イランを巡る攻防戦
現在、「イラン」に関して、いろいろなニュースが報道されているが、この点については、大きな注意が必要だと考えている。つまり、「表面上の報道」と「水面下の動き」を分けて考える必要性があるものと感じているのだが、それは、「イランの核開発」に関する経済的な制裁は、単なる表面的な報道にすぎず、実際には、「水面下で、基軸通貨を巡る争いが起きている」という可能性があるからだ。
具体的には、「イラン」の裏側には、「中国」と「インド」、そして、「ロシア」の存在が噂されており、実際に、「過去数年間、石油などの決済に関して、USドルの影響力を小さくしようとしていた」という思惑が存在していたのである。つまり、「世界の貿易」に関して、「USドル」ではなく、「その他の通貨」を使おうとしてきたのだが、このことは、「基軸通貨国としてのアメリカの地位」を低下させる効果が存在するのである。
そのために、「アメリカ」は、「経済制裁」を加えることにより、「ホルムズ海峡」をイランに封鎖させ、結果として、「イラン攻撃の理由」を作ろうとした可能性もあるようだが、実際には、なかなか、思惑通りに、事態が進展していないようである。そして、今回、世界的な噂となり始めたのが、「イランがインドに原油を輸出し、その代金を、金(ゴールド)で支払う」というものだが、かりに、このことが実施されたとしたら、その時には、「USドルの価値」が低下するだけでなく、「世界全体の金融システム」に対する信頼感が大きく損なわれる可能性もあるようだ。
つまり、現在の「通貨」は、「政府に対する信用」だけを基本としており、その結果として、「フィアット・マネー」という「実物に裏打ちされていない通貨」が、世界的に大膨張したからである。しかも、現在では、「歴史的な金融大混乱」が世界的に広がっているのだが、今回の「イランを巡る攻防戦」については、「現代通貨の正体を、一挙に、世界に知らしめる」という効果が存在するものと考えている。
そして、結果としては、「信用だけに裏打ちされた通貨」が価値を失い、「実物資産の代表」とも言える「金(ゴールド)」へと、一挙に、資金が殺到することが考えられるようである。また、海外の専門家は、すでに、この点を熟知しており、そのために、「金価格の理論値」についても、いろいろな数字が出始めているのだが、基本的には、「現在、世界にどれだけの『お金』が存在するのか?」ということが、最も重要なポイントとも言えるようである。(2月7日)
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ラッファー曲線
経済学の基本的な理論の一つとして、「ラッファー曲線」が挙げられるが、このことは、「税収」と「税率」との関係を表わしたものであり、「税率がゼロ%ならば、税収はゼロになり、また、税率が100%になれば、やはり、税収がゼロになる」というものである。そして、「国家にとって、最高の税収を見込める税率は、ゼロから100%のどこかに存在する」という、きわめて「曖昧な考え方」でもあるのだが、現在のような「増税論議」が活発に行われている時には、国民にとって「必要な知識」とも言えるようである。
また、「国家が、国債を発行できる条件」としては、「将来、国民が税金を支払い、現在の借金を払う」という前提が存在するのだが、問題は、現在のように、「先進国の全てが膨大な借金を抱えている時に、どれほどの税金を支払えば、国家の借金が無くなるのか?」という点である。つまり、「日本に存在する1000兆円の借金を返済するには、どのような税率で、どのような経済条件と期間が必要なのか?」ということだが、やはり、この時のポイントは、「国民が国家を信用している間は、目に見える税金を黙って支払う」ということである。
ただし、一旦、国家に対する信頼感が無くなると、今度は、「国債を買う人がいなくなり、国家が借金不能の状態になる」という状況が訪れるのだが、この時に活躍するのが「目に見えない税金」である。つまり、「日銀が、大量の紙幣を増刷して、国債を返済する」という「インフレ税」のことだが、この時に起きることは、「税率が、限りなく、100%に近付く」ということである。別の言葉では、「国民が知らない間に、大量の紙幣が発行され、いつの間にか、資産が没収される」ということが、過去の歴史では、頻繁に起きているのだが、「このことに気付く人は、100万人に1人もいなかった」というのが、今までのパターンだったのである。
そして、今回も、歴史が、再び、繰り返されようとしているようだが、現時点での注意点は、「世界の8大中央銀行のバランスシート」であり、具体的には、「過去数年間に、きわめて異常な大膨張をしている」ということである。つまり、現在の「国債」に関しては、「国家が発行し、中央銀行などが買い付ける」という構図が、世界的に広がっているのである。そして、今後、想定されることは、「国債の発行ができなくなり、世界的な金利の上昇が起きた時に、どれほどのスピードで、紙幣の増刷が行われるのか?」ということだが、過去の歴史を見る限りは、「約6カ月」という短期間のうちに、天文学的な紙幣の大増刷が行われ、「気付いた時には、インフレの大津波に飲み込まれている」ということである。(2月8日)
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「現在の税金」と「将来の税金」
「税金」には、大別して二種類が存在するが、それは、「目に見える税金」と「目に見えない税金」のことである。そして、「目に見える税金」にも、やはり、二つの種類が存在するのだが、それは、「現在の税金」と「将来の税金」のことである。具体的には、「所得税」や「消費税」などは、「目に見える税金」であり、かつ、「現在の税金」である。そして、ほとんどの人は、この種の税金だけを気にしているのだが、実は、「国債の発行」というのは、「目に見える形での、将来の税金」とも言えるのである。
つまり、「国家が国債を発行する」ということは、「将来の税金」を担保に取り「新たな借金をする」ということを意味しているのだが、ほとんどの人は、この点が理解できないようである。そして、「国債残高の急増」に関しても、「自分の問題ではない」と考えている人も多いように感じるのだが、実際には、我々の「預金」や「保険」、あるいは、「年金」などのほとんどが、「金融システム」というメカニズムを通して、いつの間にか、「国債」に換わっていたのである。
そして、今後の問題は、「ある日、突然に、将来の税金が、現在の税金に変化する時が来る」ということだが、それは、「国債の発行」が難しくなり、「国債価格が暴落する時」のことである。つまり、「国家に対する信用」が失われた時には、現在の「ギリシャ」のように、「1年国債の金利が652%にまで上昇する」というような状況が訪れることが考えられるのだが、その時に起きることは、「目に見えない税金」である「インフレ税」が、我々に課されるといことである。
具体的には、「中央銀行が紙幣を増刷して、借金の返済をする」ということだが、この時の注意点は、「国債には、金利や返済期限が存在するのだが、日銀券には、金利も返済期限も存在しない」ということである。そのために、どのような政府も、最後には、必ず、この手段を採用するのだが、一旦、この政策が取られた時には、「莫大な将来の税金が、一挙に、現在の税金へと変化し、大量の紙幣が増刷される」ということである。しかも、この時には、「大量に存在する現代の通貨が暴れ出し、さまざまな商品価格を、一挙に押し上げる」という状況も考えられるのである。
つまり、このことが、本当の「インフレ」であり、実際には、「通貨価値の下落」という、「誰も、紙幣を信じなくなり、すぐに、商品に交換する動き」のことを意味しているのだが、驚いた事に、まだほとんどの人が、このことに気付いていないのである。(2月16日)
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