本間宗究「ちきゅうブッタ斬り」(15)

著者: 本間宗究 ほんまそうきゅう : ポスト資本主義研究会会員
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カジノの大王 

  現在の金融市場は、一種の「カジノ」のような状況となっている。具体的には、アメリカのメガバンクを中心にして、「大量の資金」を創出し、「その資金で、金融市場を、自由に操っている」という疑いが強くなっているからである。特に、「GS(ゴールドマンサックス」に関しては、「2008年の金融混乱」の時に、「GS出身の前財務長官であるポールソン氏」が、「国民に対しては、ファニーメイなどの住宅金融公社は潰れない」と発言しながらも、その裏側で、「同僚のヘッジファンドに対しては、空売りをさせて、莫大の利益を上げさせたのではないか?」という報道までもが出る有様となっているのである。

  また、今回の「ヨーロッパの金融危機」についても、「粉飾決算を行うことにより、ギリシャをユーロに加盟させた」という事実は、以前から報道されているが、現在では、「ECB(欧州中央銀行)」や「IMF」に対しても、役員を送り込むことにより、「GSの影響力が強まった」とも報道されているのである。そして、「GS」の「G」は、「GOLD」ではなく、「GOVERNMENT(政府)」を意味しているのではないかとも揶揄され始めたのだが、このような状況が、現在の、「ウォール街を占拠しろ」という運動の「根本的な原因」とも言えるようである。

  このように、現在では、「世界の金融市場がカジノ化し、そのカジノを大王がコントロールしている」というような状況でもあるのだが、一方で、「信用崩壊の波が世界を襲い、間もなく、日米英にまで達しようとしている」ということも、世界的に、はっきりと見えてきたのである。そして、このような状況下で起きたのが、「大王製紙の前会長が、カジノで、莫大な損失を被った」という事件だったのだが、このことが意味することは、一種の「天の警告」でもあったようだ。

  つまり、「権力者の暴走」が、どれほど危険なものであり、「暴走を許すと、会社の存続そのものが危うくなる」ということを、多くの人に示したのではないかと感じているのだが、残念ながら、「金融界の大王」については、依然として力を保っており、その結果として、「国債」対「金(ゴールド)」の「最終決戦」が、まだ続いているのである。具体的には、「日米英の国債」が、依然として、高値圏に存在し、「金融のコントロールが継続している」ということだが、現在では、徐々に、政府高官による「日本国債の突然死」が警告され始めた状況とも言えるのである。そして、このことが、「国債暴落のXデー」のことであり、今までの状況から考えると、そのタイミングは、きわめて近くなっているようである。(12月7日)

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ギリシャからローマへ

  ご存じのとおりに、「ヨーロッパの金融危機」に関しては世界的な大問題となっており、現在では、「ドイツ」や「フランス」にまで、問題が広がってきたのだが、注目すべき点としては、「なぜ、ギリシャからイタリアへ、一挙に、危機が飛び火したのか?」ということである。つまり、「弱い国から、順次、問題が発生する」という原則から考えると、「イタリアの前に、スペインやポルトガルが、危機的な状況に陥る」という状況が考えられたのだが、実際には、「イタリアの後に、スペインなどの問題が出てきた」ということだったからである。

  そのために、この点を、よく考えてみると、「イタリアという国の、歴史的な立場」が浮かび上がってくるようだが、それは、「古代文明」と「現代文明」との「橋渡し役」をしたということである。つまり、「西ローマ帝国の崩壊」と「ルネッサンス文明の発祥」に置いて、「イタリア」という国が重要な役割を果たしたのだが、このことが、今回、大きな意味を持っていた可能性があるようだ。つまり、「古代のギリシャ、ローマ文明」を振り返りながら、「ルネッサンス以降、西洋社会が、どのような発展を遂げたのか?」を考えることが、これからの予測をする場合に、重要なポイントだと思われるからである。

  そして、この時に大切な事は、「覇権国が、100年ごとに、どのような順番で移行してきたのか?」を振り返ることだが、それは、「イタリア」の次に、「スペイン」や「ポルトガル」、そして、「フランス」や「イギリス」へと、順次、移行してきたということである。別の言葉では、今回の金融危機に関して、「アメリカ」のみならず「イギリス」も、きわめて重要な役目を担っていたのだが、今後は、この点が、明らかになってくる可能性が高くなっているのである。

  つまり、「デリバティブ」に関して、「アメリカ」と「イギリス」との共同関係が存在することや、あるいは、「国家債務」の他に、「民間債務」を考えた時に、「イギリスには、GDPと比較して、1000%もの債務が存在する」という点が指摘され始めたのである。別の言葉では、今まで、ほとんど問題視されていなかった「イギリス」が、実は、「今回の金融大膨張で、きわめて重要な役割を果たしていた」ということだが、反対の観点から言えることは、「イギリスにまで、金融危機が飛び火した時には、世界中が炎上する」という可能性が存在するのである。そして、この時には、現在の覇権国である「アメリカ」が、無事でいられるはずもなく、このような状況こそが、今まで申し上げてきた「金融大崩壊」の「最終章」のことである。(12月7日)

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
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