本間宗究「ちきゅうブッタ斬り」(29)

著者: 本間宗究 ほんまそうきゅう : ポスト資本主義研究会会員
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チャイナリスクの正体

  日本政府による「尖閣諸島の国有化」以降、「チャイナリスク」という言葉が盛んに使われるとともに、「中国が、日本を攻めてくるのではないか?」というような、極端な悲観論も聞かれるようになった。そして、「中国との関係が悪化することにより、日本の景気がさらに悪化する」というような意見が主流になっているようだが、少しだけ冷静になり、世界全体の動向を見てみると、まったく、違った姿が見えてくるようである。

  具体的には、「チャイナリスク」という言葉は、以前から存在しており、基本的には、「中国が先進諸国の仲間入りをする過程で、資本主義のルールを学ぶときに発生するリスク」とも言えるのである。つまり、以前のような「共産主義の独裁政治」ではなく、「資本主義国家としてのビジネス」をするためには「最低限のルール」が存在するのだが、実際には、時として、「共産主義的な顔」が見えてくるということである。

  しかし、今回のような「資本主義国家とは言えないような主張」を継続すると、「本当に困るのは、中国自身である」とも言えるのである。具体的には、「世界の国々が、中国から離れ、他のアジア諸国へ資金を移動させる可能性」のことだが、実際に、今回の事件により、いろいろな国の、多くの企業が、この点を真剣に考え始めた可能性があるようだ。

  また、今回の特徴的な出来事としては、多くの人々が、世界的な景気の悪化を想定したのだが、このことは、「実体経済」だけを見た考えとも言え、反対に、「マネー経済」からは、まったく逆の姿が見え始めているのである。つまり、「景気を代表する商品」である「銅」の価格については、この事件に、ほとんど反応せず、価格の上昇までもが起きているのである。そして、この理由としては、「実体経済の20倍にまで膨らんだマネー経済」の存在が指摘できるようだが、現在では、この「マネーの歯車」が、徐々に、回転を始めているのである。

  このように、現在、世界の景気は、急速に回復を始めている可能性があるのだが、残念ながら、ほとんどの日本人は、この点に、まったく気づいていないのが実情とも言えるのである。そのために、「景気敏感株を叩き売り、国債を買う」という、きわめてリスクの高い投資を行っているようだが、この点については、間もなく、「金や銀、そして、銅などの価格が、史上最高値を更新する」という状況を見た時に、初めて、「チャイナリスクの本質」に気付くとともに、「マネー経済の巨大さ」を実感することになるようだが、その時には、すでに、手遅れの状況とも言えるのである。(10月5日)

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貴金属のバブル相場

  国債価格の暴落とともに、「金(ゴールド)や銀、あるいは、プラチナなどのバブル相場」がスタートするものと考えているが、過去数年間の動きを振り返ってみると、実に感慨深いものがあるとともに、「60年サイクル」の存在に、改めて、敬意を表する次第である。つまり、本来は、「末尾に9の付く年」に「バブル」が発生し、今回は、「2009年から2010年」に、「貴金属のバブル」が発生することを想定していたのである。

  しかし、実際には、「2007年の7月」から、私の想定通りに、「金融混乱」が始まったものの、その後の動きについては、「過去3回のバブル」とは、まったく、違った様相を呈したのである。具体的には、「世界的な金融のコントロール」により、「国債の買い支え」や「株式と商品価格の売り叩き」が起きたのだが、この点をよく考えると、今回は、「目に見えない金融戦争」が、「60年前の実際の戦争」よりも「時間的に長引いた」という事実が指摘できるようである。

  しかも、今回は、世界中の人々が、「世界的な金融戦争の存在」に気付かなかったために、「60年前に起きた戦後の統制経済」のような状態にも、ほとんど、目を向けることがなかったのである。しかし、実際には、「LIBORの不正操作」からもお分かりのように、「世界の金融は、政府やメガバンクにより、きわめて異常な状態になっていた」ということが明らかになっているのである。

  そして、「現在、どのような事が起きているのか?」を考えると、「2012年の7月」に「欧米の国債価格が、史上最高値を付けた」というように、「歴史的な大転換」が起きたことが理解できるのである。つまり、このことが、「金融大戦争の終焉」ということだと考えているが、結果としては、「実体経済の20倍にまで膨れ上がったマネー経済が、現在では、コントロール不能の状態になった」ということを意味しているのである。

  しかも、今後は、この「膨大なマネー」が、世界中で、大暴れすることが想定できるのだが、このことが、過去の歴史では、「ギャロッピング・インフレ」と呼ばれるものであり、また、その後の「ハイパーインフレ」のことである。また、一旦、このような動きが始まると、その後の展開は、きわめてスピードが速くなることが考えられるのだが、「ケインズの教え」のとおりに、「100万人に一人も、実際の状況を理解していない」というのが実情とも言えるようであり、本当の大混乱が起きて、初めて、金融戦争が存在していたことに気付かされることになるようである。(10月5日)

本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/ja/column.html  を許可を得て転載。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔opinion1036:121017〕