本間宗究「ちきゅうブッタ斬り」(22)

著者: 本間宗究 ほんまそうきゅう : ポスト資本主義研究会会員
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内部分裂 

  王陽明の有名な言葉に「山中(さんちゅう)の賊(ぞく)を破るは易(やす)く、心中(しんちゅう)の賊を破るは難(かた)し」というものがある。つまり、「自分の心を制御することは難しいものであり、自分の欲望が災いに繋がりやすい」ということである。また、このことは、「国家」や「企業」などにも当てはまるものと思われるが、過去の歴史を研究すると、「組織の崩壊」は、往々にして、「内部分裂」が、直接的、間接的な原因になっていることが見て取れるのである。

  つまり、「組織の内部で権力闘争が起き、組織全体が弱体化することにより、他社との競争に負ける」という構図だと考えている。そして、この原因は、「成長が止まった組織が、既得権の奪い合いを行う」ということによるようだが、結果としては、「組織の存亡」にまで繋がることも理解できるのである。また、現在では、「政党」や「国家組織」、あるいは、「先進国の協調体制」にまで、この「内部分裂」が起き始めたようだが、具体的には、「国民新党の分裂」のことであり、また、「民主党にも、この危険性がある」ということだが、同時に、「日米欧が主導している、現在の通貨体制」にも、徐々に、この危険性が見え始めているようである。

  具体的には、数週間前から、「アメリカのフォートノックス」に保有されている「世界各国の金(ゴールド)」に関して、さまざまな憶測記事が出始めているのだが、それは、「本当に、フォートノックスに、金が存在するのか?」という疑問を、「ドイツやスイスが抱き始めた」ということである。そして、この時に思い出されるのが、「1971年のニクソンショック前夜」のことになるが、当時、起きたことは、「ベトナム戦争で過剰浪費したアメリカに対して、ドイツやフランスが、ドルではなく、金(ゴールド)による支払いを要求した」という状況だったのである。

  そして、当時のニクソン大統領は、先進国の通貨を「金(ゴールド)」から切り離したのだが、その後に起きたことは、「前代未聞の規模で、マネー経済が大膨張した」ということだった。しかも、現在では、その「マネー」を巡って、世界的な「奪い合い」が起きており、そのことが、いろいろな「内部分裂」を引き起こし始めているものと考えている。また、「一企業の内部分裂」の場合には、その企業の存亡だけが問題になるのだが、今回は、「国家」や「通貨制度」という大問題に絡む状況でもあり、今後の展開が気にかかるのだが、基本的には、「終わりは始まりである」という言葉のとおりに、「既存の制度」が崩壊した時から、「新たな時代」が始まりを見せるものと考えている。(4月16日)

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日本と北朝鮮

  4月13日は「辰の年、辰の月、そして、辰の日」だったが、この日に起きたことは、「北朝鮮によるミサイルの発射が失敗に終わった」という事件だった。そして、この時に感じたことは、「北朝鮮における権力の暴走が、いよいよ、最終段階に到達したのではないか?」ということであり、より具体的には、「先軍体制」という「軍部支配体制」が行き詰まりを見せてきたために、「金正恩氏が焦りを見せているのではないか?」ということでもあった。

 また、この時に痛感したことは、「北朝鮮の人民が、このような支配体制により、大変厳しい状況下に置かれている」ということだったが、同時に、「日本と北朝鮮とに、どのような違いがあるのか?」ということでもあった。つまり、「失われた20年」という言葉のとおりに、「貧困層が増えたり、自殺者が3万人も継続したりする」というような苦境が、日本では、依然として継続しているのだが、実際には、「いつの間にか、日本が、世界の三流国に落魄(おちぶ)れていた」という状況でもあるからだ。

 そして、この原因の一つとしては、「行き過ぎた官僚支配体制」が指摘されているようだが、結局のところは、「北朝鮮」と同様に、「一部の支配体制が、数多くの困窮者を生み出した」という状況が考えられるようだ。また、「国家の借金」については、「財政規模と比較すると、世界的に、突出している」という状況でもありながら、「ほとんどの人が、真の危機感を抱いていない」ということも、ある種の「洗脳状態」を想起させるのである。

 つまり、「北朝鮮も日本も、ほとんどの国民が、一種の洗脳状態にあるのではないか?」ということだが、今後は、「国民の覚醒」が大きな注目点だと考えている。具体的には、「国民の不満が高まり、支配体制の維持が難しくなる」ということだが、このことは、「国債価格の暴落が起き、日本の金融商品の価値が、一挙に激減する」というような事態のことである。また、そのような状況になった時に、「日本人は、どのような混乱状態に陥るのか?」という点が、たいへん気にかかる状況とも言えるのである。

 つまり、このことは、「お金に支配され、自分は裕福だと錯覚している日本人」と「金一族の支配により、先軍体制に突っ走る北朝鮮の人々」との間に、根本的な「違い」が存在しない可能性のことである。そのために、「現在の日本人は、決して、北朝鮮の人々を非難できないのではないか?」とも感じているのだが、この点については、「今後の一年間で、はっきりとした結果が出る」ものと考えている。(4月16日)

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔opinion0875 :120426〕