本間宗究「ちきゅうブッタ斬り」(37)

著者: 本間宗究 ほんまそうきゅう : ポスト資本主義研究会会員
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マグロ価格の経済学

  1月4日に行われた「マグロの初セリ」は、マスコミの報道のとおりに、「1億5540万円」という史上最高値を更新し、日本中で大きな注目を浴びることとなったが、このことにも、大きな意味が存在しているようである。つまり、「現在の金融情勢を考慮すると、この価格は、決して、驚くべきものではない」ということであり、また、これからの「大インフレ」を予見するような出来事だった可能性が存在するからだ。

  別の言葉では、「価格は、需要と供給とによって決定される」という「価格メカニズム」が働いた結果として、今回の史上最高値が付いたわけだが、この背景には、ほとんどの人が気付いていない、異常なまでの「マネーの大膨張」が存在するのである。そして、その一端を垣間見せたのが、今回の「マグロの初セリ」だったものと考えているが、今後は、いろいろな商品に、このような動きが起きることも予想されるのである。

  具体的には、すでに始まった「円安」により、「海外からの輸入商品」が、大きく値を上げることも想定されるのだが、このことは、今まで「1万ドル」の商品に対して、「1ドルが80円」の時には「80万円の支払い」で済んだものが、現在のような「89円」にまで円の価値が下落すると「89万円の資金」が必要になるということである。しかも、より一層の「円安」が起きた時には、この金額が「90万円」や「100万円」にまで増えることも想定されるわけだが、この時に起きることは、「物価の上昇が、金利の上昇に繋がる」ということである。

  つまり、「長期金利=短期金利+期待インフレ率」という考えから導かれることは、「今後、長期金利の上昇が起きる」ということであり、かつ、「国債価格の暴落が始まる」ということである。その結果として、「日本の国家財政」は、より一層、厳しい状況に追い込まれることになるようだが、「すでに、日銀は、紙幣の増刷を始めている」という状況下で、「更なる紙幣の大増刷を余儀なくされる」という事態も想定されるのである。

  そして、このことが、典型的な「ハイパーインフレ」への道筋とも言えるのだが、究極的には、「初セリのマグロ」だけではなく、「全てのマグロの価格や、その他の食料品価格などが、1億円を超えるような状況」も想定する必要性があるようだ。そのために、現在の株価上昇に対して、単純に喜ぶだけでなく、今後は、「お金は、インフレで価値を失う」という点を理解しながら、同時に、来年の「マグロの初セリ」で、どれほどの価格が付くのかに注目する必要性があるものと考えている。(2013.1.7)

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絶望から始まった「日本株の価格上昇」

  昨年の「11月14日」に、「野田首相」と「安倍自民党総裁」との「党首対談」が行われ、この日から、日本株の急騰が始まったのだが、当時は、誰も日本株の上昇を期待せず、まさに、「絶望感の極致」とも言える状況だった。つまり、「相場の格言」のとおりに、「新たな強気相場が絶望の中から生まれた」ということだが、現時点では、「懐疑とともに育っている段階」とも言えるようだ。

  具体的には、「多くの人が弱気でありながら、今までに溜まり続けた上昇エネルギーが放出される段階」ということだが、過去の経験則からは、「この段階においては、循環物色による全面高の相場が起きやすくなる」という結論が導かれるのである。また、今後は、「楽観とともに熟し、陶酔の内に終わる」という状況も想定されるのだが、今回の注目点は、やはり、「ギャロッピング・インフレ」や「ハイパーインフレ」の時期に、「どのような相場が展開するのか?」ということだと考えている。

  つまり、「本当のインフレ」が始まった時には、「約1年」という短い期間に、「さまざまな商品が、信じられないほどの価格にまで高騰する」という事態が考えられるのだが、現時点では、「誰も、このことを想定していない段階」とも言えるようである。そのために、当面は、「円安」や「株高」が、「今後、どのようなスピードで進展するのか?」に注目しながら、同時に、「プログラム売買の動向」を見ていく必要性があるものと考えている。

  具体的には、「円安になれば株高になり、また、金利が上昇する」という「プログラム売買の巻き戻し」のことだが、これから予想されることは、「ある時点で、一挙に、金利の急騰が起きる」ということである。つまり、本格的な「円安」が始まると、一挙に、「国債価格の暴落」が始まるものと考えており、その時には、「株価の急騰」という事態も想定されるのである。

  そして、このような状況が「約6か月間」も継続した時に、私が最も恐れている「ハイパーインフレ」へと移行することも考えられるのだが、この時点では、「楽観」を通り越して「陶酔」のような状況になっていることも考えられるようである。このように、「2013年」には、これほどまでの大変化が起きることが予想されるのだが、実は、このような状況こそが、私が10年以上前から想定していた「最後の段階」とも言えるのである。そのために、当面は、「目先の利益」を享受しながらも、一方で、「冷めた目」を持つことが大切だと考えている。(2013.1.7)

本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/ja/column.html  を許可を得て転載。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
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