本間宗究「ちきゅうブッタ斬り」(31)

著者: 本間宗究 ほんまそうきゅう : ポスト資本主義研究会会員
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歴史のダイナミズム

  歴史を研究すると、実に多くのことに気付かされるが、このことは、「自分が、いかに、何も知らないか?」ということの証明とも言えるようだ。つまり、「人生は、一生、学びの連続である」ということだが、以前に伺った話として、「悟りというのは、ある瞬間に、全てのことがわかるというようなものではなく、生涯、学び続け、向上し続けることに気付くことが本当の悟りであり、決して終わりがないものだ」というものがあったが、このことは、「歴史」や「相場」の研究だけではなく、全てに当てはまる言葉でもあるようだ。

  特に、現在のような「時代の大転換期」においては、「歴史のダイナミズム」を理解し、「決して、短絡的な思考法に囚われない」ということが重要だと考えているが、多くの人が陥っている罠(わな)としては、「自分が経験したことが無いことは、起きるはずがない」と考えがちになることである。つまり、「自分の人生経験から得られた知識」が全てであり、「過去にどれほどの大変化が起きていたのかを考えようともしない」ということである。

  具体的には、「お金の奴隷」となった現代人が、「現代のお金が、どれほど異常な状態になっているのか?」という点について、ほとんど「思考停止の状態」になっているということである。そして、「預金さえ持っていれば、一生、生活には困らない」というような「預金神話」に囚われている人も数多く見受けられるのだが、このことは、「60数年前の敗戦時」にも同じような状況だったようである。

  具体的には、「実際に戦争に負ける」という経験をしない限り、「日本は神の国であり、決して、戦争に負けることはない」という「神話」から解き放たれなかったということである。しかし、その後の「経済発展」については、ご存じのとおりに、「僅か数十年で、世界第二位の経済大国にまでのし上がった」という状況だったのだが、このキッカケとなったのが、「敗戦のショック」だった可能性もあるようだ。

  つまり、「大きなショック」を受けたことにより、その後の「奮起」に繋がった可能性があるのだが、このような観点から言えることは、現在の「預金神話」や、これから想定される「預金が紙屑になる事態」というのは「天の計らい」とも考えられるようである。具体的には、最も大きな衝撃を日本人に与えることにより、今後の「世界で、最も厳しい少子高齢化社会」を乗り切るための「エネルギー」を与えてくれている可能性のことだが、私としては、できるだけ多くの人が「株式」や「貴金属」、そして、「土地」などの実物資産を保有することにより、今後の混乱期を乗り切っていただきたいと思う次第である。(2012.10.29)

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国債にあらずんば、資産にあらず!?

  「歴史は繰り返す」という言葉のとおりに、世の中には、「一定のサイクル」があり、また、この要因となるのが、「人々の意識や行動」ではないかと考えている。具体的には、現在、放映中の「平清盛」において、「平家にあらずんば、人にあらず」という言葉が生まれるほどの繁栄をした「平家」が、その後に、「あっという間の没落」をしたわけだが、この原因を考えてみると、「権力の集中」や「権力者の奢り」、そして、「人々の不満や憤り」などの「意識や行動の変化」が考えられるのである。

  つまり、「権力や富が偏在し、しかも、一握りの人々が、その権力を思いのままに行使する」というような「権力の極み」とでも呼ぶべき状況が生まれた時に「世の中の大転換」が起き、「絶対的な権力者が、あっという間に、滅びてしまう」という構図のことである。そして、このような事例は、歴史を尋ねると、頻繁に見られることだが、興味深い点としては、「当時の人々は、平家の繁栄が永遠に続き、源氏の再生などは、有り得ないことである」と感じていたことである。

  しかし、「歴史の醍醐味」としては、ご存じのとおりに、「1181年に平清盛が逝去した後に、1185年の源平合戦が起き、この戦いにより平家が滅亡した」というほどの、大きな変化が起きたのである。また、その後、「1192年に鎌倉幕府が誕生した」という事実については、たいへん有名な出来事でもあるのだが、この点を、よく考えてみると、「源氏と平家の争い」により実際に崩壊したのは、「平家」のみならず、「平安の貴族政治」でもあったようだ。

  このように、「時代の大転換期」に起きることは、往々にして、「二つの勢力が争うことにより、それまでに存在した根本的な基盤が崩れてしまう」ということだと思われるが、このことは、「明治維新の時に、開国派と攘夷派が争い、結果として、幕藩体制が崩壊した」というような状況のことである。そして、このような観点からは、現在の「自民党と民主党との争い」が、たいへん気にかかるのだが、実際には、「官僚支配体制の崩壊」が起きる「前兆」とも考えられるようである。

  つまり、「官僚や政治家にあらずんば、国民にあらず」というような状況や、あるいは、「国債にあらずんば、資産にあらず」というような状態が、間もなく、大転換期を迎えているものと考えているが、現在では、「国民の不満や憤り」が限界点に達しており、結果として、「既存の金融システムや通貨制度などが崩れる可能性がある」ということである。(2012.10.29)

本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/ja/column.html  を許可を得て転載。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔opinion1065:121108〕