朝鮮・韓国のキリスト教詩人 尹東柱(ユン・ドンジュ)の詩

 去年、取材で知り合った某出版社の記者の方からもらった年賀状にユン・ドンジュ(尹東柱)の「序詩」が添えられていた。彼の詩集『空と風と星と詩』の序に置かれた詩である。この詩はユン・ドンジュが1942年から留学した同志社大学(文学部英文科に在籍)のそばの同志社中学の隣の礼拝堂の横に建てられた碑に刻まれた詩である。私は不明にして今まで彼のことはまったく知らなかった。

    死ぬ日まで 天を仰ぎ
    一点の恥ずることなきを
    葉あいを縫いそよぐ風にも
    わたしは 心痛めた
    星を うたう心で
    すべて 死にゆくものたちを
    愛しまねば
    そして わたしに与えられた道を
    歩みゆかねば
    今宵も 星が風にーーむせび泣く

  (人により邦訳が異なるが、ここで引用したのは私がもらった年賀状に記されたまま。)

 なお、同志社大学のホームページの「今出川キャンパス建物紹介」の中で「尹東柱詩碑」と題する記事が写真付きで掲載されている。
http://www.doshisha.ac.jp/information/facility/buildings/ 

 念のため、この記事に記された尹東柱(ユン・ドンジュ)の紹介文を書き出しておく。

 「尹東柱(ユン・ドンジュ)はコリアの民族詩人であり、クリスチャン詩人です。同志社大学分学部に在学中の1943年7月14日、ハングルで詩を書いていたことを理由に、独立運動の疑いで逮捕されました。裁判の結果、治安維持法違反で懲役刑を宣告され、福岡刑務所に投獄され、1945年2月16日に獄死しました。この詩碑は永眠50周年の記念日(1995年2月16日)に、同志社校友会コリアクラブにより建立されました。」

 その後、調べたところでは、ユン・ドンジュは1917年、満州で開拓民の子孫として生まれ、抗日運動の拠点・北間島で少年時代を過ごした。1938年、ソウルの延禧専門学校(現・延世大学校)文科に入学。在学中に朝鮮語授業の廃止、創氏改名(彼は平沼東柱と改名)に遭遇した。
 1942年来日し、立教大学英文科に入学したが、考えるところあって、この年の10月、同志社大学文学部英文科に入学。1943年7月、同大学に在学中に治安維持法違反で京都下鴨警察署に逮捕され、1945年2月16日、福岡刑務所で獄死した。27歳。ハングルで詩を書き、反日独立思想を鼓吹したというのが罪状だった。厳寒の中、体力を消耗させた上の絶命と思われる。

 前掲の詩からは、激情ではなく、卑屈を甘受してまで生き延びることを拒む澄み切った人間の意思がしんしんと伝わってくる。検索してみると、彼の詩集や伝記がかなり出版されている。ゆっくり読みふけってみたい。そして、まもなくやってくる彼の66回忌に静かに哀悼を表したいと思う。

近くの公園の高台から見下ろした親水公園(2011月4日撮影)

初出:「醍醐聡のブログ」より許可を得て転載
http://sdaigo.cocolog-nifty.com/

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
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