ギャロッピング・インフレ
現在は、「約5年間のリフレーション(通貨の膨張政策)」の時期を経て、「ギャロッピング・インフレ」の段階が始まったものと考えているが、市場では、この点に、大きな誤解が存在するようだ。つまり、「これからリフレーションの段階に入る」というような意見が散見されるのだが、現時点で起きていることは、膨大に膨れ上がった「マネーの歯車」が回転を始め、さまざまな商品価格を押し上げているということである。
別の言葉では、「国債の買い支え」が限界点に達し、「いろいろな市場へ資金が流れ始めている状況」とも言えるのだが、「実体経済」しか見ない人々にとっては、どうしても、この点の理解が難しいようである。つまり、「近代経済学の欠点」として指摘できることは、「マネー理論の欠如」であり、その結果として、「金融混乱の本質」が見えなくなっているということである。具体的には、「世界に、どれだけのマネーが存在し、これから、その資金が、どの商品に向かうのか?」という、「投資において、最も重要な点」が忘れ去られているのである。
つまり、現在では、膨大に膨れ上がった「世界のマネー」が暴れ始めており、結果として、「日本株は、記録的な上昇を始めている」という状況にもなっているのである。換言すると、「相場は世の鏡」という言葉のとおりに、「マネー理論」からは、当然の事が起きているのだが、「戦後の経済成長」だけを研究してきた人々にとっては、「通貨の堕落」や「通貨価値の減少」という「本当のインフレ」が理解できないようである。
このように、現在の「経済学」においては、「マルクス」や「ケインズ」が重要視していた「貨幣論」を考える人が「ほとんど皆無の状態」とも言え、結果としては、「デフレからの脱却」という言葉に惑わされてもいるようだ。しかし、現在、起きていることは、前述のとおりに、「ギャロッピング・インフレ」であり、その後に、「ハイパーインフレ」へと繋がることが想定されるのである。
より具体的には、「国債価格の暴落」や「円安の進行」により、「インフレ率」や「金利」が急上昇することが想定されるのだが、この時に起きることは、「実物資産の価格高騰」であり、「一時的な景気回復」とも言えるのである。しかし、実際には、現在の「金融システム」が崩壊を始めている状況でもあり、「これから、本格的な金融混乱が始まる」とも考えられるのだが、やはり、「ケインズ」の言葉のとおりに、「誰も気づかないうちに、通貨の堕落が起き、通貨制度の崩壊が起きる」という状況でもあるようだ。(2013.2.7)
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不気味な昂揚感
現在の日本では、「不気味な昂揚感」が市場を支配しているようだ。つまり、「記録的な株価の急騰」に喜びながらも、その裏側で、「国家の財政問題」については、「ほとんどの人が、解決不能なのではないか?」と考え始めているからだ。別の言葉では、「なぜ、日本の国家財政は、これほどまでの悲惨な状態に陥ったのか?」という長期的な視点から、日本経済を考えながらも、一方で、「目先の株価上昇に、乗り遅れてはいけない」という短期的な考えも捨てきれないようにも感じられるのである。
このように、現在では、「日本」を始めとして、全ての先進国で、国家財政問題が、きわめて深刻な状況に陥っているのだが、今回、アメリカでは、国家債務問題の先送りに関して、たいへん注意すべき言葉が使われたようである。具体的には、「TEMPORARY SUSPENSION(一時的な棚上げ、停止)」という二語のことだが、実は、「1971年のニクソン・ショックの時にも、まったく同じ言葉が使われた」という指摘が、海外から出ているのである。
つまり、「ニクソン・ショック」の実情としては、「ドイツやフランスから、ドルではなく、金(ゴールド)による支払いを迫られた」という状況下で、「ニクソン大統領は、一時的に、金とドルとの交換を停止した」ということである。しかも、実際には、その後、42年間も、「一時的な棚上げ」が継続しているのだが、今回は、「米国の債務上限問題」について、同じような手法が繰り返される可能性が高まっているのである。
具体的には、「5月19日まで、債務問題を先送りする」という発表のことであり、現在では、「一時的な棚上げ」と考えられているのだが、この時には、「上限を引き上げたとしても、誰が、その国債を買うのか?」という大問題が存在するのである。つまり、今回は、「国債の増発」ではなく、「紙幣の増刷」により「国家の借金を棒引きにする」という方法が取られる可能性が高くなっているのだが、歴史上からは、「究極の解決策」とも言えるようである。
このように、現在の世界情勢に関して、「ハイパーインフレ」を予想する人々は、「貴金属」や「株式」などの実物資産を買い始めており、一方で、「国債を守る陣営」も、「打つ手がなくなり、インフレ政策を遂行しようとしている状況」とも言えるようだ。そして、このことは、今回の「世界的な株高」の後に想定される「ハイパーインフレ」の時に、はっきりと見えてくるものと考えている。(2013.2.7)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/ja/column.html を許可を得て転載。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔opinion1187:130301〕