本間宗究「ちきゅうブッタ斬り」(23)

著者: 本間宗究 ほんまそうきゅう : ポスト資本主義研究会会員
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天地のリズム

  老子に「微明」という言葉があるが、このことは、「天地自然のリズム」を表しているとともに、「時代の流れ」や「文明の興亡」までにも応用ができるものと感じている。具体的には、「力ずくで縮めさせたいとするなら、まず張らせてやるのがよい。その力を弱めてやろうと思うなら、はじめは強くしてやるのがよい。引きずり降ろそうと考えるなら、権力を持たせてやることだ。奪い去ろうと望むなら、与えるがよい。」というものだが、この点については、「相場のリズム」や「企業の興亡」にも繋がる考え方でもあるようだ。

  つまり、「絶対的な権力を持った国」や「絶頂期にある企業」などが、「時間の経過とともに、驚くような衰退の時期を見せる」という事例が、歴史を研究したり、相場に関わったりすると、数多くみられるからだ。そして、「なぜ、このような栄枯盛衰が起きるのか?」を考えた時に、どうしても、「天地自然の理」や「神の計らい」などに行き着かざるを得なくなるのである。

  別の言葉では、「この世には、何らかの法則が存在し、その法則によって、人々が動かされているのではないか?」ということだが、この「微明」という言葉は、その法則の一部を表しているようにも感じられるのである。特に、現在のような、「先進国の国債だけが、異常な強さを見せている」という状況下では、「今後の展開が、たいへん気にかかる段階」にも差し掛かってきたのだが、確かに、今回の「国債の買い支え」に関しては、「人知が及ぶようなレベルではなかった」という点を反省せざるを得ないようである。

しかし、同時に、「平家の没落」のような、「短期間の内に、一族が滅んでしまう」というほどの転落も考えざるを得ないのだが、このことは、「平清盛の死後、わずか4年で、平家が滅んだ」という状況のことである。つまり、「力ずくで、すべての権力を奪い取ろうとした」というような「奢り」が存在した結果、「あっという間の没落」につながったようだが、現在の「国債」についても、同様の状況が考えられるのである。

そして、「気が付いた時には、すでに、手遅れだった」ということが、株式投資においても、今回の「東電」や「JAL」などで、我々が実際に経験したことだったのだが、この時に考えなければいけないことは、「満月は、必ず、欠ける時期が訪れる」ということである。別の言葉では、「絶頂期ほど、その後の転落が怖いときはない」ということだが、現在の「先進国の国債」を見ると、「歴史上からも、考えられないほどの絶頂期」に差し掛かっていることが理解できるのである。(5月7日)

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もう一つの金融戦争

  現在では、「先進国の国債」だけが異常な高値にまで買われており、一方で、「株式」や「貴金属」などは大量の売り物を浴びている。そして、今回の下げの「直接な原因」となったのが、「フランス」や「ギリシャ」の選挙だったが、この時に、多くの人が考えたことは、「世の中が不安定になるから、資金が国債に流れるのは当然だ」ということだったようである。しかし、この点を、より深く考えてみると、「政治の混乱」は「国家債務」に対して、決して、好影響をもたらすものではなく、反対に、「国家債務の膨張」を促進する効果しかないことが理解できるのである。

  そのために、「なぜ、株式や商品が売られているのか?」という点について、海外では、いろんな意見が出るとともに、「金融市場で、どのような事が起きているのか?」ということが、深く理解され始めているのである。つまり、「国債」と「金」とを巡る「金融戦争」が起きており、この時に、大きな役割を果たしているのが、「JPモルガン」などの金融機関だということである。

  換言すると、「国債価格の暴落」を防ぐために、「株価」や「商品価格」などが操作されているということが、「海外の常識」となりつつあるのだが、残念ながら、日本では、ほとんど、このことが理解されていないようである。また、現在では、「もう一つの金融戦争」が、盛んに報道され始めているのだが、それは、「基軸通貨を巡る戦い」のことであり、具体的には、「イランの原油」に関して、「インドや中国が、大量の原油を輸入している」ということである。

  しかも、この時に、「中国は、原油代金を人民元で支払い、ロシアの銀行を通じて送金している」とも言われており、このことが意味することは、「デリバティブや国家債務問題に悩むアメリカから、基軸通貨国の地位を奪おうとしている」ということである。つまり、「アメリカを中心にした先進国は、大量の資金供給を行いながら、貴金属を売り叩いている」という状況下で、「中国やロシアなどは、供給された資金で金(ゴールド)を、大量に買っている」という状況にもなっているのである。

  そして、このような状況が継続すればするほど、本当の富である「金」が、西洋から東洋に移行し、気が付いた時には、「西洋の没落」がはっきりと見えてくることになるようだが、結局は、「先進諸国の政府」にとって、「国債の買い支えを継続すればするほど、より一層、自分の首を絞める」という状況とも言えるようである。(5月17日)

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メガバンクの解体

  ヨーロッパの金融混乱は、間もなく、アメリカや日本へと飛び火することが考えられるようだが、最近、このことを裏付けるように、きわめて過激な意見が、アメリカの金融当局者から出始めてきた。具体的には、「12の地区連銀」のうち、「ダラス」と「セントルイス」の地区連銀総裁が、「アメリカの大手行は、JPモルガン・チェースも含めて、解体すべきである」というものである。しかも、「アメリカの大手行は、適切なリスク管理を行っていない」とも述べており、今後、「より大きな金融混乱が、アメリカで起きることを想定している」ようにも感じられるのである。

  そして、この理由としては、やはり、「デリバティブ(金融派生商品)」の存在が考えられるのだが、現在の「JPモルガン・チェース」の総資産が「約144兆円」でありながら、一方で、「昨年末のデリバティブの想定元本は約5600兆円」というように、きわめて莫大な金額にまで到達しているのである。つまり、「総資産に対して、約40倍もの金額が、簿外取引であるデリバティブに投資されている」という状況なのだが、この点については、「大手4行が、約230兆ドル(約1.84京円)という全体金額のうち、94%の216兆ドル(約1.73京円)を保有する」という寡占状態にもなっているのである。

  そのために、このような異常な状態に危機感をお覚えた人々が、いろいろな警告を発している状況でもあるのだが、この点については、私自身も、「25年間にわたり追い続けてきた大問題が、いよいよ、最後の段階を迎えているのではないか?」と感じざるを得ないのである。つまり、「1980年には、まったくのゼロだったデリバティブ」が、その後、約30年間で大膨張し、現在では、世界的に、「約6京円」という規模にまで到達しているということである。

  しかも、「この商品を利用することにより、世界の金融がコントロールされている」という疑問が、海外では盛んに噴出していながらも、日本では、ほとんど理解されていないのである。そして、「先進国の国債価格」だけが、歴史上からも、また、理論上からも、きわめて異常な高値にまで買い進められていながらも、多くの人は、ほとんど危機感を覚えていない状況とも言えるのである。つまり、「表面的な金融危機に目を奪われて、本質的な問題に気付かない状態」とも言えるのだが、やはり、このような状況を一変させるのが、大きな事件であり、具体的には、「国債を買い支えていたデリバティブの全面崩壊」ということである。そして、その時に起きることは、「ポジションの巻き戻し」でもあるようだが、このタイミングは、たいへん近くなっているようである。(5月28日)

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
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