本間宗究「ちきゅうブッタ斬り」(27)

著者: 本間宗究 ほんまそうきゅう : ポスト資本主義研究会会員
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アメリカのQE3

  9月13日の「FOMC」において、「QE3(量的緩和の第三弾)が発表された」ということが「市場の理解」でもあるようだが、「発表の内容を吟味すると、まったく違った姿が見えてくる」というのが、今回の「私の感想」である。つまり、「なぜ、国債を買わずに、MBS(不動産担保証券)を買うことに決めたのか?」ということだが、本来の「QE」は、「中央銀行のバランスシートを拡大させて、国債を買い支える」ということが、主な目的だったのである。

  しかし、今回は、「不動産に関連する有価証券を無制限に買い付ける」という決定がなされたのだが、このことは、「実体経済」と「マネー経済」との関係に、劇的な大変化を起こす可能性が存在するのである。つまり、今までは、「マネーの歯車」を大膨張させながらも、同時に、「マネーの回転を抑える政策」が取られてきたのだが、今回は、反対に、「土地の価格を上昇させる」という効果があり、結果として、「実体経済」と「マネー」の歯車が、同時に、急回転を始める可能性が高くなっているからだ。

  別の言葉では、今までに繰り広げられてきた「国債と金とを巡る金融大戦争」に、最後の決着が付いた可能性があり、今回の「バーナンキ発言」は、一種の「敗北宣言」だったものと考えている。そして、この考えが正しいとしたら、今後は、「金利の急騰」、すなわち、「今まで買い支えてきた国債価格の暴落」が、世界的に始まることが想定されるのだが、実は、このような状況こそが、「リフレーション政策」という「中央銀行のバランスシートを膨張させて、国家債務問題を先送りする政策」の後に起きることである。

  つまり、実体経済の「約20倍」にも膨らんだ「世界のマネー」が、急速に動き出し、さまざまな市場に流れていく状況のことだが、過去の経験則から予想されることは、今後、「約6か月間のギャロッピング・インフレ」が起き、その後に、「約6か月間のハイパーインフレ」に移行するということである。そして、その時には、「先進国の国債価格」が、「2年ほど前のギリシャ国債と同様に、一挙に、暴落を始める」という事態も想定されるのだが、このような状況こそが、「信用崩壊の波が、日米英の先進国にまで波及した」ということを意味しているのである。

  そして、今後は、「信じられないほどの大変化」が起きるものと考えているが、具体的には、「貴金属」や「株式」、あるいは、「土地」などの価格が暴騰を始めるということであり、同時に、「預金や国債などの価値が失われる可能性」のことである。(9月18日)

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日銀のバランスシート

  日銀のバランスシートに変化が起き始めているが、その要因としては、「国債の大量買い付け」が指摘できるようだ。具体的には、「9月10日現在で、約104兆円にまで、国債の保有額が増えている」という状況であり、今までの推移としては、「過去6か月で約17兆円」、「過去1か月でも約5兆円」という増加ペースになっているのである。そして、この理由として考えられることは、「民間銀行に余裕がなくなったために、日銀が大量の国債を買い付けている」という点が指摘できるようだが、問題は、「今後、どのようにして、日銀が資金調達をするのか?」ということである。

  つまり、「バランスシートの膨張」が意味することは、「資産の拡大」であるとともに、当然のことながら、「負債の増加」でもあり、この時に、「日銀が、誰から資金を借りるのか?」という大問題が存在するのである。別の言葉では、現在のような「当座預金の急増」という「民間銀行からの借入金」だけでは間に合わなくなることが考えられるとともに、今後は、「紙幣の増刷」に頼らざるを得なくなるものと思われるが、「ある日突然に、国債価格が急落し、日銀券の発行残高が急拡大する」という状況も考えられるのである。

  具体的には、現時点で「約80兆円」にまで膨らんでいる日銀券の残高が、これからの「国債の買い付け金額」次第では、一挙に、大膨張を始めるということである。そして、この増え方次第では、「為替」や「金利」に、大きな影響を与えることも想定されるのだが、基本的には、「大幅な円安」と「金利の急騰」が考えられるようだ。しかも、「GDPに対して、最も、国家債務の比率が高い日本」において、このような「インフレ策」が取られた場合には、その他の先進諸国にも、大きな影響が及ぶことが想定できるのである。

  つまり、日本が世界に先駆けて「ゼロ金利政策」を採用し、かつ、「中央銀行のバランスシートを急拡大させて、国債を買い付ける」という、いわゆる「リフレーション政策」を行ってきたのだが、今後は、世界に先駆けて、「紙幣の大増刷」が行われる可能性が存在するのである。そして、かりに、この方法が取られた場合には、今後の日本は、「金融面の焼け野原状態」になることが考えられるようである。

  具体的には、「資源の乏しい日本」において、「円安」や「金利高」が起きた場合には、「急激な輸入インフレ」が起きるとともに、我々の保有する「金融資産」が、一挙に価値を失うということである。また、その時には、多くの人が、一斉に、「金(ゴールド)」に殺到する状況も考えられるようである。(9月24日)

本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/ja/column.html  を許可を得て転載。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔opinion1009:120927〕