日本の内憂外患
四書五経の一つである「大学」に「小人をして国家を為(おさ)めしむれば、災害並び至る」という言葉があるが、現在、起きている「日本の内憂外患」を見ると、まさに、この言葉の通りとも言えるようである。そして、今回の大きな問題点は、「民主党が、国民のことを考えずに、思い付きだけで行動している」という点が指摘できるようだが、やはり、「有名な政経塾を出て街頭演説をしただけで、実務経験が皆無に等しい政治家」は、今後の日本にとって、「偉大な反面教師」になった可能性があるものと考えている。
そして、これから必要とされていることは、この「内憂」と「外患」を、丁寧に解決することだが、まず、なすべきことは、「一刻も早く、国家財政問題を解決すること」だと考えている。つまり、本当の意味での「海千山千の政治家や官僚」が表に出て、具体的に、問題を解決することが求められているのだが、今回の「内憂」については、やはり、「未曽有の規模で、現代のマネーが大膨張している」という点が指摘できるようだ。
具体的には、「国家の膨大な債務」と、その裏側に存在する「デリバティブ」が理解できない限り、「決して、本質的な問題解決ができない」ということである。また、「外患」とも言える、今回の「領土問題」については、「単なる知識」だけでなく、「見識」や「胆識」という「実践を通じて得られた智慧や胆力を持った人々」が、実際の外交に当たる必要性があるのだが、同時に、国民も、相当の覚悟が必要とされているようだ。
また、「大きな流れ」から、今後の展開を考えると、「世界的な大戦」が起きる可能性は、ほとんど存在せず、反対に、「世界各国が、内憂である、国家債務問題の対応に追われる」という状況が想定できるようだ。つまり、今後、「金融混乱」が激化すると、多くの国々が、「領土問題」などに関わっている暇がなくなるものと思われるが、かりに、「第三次世界大戦」が起きた場合には、「核爆弾の嵐」により、「福島の原発事故よりも、はるかに、大きな放射能問題」が、世界を悩ますものと考えている。
このように、現在の世界情勢は、「人間の欲望」の象徴とも言える「奪い合い」が、最後の段階に達し、かつての「帝国主義」や「二つの世界大戦」の後に、「壮絶なマネーの奪い合い」が世界的に行われた状況とも言えるようだ。そして、これから起きることは、「人々が、問題の本質を認識することにより、大きな覚醒をする」ということだと考えているが、具体的には、「人生で、最も大切なものは、お金ではない」という点に気付くと同時に、「過去の自分を反省し、これからの生き方を考える」ということである。(9月26日)
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ゼロへの対応
9月18日に、「ドイツ銀行」が、たいへん興味深いレポートを発表したが、それは、「金(ゴールド):ゼロへの対応」というものである。具体的には、「三つのゼロ」を指摘しながら「金の保有を勧めている」という内容だが、この「三つのゼロ」というのは、最初に、「ゼロ金利」のことであり、次に、「貨幣の流通速度が、ほとんどゼロに近い状態」のことである。そして、最後に、「通貨に対する信頼度が、ほぼゼロになっている」という点を指摘しているのだが、これらの点については、「金融システム」や「通貨制度」に対する理解が必要であるとともに、「現代のマネーが、実体経済の、約20倍にまで大膨張している」という事実認識が重要だと考えている。
また、今回、多くの業界関係者が驚いた点は、「国債を守る陣営」に属しているはずの「ドイツ銀行」が、正確な歴史認識を基にして「金の保有を勧めている」ということである。つまり、「膨大な国家債務」と、その裏側に存在する「デリバティブ」を守るために、今まで、「ゼロ金利政策」が実行され、また、「通貨の流通速度が抑えられた」という状況だったのだが、現在では、この結果として、世界中の人々が、「フィアットマネー」という「政府が発行する通貨」に対して、信用を失い始めているのである。
そして、これから起きることは、「悪貨は良貨を駆逐する」という「グレシャムの法則」が「世界的に働き始める」という点を、このレポートは指摘しているのだが、具体的には、「良貨である金(ゴールド)」を世界中の人々が退蔵し、一方で、「悪貨であるフィアットマネー」が市場に大量に出回ることにより、「市場から、金が消えてしまう」という状態のことである。つまり、今後、「金の価格が、バブル的な動きを見せる可能性」を指摘しながら、同時に、「金融システムや通貨制度が崩壊すると、ハイパーインフレに見舞われる」という点を述べたかったようにも思われるのである。
このように、今回は、「ドイツを代表するメガバンク」が、自分の不利益になるようなレポートを作成したのだが、このことには、大きな意味が隠されているようだ。つまり、「国債の買い支えが限界点に達した」という点や「間もなく、本格的な金融大混乱が始まる」ということを、暗に、指摘したかった可能性もあるようだが、「金融システムの崩壊」が意味することは、「ドイツ銀行も、大きな打撃を受ける」ということである。そのために、今回のレポートについては、「国債を守る陣営が内部分裂を始めた」という可能性も考えられるようだが、どちらにしても、「ハイパーインフレ」に見舞われた時には、「全ての人々に、大きな被害が出る」ということも、間違いのない事実である。(9月26日)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/ja/column.html を許可を得て転載。
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〔opinion1030:1201010〕