本当の恐怖(アベノミクスの正体は?)

安倍自民党の勝利以来、内外からは、日本「右傾化」の象徴と受け取られて「極右」や「右翼」のレッテルを貼られて、脅迫神経症的に批評されて来ましたので、私も「右回転」等と、ついつい「空気」に負けてレッテル貼りの共犯になってしまいましたが、本当に怖いのは、「右翼」的なその主張でしょうか。

私が、本当に怖いのは、実は「土建国家」の再来なのです。 この言葉、旧来の官業癒着体質に拠る国土破壊を齎した土建業全盛の時代の批判を、一語で表した字句ですが、バブル崩壊後には、景気対策として国債を無尽蔵に発行しつつ公共事業での利権擁護(土建業ゼネコン救済は勿論)のためにばら撒かれました。 国債一千兆円の残高は、この後遺症です。 マスゴミは、借財の事由を、恰も社会福祉の経費であるかのように摩り替えて攻撃対象の転換を図っていますが、事実は相違します。

安倍自民党が、再び、この土建業へのばら撒きが狙いで、日銀に国債の大量発行の裏づけを迫っている、としたならば、事態は、憂慮すべき展開になることでしょう。 選挙結果を「55年体制」の再現と皮肉られた、直言癖のあるエコノミスト・ブロガーの池田信夫氏は、本音は「ばら撒き」だ、と云われます。

「安倍氏がインフレ目標にこだわるのは、来年夏の参議院選挙に負けると、5年前と同じように退陣を迫られるためだろう。自民党の集票部隊である土建業者に公共事業を発注するためには、国債を大量に発行するしかない。 ―中略 ―要するにインフレ目標というのは目くらましで、本音はバラマキ公共事業のための財政ファイナンスなのだ。」

http://www.newsweekjapan.jp/column/ikeda/2012/12/2-2.php

政治に屈服した日銀は2%のインフレを起こせるのか エコノMIX異論正論

池田 信夫 Newsweek 日本版 2012/12/21

更に、私の恐怖心を煽るのが、米国の国債市場でバブル局面が生じていることです。 龍谷大学教授の竹中正治氏は、「10年物国債の実質利回りはマイナス0.2-0.4」とされ、「異常な事態」が「転換局面」となり「ハードランデング的な調整局面になるリスクが高い」と指摘されます。

http://jp.reuters.com/article/jp_forum/idJPTYE8BK04V20121221

コラム:米国債バブル崩壊懸念と日本への波及リスク 竹中正治 龍谷大学経済学部教授 Reuter ロイター 2012/12/21

アメリカ発の国債バブル崩壊の波が、インフレ傾向になった日本に押し寄せたとき、こんな筈では無かった、と安倍自民党に票を投じた国民が天を仰いで嘆いてみても、「とき既に遅し」となるのです。 願わくは、安倍総裁に自制心を発揮して頂き、IMFの警告に耳を貸して借金大国が地獄へ落ちる新たな借金の増加を止めて頂きたいものです。 日本では、IMFの対日本向け警告は、殆ど報道すらされませんが。

蛇足ですが、多数の金融・投資のプロが、世界的な金融緩和の後では、「インフレが来る」と指摘されています。 当然のことでしょう。 例えば、東京海上アセットマネジメント投信の平山賢一氏の「2013年 インフレ到来 プロが明かす資産防衛5つのポイント」では、出版は自民党が圧勝する前ですので、アベノミクスに関しての言及は無いものの、インフレに備えるための資産運用が必要と説かれます。 ただし、その方法は、万人が実行可能なものではありません。

私の運用経験から云えることは、投資理論の基礎から揺らいでいるのが現状でしょう。 資産と時間の分散投資とか、ドルコスト平均法に依る長期投資とかの従来の理論の多くが、グローバル化した市場では通用しなくなっているのではないか、と思われるのです。 これは平山氏の御指摘のとおりでしょう。 問題は、それに替る確固とした理論が無いことです。