アメリカのプレッパーズ
最近、アメリカでは「プレッパーズ(PREPPERS)」と呼ばれる人の数が多くなっているようだが、この言葉は「将来の危機や混乱に備えようとする人々」のことを意味している。そして、彼らは、現在の「世界的な情勢」を見ながら、「今後、どのような事件が起きるのか?」を予想し始めているのだが、この理由としては、「どのような事態になっても困らないように、今から準備する」ということが重要視されているからである。
このように、現在のアメリカでは、現代人が忘れ去った「野性的な危機意識」とでも呼ぶべき感覚を持つ人が増えているようだ。つまり、今までに起きた「金融混乱」や「世界的な環境問題」などを見ることにより、「得体の知れない、大きな変化が起きているのではないか?」と感じ始めている人々が増えているようである。また、彼らの関心事は、多岐にわたっているのだが、現時点での「トップ5」を見ると、主に、「金融問題」と「食料問題」に偏っていることも理解できるのである。
具体的は、「なぜ、アメリカ国民が、大量の銀を買い始めたのか?」、あるいは、「ドイツが、なぜ、今回、正式に金(ゴールド)の返還を求めたのか?」ということであり、また、「なぜ、アメリカの大富豪は、モンタナで農地を買い求めているのか?」ということなどである。そして、「過去の歴史」を振り返りながら、「現在の金融システムが、どのような過程を経て生まれたのか?」を模索し始めたようにも思われるのだが、「この時に、大きな転換点となったのが、1971年のニクソン・ショックだった」という点にも、徐々に、気付き始めたようである。
つまり、「ベトナム戦争」の時に、多額の軍事費を使い、「ドルの乱発」が行われたのだが、この点に不信感を抱いた「ドイツ」や「フランス」が「ドル紙幣ではなく、金による支払いを求めた」という状況が、今回の、「ドイツの中央銀行が、アメリカに対して、正式に金(ゴールド)の返還を求めた」という事実に重なって見えるようである。
このように、海外では、「備えあれば、憂いなし」という言葉のとおりに、「嵐の日に備えて、今から準備をする人々」が増えているのだが、残念ながら、現在の日本人は、「いまだに、金融混乱の本質を理解していない状況」とも言えるようである。そして、「アベノミクス」に対する期待感が膨らむとともに、「景気の回復により、現在の株価上昇が起きている」とも考えているようだが、実は、「株価の上昇と円安は、本当の金融大混乱の始まり」とも言えるのである。(2013.1.29)
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第三次世界大戦の可能性
現在のマスコミでは、「有事に備えて軍事力を強化すべきである」、あるいは、「世界的な緊張が高まりつつあり、将来的に、日中の間で軍事衝突もありうる」というような意見が増えているようだ。そして、極端な人々は、「第三次世界大戦」の可能性まで示唆しているようだが、かりに、このような世界大戦が起きた場合には、「核爆弾の投下合戦が起き、地球上にだれも住めなくなるような事態」も想定されるのである。
そのために、私自身は、世界規模での戦争については、単なる杞憂にすぎず、今後は、地域的な軍事衝突程度で終わるものと考えている。そして、その理由として挙げられることは、「人々の予想は、往々にして、実現しない場合が多い」ということであり、また、「失敗の経験が残像として残っている間は、新たな失敗が繰り返されない場合が多い」という経験則が指摘できるからである。
つまり、「日本は神の国であり、決して、戦争に負けるはずがない」と心から信じていた国民が、「原爆投下により、敗戦に繋がった」という事実を忘れることはなく、また、今回の「3・11の大震災」により、「放射能被害の恐ろしさ」を、身をもって実感したために、現代の戦争とも言える「核戦争」に対しては、全力で阻止することが考えられるのである。
しかし、問題は、「まだ経験していない失敗に対しては、驚くほどの楽観主義に陥りやすい」ということであり、このことが、現在の「目に見えない金融戦争」のことである。具体的には、「デリバティブの大膨張」や「世界的な国債バブル」については、現在でも、ほとんど理解されておらず、「60数年前の日本人」と同様に、「日本国債が暴落するはずがない」と短絡的に信じ込んでいるのである。
そして、このような心理状態を利用して「世界的な金融コントロール」が起きていたのだが、さすがに、現在では、「全ての手段が使い果たされるとともに、世界的な国債価格の下落が見えてきた」という状況のようである。つまり、現在の「円安」や「株高」については、「プログラム売買の巻き戻し」が、根本的な原因であり、今後は、この動きが、急速に加速していくものと考えているのだが、この時に起きることは、「先進国の財政破綻」であり、また、「金融システム」や「通貨制度」などの完全崩壊である。別の言葉では、現在の「金融大戦争」が終了することが予想されるのだが、問題は、「この過程で、現在の金融資産が、ほとんど価値を失ってしまう」ということである。(2013.1.29)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/ja/column.html を許可を得て転載。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
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