本間宗究「ちきゅうブッタ斬り」(17)

著者: 本間宗究 ほんまそうきゅう : ポスト資本主義研究会会員
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ドイツのマイナス金利 

  年末年始の薄商いの状況において、ドイツの一年国債が、マイナスの金利にまで低下した。具体的には、「1%の金利が付く1年国債の価格が、101.7まで上昇した」ということだが、このことが意味することは、「1万170ユーロを、この債券に投資すると、1年後には、金利を含めても、1万100ユーロでしか返ってこない」ということである。つまり、「1年後には、損が確定するような国債に、誰かが投資している」ということだが、このことは、「投資の理論」からは、考えられないような出来事とも言えるのである。

  そのために、「なぜ、このような事が起きたのか?」を考えながら、「今後、どのような展開が想定されるのか?」を見る必要性があるのだが、基本的には、「国債の価格操作に行き詰まりが出た」ということであり、また、「金融のコントロールに、限界点が訪れた」ということだと考えている。つまり、「過去数年間は、コンピューターによる高速取引などで、世界の金融市場がコントロールされていた」ということは、世界的に認識され始めているのだが、今回は、このような「価格操作」と「貴金属などの売り叩き」が、これ以上、難しくなってきたことが考えられるのである。

  そして、今後は、今までの反動が出ることにより、世界の金融市場は、大きく変動することが予想されるのだが、この時の注目点としては、「政治の機能不全であり、また、先進国の選挙」でもあるようだ。具体的には、「アメリカの大統領選挙」であり、「日本の解散、総選挙の動向」のことだが、現在の状況としては、「野田首相の暴走」が行き詰まりを見せ始めたことにより、「日本の政治も、風雲、急を告げ始めた」という状況になっているようだ。

  しかも、この時に、「消費税率が上げられないとすると、日本国債の価格が暴落する」というような意見が、政府の高官からも出始めているために、実際には、もはや、「待ったなしの状況」にもなっていることが想定されるのである。そのために、今後は、「国債価格が暴落すると、どのような状況が訪れるのか?」を考えながら、本当の意味での「金融大激震」に備える必要性があるのだが、過去の経験則から言えることは、「増税には、二種類が存在する」ということを理解しながら、これからは、「目に見えない税金」である「インフレ税」が、我々に圧し掛かってくるということを考える必要性があるようだ。つまり、全ての借金を棒引きにする方法として、どのような政府も、この方法を採用するということが予想されるのだが、このことが、「ドイツ国債のマイナス金利」がもたらす、大きな反動とも言えるようである。(1月4日)

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究極の税金

  現在の国会では、「消費税率の引き上げ」が中心の議題になっている。そして、「消費税率を上げれば、国家財政問題が解決する」というような錯覚を抱いている人も、数多く見受けられるようだが、実際には、「国家の借金は、このままでは増え続ける」ということが確実視されているのである。つまり、「消費税率を引き上げても、問題は、まったく解決できない」ということであり、また、「単なる時間稼ぎにすぎない」ということである。そして、間もなく、「税金には、二種類が存在する」ということが、広く知れ渡るものと考えているが、それは、「目に見える税金」と「目に見えない税金」のことである。

  具体的には、「消費税」や「所得税」などは、「目に見える税金」であり、「国民が、実際に支払う種類」のものだが、実は、この他に、「目に見えない税金」が存在するのである。つまり、「インフレ税」と呼ばれるものであり、実際には、「国民が知らないところで、資産が国家に没収される」というものである。そして、この税金は、過去の歴史において、頻繁に課されているのだが、現在の日本では、まったく忘れ去られているようである。

  より詳しく申し上げると、「国家財政が行き詰まり、国債の発行ができなくなった時に、どのような事が起きるのか?」ということである。具体的には、「1991年のソ連崩壊」の時には、「長期国債が売れなくなり、その後に、短期国債も売れなくなった」という事件の後に、「中央銀行が大量に紙幣を増刷した」という変化が起きたのである。そして、このような状況下では、誰も紙幣を信用しなくなり、「紙幣を受け取ると、すぐに、市場で実物資産に交換する」という、いわゆる「換物運動」に繋がったのだが、世界の歴史を見ると、このような事態は、過去に頻繁に起きているのである。

  また、最後の局面では、「ハイパーインフレ」という「スパイラル的な価格の上昇」が起き、「レストランに入った時と出た時とで、価格が違った」というような物価の上昇にも見舞われたのである。つまり、「国家や紙幣に対する信用が崩壊する」ということは、一方で、「実物商品しか信用できない」と考えることを意味しているのだが、「デフレ」という言葉に惑わされた人々は、いまだに、この点が理解できないようだ。

そのために、今回も、間もなく、「究極の税金」である「インフレ税」が国民に課され、「気が付いたら、自分の資産は、ほとんど無くなっていた」という状況が訪れることになりそうだが、問題は、「いつ、日本人がこのことに気付き、慌てて、自分の資産を移動させ始めるのか?」ということである。(1月26日)

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いつまでもあると思うな、親と金

  日本の諺に、「いつまでもあると思うな、親と金」という言葉がある。そして、「実際に親を亡くした時に、初めて、親の有難さを実感した」という経験は、多くの人が味わったことでもあるようだが、残念ながら、「お金」に関しては、「日本人全体が、いまだに、大きな錯覚を抱いている」とも感じられるのである。つまり、「1971年以降の約40年間に、日本人がどれほど裕福になったのか?」を考えていないために、ほとんどの人が「現代のお金」に過度の信頼感を寄せすぎており、結果として、「お金の本質が見えなくなっている」ということである。

  具体的には、「1971年のニクソンショック」以降、膨大な「お金」が創られ、世界中の人々が、知らないうちに、「お金の魔力」に洗脳されてしまったのである。そして、「お金さえあれば、自分の生活は安泰だ」とか、あるいは、「お金があれば、人々の心まで買える」という大きな誤解を抱いたようだが、実は、このことが、「大きな幻想」であり、また、「40年間の膿」とも言えるのである。つまり、本来、「お金」というものは、「人々の信用や錯覚」にすぎず、過去の歴史においては、「ほぼ瞬間的に、価値が消滅する」ということが起きているのである。

  そのために、現時点で必要な事は、「何が、本来、自分の生活に必要な物なのか?」を考えながら、「過去40年間に、我々の生活が、どのように変化したのか?」を理解することだと考えている。具体的には、「現在、必需品と考えられている商品は、本当に、生活に必要なのか?」ということだが、どうも、現代人は、あまりにも余計なものを抱え込みすぎたようである。そして、現在の生活水準が維持できなくなる恐怖心に怯え始め、より一層、お金に執着心を持ったようだが、このような心理状態こそが、実は、現在の金融混乱を引き起こした根本的な原因とも言えるのである。

  つまり、「マネーの大膨張」により、「国家債務」のみならず、「さまざまな借金」が、「資産の裏側」で膨らんだのだが、現在では、世界中の人々が、その「ツケ」を払わされ始めているのである。そして、間もなく、「世界的な借金爆弾の破裂」により、世界中の人々がパニック状態に陥ることも想定されるのだが、この時に大切な事は、「慌てず、騒がず、冷静に対応する」ということである。あるいは、「人々の絆を大切にして、お互いに助け合う」ということでもあるが、この時には、「日本人全体が、親心を持ち始め、他人を慈しむ」というような「思いやりの心」のことだが、実際に、「3・11の大震災」以降、日本各地で芽生え始めているようである。(1月26日)

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔opinion0769:120208〕