本間宗究「ちきゅうブッタ斬り」(7)

著者: 本間宗究 ほんまそうきゅう : ポスト資本主義研究会会員
タグ: , , , ,

崩壊を始めた信用本位制 

  現在の金融混乱は、「1971年のニクソンショック」に根本的な原因が存在するということは、世界中の人々が認識を持ち始めたようだが、残念ながら、「過去40年間の通貨制度」については、全く理解が進んでいないようである。つまり、この間は、「どのような本位が存在し、現在の金融大膨張に繋がったのか?」ということだが、ほとんどの人が考えていることは、「管理通貨制度」とか「ドル本位制」というような、「通貨制度の基本」からは、大きく逸脱した意見になっているのである。

  つまり、「お金」というものは、根本に、「本位」という「絶対的な価値基準」が存在し、その本位を元にして、「不換紙幣」や「兌換紙幣」などの「通貨」が発行されるのである。別の言葉では、「最終的な信用の担い手」が存在しない限り、「通貨の発行は不可能である」ということだが、この点については、「歴史上の何人も、貨幣の謎を解明した人はいない」と言われているように、依然として、「人類の暗闇の部分」とも考えられるのである。

  そして、「過去40年間」に起きたことは、「このことを利用して、政府や中央銀行、あるいは、メガバンクなどが、大量の資金を生み出した」ということだったが、一方で、多くの大衆は「お金の奴隷」となり、「訳も分からずに、正体の知れないお金を欲しがった」という状況でもあったのである。そのために、私自身は、「1996年頃」から、「現在の通貨制度は、信用本位制である」と主張し、「金融の大膨張は、将来、大きな禍根を残すことになる」と訴え続けてきたのだが、実際に起きたことは、「歴史上、最大規模の金融バブル」だったのである。

  別の言葉では、現在の通貨制度というのは、根本の「本位」が、人々の「信用」や「錯覚」であり、また、世界的なコンピューター・ネットワークを利用して、膨大な量の「電子マネー」が創り出されたということである。そして、この時に、世界中の人々が、「お金さえあれば、人生は安泰だ」と考え、「影も形もない、単なる数字」を欲しがったのだが、現在では、徐々に、この「呪縛」から解き放たれているようにも感じられるのである。

  また、この混乱が、「今後、どのような結末を迎えるのか?」という点については、やはり、過去の歴史が教えてくれているものと考えているが、基本的な点としては、「バブルは、必ず、弾ける運命にある」ということであり、今回も、世界中の人々が、現在の「お金」は、「裸の王様だ」と気付いた時に、歴史上、最大規模の「通貨のバブル」がはじけ、一挙に、本当の混乱が始まるものと考えている。(8月26日)

————————————————————————————————————————————————————————

ヨーロッパの金融危機

  ギリシャの1年国債金利が、9月14日時点で、「141%」にまで上昇している。つまり、日本の「闇金融」のような金利になっているのだが、興味深い点としては、「ドイツの10年国債金利は、史上最低レベルにまで低下した」という事実である。つまり、極端な二極化が進展しているのだが、この裏側には、想像以上の力が働いていることが考えられるようだ。具体的には、「国債価格の下落を、極端に恐れる人たちが存在するのではないか?」ということであり、また、「このままでは、ギリシャがユーロから離脱するのではないか?」と懸念する人々の存在し、「国債を買い支えているのではないか?」ということである。

  また、今回の金融危機については、「ヨーロッパ」の状況だけを見るのではなく、「アメリカ」や「日本」も含めた、世界全体を考える必要性があるのだが、より根本的な点としては、「過去数百年」という期間に、どのような推移を経て、現在の「金融システム」や「通貨制度」が形成されたのかを理解することが必要とされているのである。そして、これらのことが十分に認識された時には、世の中が、新たな段階へと進化することも想定されるのだが、問題は、やはり、今後の金融混乱である。

  つまり、現在では、「金融機関の資金繰り」に関して、大きな問題が出始めているようであり、そのために、「金融株の値下がり」という事態に見舞われているのだが、この点に関して、少しだけ時間を進めると、「金融機関が国債を買えなくなると、どのようなことが起きるのか?」という疑問につながるのである。別の言葉では、現在のような、「株式を売り、国債を買う」という手法を駆使して、問題の先送りが図られている状況が、「根本的に行き詰ってしまうのではないか?」ということである。

  そして、この点に気付いた人々が、急速に、「金(ゴールド)」などへ資金を移動させているという状況でもあるのだが、現在の「ギリシャ」というのは、「ハイパーインフレ」が始まる前の「ジンバブエ」のようにも感じられるのである。つまり、今後は、ギリシャを先頭にして、いろいろな国で、ハイパーインフレが起きる可能性が高まっているのだが、このことが、海外の識者が言い始めた「グローバル・ハイパーインフレ」ということである。しかも、今回は、世界で最も信用力のある「アメリカ」においても、同様の事態が見込まれるような状況になっているのだが、この点については、今後、数週間という期間に、「ギリシャ」や「ポルトガル」、あるいは、「イタリア」などの金利を見れば、はっきりとすることが考えられるようである。(9月15日)  

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔opinion0615 :110915〕