本間宗究「ちきゅうブッタ斬り」(9)

著者: 本間宗究 ほんまそうきゅう : ポスト資本主義研究会会員
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無制限の資金供給 

  今回の「ギリシャ危機」に関しては、「大混乱の始まり」を意味しているようだが、それにしても、「1年国債の金利が、短期間のうちに、140%台にまで急騰した」という事実には、世界中の人々が、心の底から、驚かされたようである。そして、先進国の政府は、慌てて、「年末にかけて、無制限の資金供給を行う」という発表をしたのだが、このことは、反対に、人々の不安感を増幅させる可能性もあるようだ。つまり、現在では、人々の「金融システム」に関する理解が進んできたために、「どのようにして、資金供給を行うのか?」という点において、「大きな疑問」が出始めているからである。

  具体的には、「先進国の中央銀行は、どのようにして、その資金を手当てするのか?」ということであり、また、「中央銀行は、どこまで、バランスシートを増やし続けることができるのか?」ということである。そして、このような混乱を見ることにより、多くの人が、「通貨制度の歴史」を振り返ったり、あるいは、「過去のハイパーインフレ」を研究したりしているようだが、最も重要な点は、現在の通貨制度が、「1971年のニクソンショック」により「金本位制から離脱した」ということである。

  そして、その後は、「デリバティブ」を始めたとした、さまざまな「金融商品」が、「空前絶後」とも言えるほどの規模で、大膨張を始めたのだが、ほとんどの人は、このような事実に、まったく気付かなかったのである。つまり、「お金さえあれば、この世は安泰だ」というような考えに世界中の人が染まり、結果として、「地球環境の破壊」に繋がるような行動を取ったのだが、結局は、「マネーの大膨張」が「金融混乱」に繋がり、現在では、「自分の身に、火の粉が降りかかっている」という状況になっているのである。

  そのために、今後の展開を考える場合に、最も大切な事は、「大膨張したマネーを、どのようにして、収縮させるのか?」ということであり、「増税では、決して、問題が解決できない」ということである。つまり、現在の「増税すれば、国家財政問題は解決する」というような議論については、「単なる時間稼ぎにすぎない」ものと思われ、実際には、「先進国の金利が上昇を始めたら、あっという間に、資金難に陥る」というような状況が考えられるのである。

  つまり、過去の歴史を見る限りにおいては、「ハイパーインフレ」により「借金を、一挙に、棒引きする」という方法しか残されていないようだが、このことが、「目に見えない税金」である「インフレ税」のことである。(9月16日)
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国債のツインタワー 

  「ヨーロッパの金融混乱」は、日に日に、状況が悪化しているようだ。そして、この混乱は、徐々に、その他の国々に移行しつつあるようだが、この間に起きたことは、「問題の本質が、人々の目に、はっきりと見え始めた」ということだと考えている。つまり、時間の経過とともに、「政府が、どのような事を行っているのか?」ということが、多くの人に理解され始めているのだが、具体的には、「先進国の国債価格を守ることだけに専念している」ということである。

  別の言葉では、「9月21日のFOMC」の後に、「商品価格の暴落が起き、また、世界の株式市場も、急落局面に見舞われた」という状況でありながら、「先進国の国債」に関しては、「無傷」どころか、反対に、「史上最高値の水準」を保っているのである。つまり、「国民が大きな被害を受けながらも、政府は、まったく影響を受けなかった」という状況だったのだが、この点に関しては、「人々の認識が深まるとともに、大きな不満が高まっている状況」とも言えるようである。

  つまり、「国債価格さえ暴落しなければ、世の中は安泰である」というような考えが、先進国の政府に存在するようだが、実際には、「PIIGS」と呼ばれる国々においては、「金利の上昇とインフレにより、生活が、ますます苦しくなっている」という状況が見て取れるのである。別の言葉では、「国家の間においても、二極分化が進行している」ということだが、この時に、はっきりと見えてきたのが、「国債のツインタワー」とでも呼ぶべき「日米の国債残高」だったようである。

  具体的には、「世界の国債残高」を絶対額でみた時に、「日米の借金総額」は、「1000兆円前後」というように、突出した形になっているのだが、一方で、「歴史的に見ても、最も低い水準で、金利が保たれている」という状況になっているのである。そして、「なぜ、このような事が起きているのか?」という点に、世界中の注目が集まり始めているようにも感じられるのだが、今後の展開としては、「外堀が埋まり、本丸にまで、問題が飛び火する」という事態が想定されるようである。

つまり、「9・11事件」の時のように、「国債のツインタワーが、一瞬にして、崩壊するような局面が訪れるのではないか?」ということだが、過去の歴史を見る限りにおいては、「どのようなバブルも、必ず、崩壊する」ということと同時に、「今回は、史上最大級のバブルが形成された」という点も、はっきりと見えてきたようである。(9月27日)

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ツイスト・オペレーション

  9月21日の「FOMC(連邦公開市場委員会)」で発表されたことは、「QE3]ではなく、「ツイスト・オペレーション」だった。具体的には、「長期国債を買い入れる代わりに、短期国債を売却する」というものであり、このことは、「FRBのバランスシートを膨張させずに、長期金利の上昇を防ぎたい」という政府の思惑が反映されたものである。つまり、今までのような、「中央銀行が、大量の資金を投入し、国債を買い付ける」という方法から、「バランスシートの中で調整を行い、全体の金額を抑える」という意図によるものだが、この点については、きわめて重要なメッセージが発信されたものと考えている。

  つまり、「FRB」にとって、「これ以上のバランスシート膨張は容認できない」、あるいは、「今までの方法では、実務的に、バランスシートが膨張できなくなった」という点を認めたようなものだと考えている。より詳しく申し上げると、「今までの膨張については、電子マネーが主体であり、紙幣の増刷は限定的なものだった」という状態だったのだが、今後は、「電子マネーの膨張ではなく、紙幣の大増刷が実行される」というメッセージだったものと思われるのである。

  このように、今回の「ツイスト・オペ」の発表は、「アメリカの中央銀行は、資金繰りに行き詰った」ということを、素直に告白した可能性があるものと考えているのだが、その後に起きたことは、きわめて無謀な行動でもあったようだ。具体的には、「政策の効果」を強調するために、「株式」や「商品」を売り叩き、ご丁寧に、「商品取引の保証金率を上げる」ということまで行ったのである。

  その結果として、「貴金属価格の暴落」や「世界的な株価の急落」という事態に見舞われたのだが、一方で、「先進国の国債価格」は、史上最高値の水準を保っているのである。つまり、「国債価格の下落を防ぐために、株式や商品の価格を犠牲にした」というような状況だったのだが、このことは、「カダフィ大佐が、最後の段階で、傭兵を雇い、国民を虐殺した」というような状況を想定させるようである。しかし、その後に、リビアで起きたことは、「国民の怒りを高め、結局は、地位を失った」ということだった。

そのために、今回の「ツイスト・オペ」に関しても、「どのような結末が待っているのか?」が、今後の大きな注目点になるのだが、歴史が教えることは、「独裁者は、必ず、滅びる運命にある」ということであり、また、「どのようなバブルも、独裁者と同じ運命にある」ということである。(9月27日)

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔opinion0637 :111006〕