましである、ということです。
10.ではどうすればいいのか、まずはマネタリストをはじめとする現代経済学者ども=市場原理主義アホダラ教信者たちを一掃いたしましょう。簡単です。バカにしておけばいい、ブーイングをすればいいのです。まずはバブル崩壊以降、ずっと日本経済をおかしくしてきた市場原理主義の考え方を徹底して放棄する、これが重要です。
竹中平蔵を追い払う、と考えていただければいい。(それよりも、今の日本の大学の経済学部・経営学部・商学部をいったん全部廃止するのがいいかもしれません)そのうえで、日本経済の真の意味での構造改革を少しずつ進めていくことです。税と財政支出の中身を変えること、そしてその経済政策が有効に働くための法的環境づくり、を政治家と官僚は着手しなければいけません。目標はたくさんありますが、優先されることは、産業構造の転換とビジネススタイルの切り替え、そしてそれを遅れて追いかけるライフスタイルの転換です。この辺の話は長くなりますから、別の機会にいたしましょう。脱原発や再生可能エネルギーの活用本格化、農林水産業の復興、貿易政策・資本政策の抜本転換、地方分権改革の徹底と住民自治制度の拡充、コンクリートから人へ、などなど、たくさんの具体的な政策メニューが思い浮かびます。脱原発一つできていない状態で、「ええー」という印象が無きにしも非ずですが、私はそう難しいことではないと思っています。有権者・国民が政治的に覚醒すれば、すぐにでもできますし、政治的に覚醒すれば、経済的にも覚醒を伴って、社会的な物事の良し悪しの判断も今よりはずっと上手にできるようになるでしょう。有権者・国民の「政治的覚醒」、これがキーポイントです。
今の状態は、この私が申し上げている方向とは真逆の、滅亡への道を駆け足で走り抜けている状態です。このままいけば、まもなく日本の有権者・国民は、ひどい目にあうことになると思われます。経済政策・金融政策もまた、しかりです。いつまでも、あると思うな、親と円高、ですから。