本間宗究「ちきゅうブッタ斬り」(13)

著者: 本間宗究 ほんまそうきゅう : ポスト資本主義研究会会員
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オリンパス問題について

  今回の「オリンパスによる飛ばし問題」については、私自身も、たいへん驚かされたが、その理由としては、「まだ、こんな問題が存在していたのか?」ということであり、かつ、「数年前に処理されていたのに、何故、今になって問題が発覚したのか?」ということだからである。また、「飛ばし」が行われるようになった原因として、「不良債権の発生」が挙げられるのだが、このことは、バブル崩壊後、「日本株の下落」により、いわゆる「財テク」と呼ばれる投資方法に「大きな損失が生まれた」ということである。

  そして、この時に、正直に損失を報告していれば、その後の問題は発生しなかったのだが、実際には、「損失隠し」が行われたのだった。しかも、この時には、数多くの民間企業が、「飛ばし」を行ったのだが、このことは、すでに、「過去の問題」だと考えていたのである。別の言葉では、「この時の不良債権が、その後、どのような状態になったのか?」が、今回の大きな注目点であり、実際には、「民間企業」から「民間銀行」へと移行し、現在では、「政府や中央銀行が、メガバンクとともに、大量の不良債権を抱えている」という状況になっているのである。

  具体的には、「簿外取引」による「デリバティブ」や、「大量の国債発行」、あるいは、「中央銀行のバランスシートを、大幅に膨張させた」ということにより、「国家やメガバンクが、大量の負債を抱えている」という状況のことである。そして、この時の注目点としては、「価格が上昇している間は、不良債権が発生しない」という事実が指摘できるのだが、一方で、「価格が値下がりすると、今回のギリシャやイタリアのように、コントロールが不能になる」という状況も想定されるのである。

  つまり、「大量の不良債権が、国家や中央銀行に発生する」ということだが、このような状況下で起きたことは、やはり、「損失を隠そうとした」ということであり、また、「国債価格の下落が起きないように、買い支えを行う」ということだったのである。しかも、今回は、「民間企業の飛ばし事件」と比べても、はるかに大きな金額が、不良債権となっていることが考えられるのだが、今回の「オリンパス事件」のように、「一旦、問題が発覚すると、ほぼ瞬間的に、市場の信頼を失う」というような状況も想定されるようである。

つまり、「日米の国債価格が下落を始める」というような状況になると、その時には、現在、言われ始めた、「大きすぎて、救えない」という事態が、はっきりと見えてくるようだが、この時の解決策としては、すでに、「紙幣の増刷」しか残されていないのである。
(11月15日)
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大きすぎて救えない

  現在、世界的に言われ始めたことは、「Too Big To Fail」という「大きすぎて潰せない」ということではなく、「Too Big To Bail」という「大きすぎて救えない」ということである。つまり、民間企業や民間銀行の場合には、「大企業が潰れると、金融システムが崩壊する」という懸念が存在したために、「国家や中央銀行が救済することにより、金融システムの崩壊を防ぐべきだ」という考えが主流だったのである。そして、結果としては、「大量の国債発行」や「中央銀行のバランスシートの大膨張」、あるいは、「デリバティブの大膨張」などにより、「金融システムは、かろうじて、守られた」という状況だったのである。

  しかし、このことが、更なる問題を引き起こし、現在の、「ギリシャ」や「イタリア」の国家債務問題へと発展してきたのだが、今後の注目点としては、「誰が、これらの国々を救うのか?」ということであり、実際には、「金額が大きすぎて、誰も、救うことができない」という事態が懸念され始めたのである。そして、この時に起きることは、「国債金利の急騰(価格の急落)」でもあるのだが、現在では、「基盤の弱い国から、連鎖的に、金利上昇の波が押し寄せている」という状況が見て取れるのである。

  また、今後の展開としては、「ドミノ的に、最後の段階にまで行き着く」という状況が考えられるようだが、このことが、「日米の国債ツインタワー」であり、また、「英米が大量に保有するデリバティブ」のことである。具体的には、「1000兆円もの規模の国債残高」であり、また、「約6京円のデリバティブが、英米のメガバンクにより、簿外で保有されている」という状況のことだが、この時に気を付ける点は、「価格が安定している限りは問題が起きないが、一旦、暴落が始まると、一挙に、不良債権が発生する」ということである。

  つまり、「バランスシートの膨張」ということは、「負債と資産とが、同時に、増加する」ということを意味しているのだが、問題は、「資産が値下がりした時に、負債金額との間に、大幅な差額が発生する」ということである。そして、この差額が、いわゆる「不良債権」と呼ばれているのだが、現在では、「国家」や「中央銀行」に、「大量の不良資産」が存在していながらも、「最後の貸し手」が存在しないのである。そのために、今回、「バーナンキFRB議長」が、「中央銀行が、最後の貸し手となり、本格的な資金の供給を行う」ということを考慮しているようだが、このことが意味することは、「大インフレにより、全ての借金を、ご破算にする」ということである。(11月15日)

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔opinion0701:111129〕