米国の国防予算と集団的自衛権
現在、日本では、「集団的自衛権」を巡る議論が、活発に行われているが、国民の中には、「なぜ、今、この議論が必要なのか?」という疑問を抱く人も、数多く存在するようである。つまり、「東北の復興」や「国家財政問題」、あるいは、「急速に進展する少子高齢化問題」など、現在の「安倍政権」が取り組むべき課題は、山積している状況であり、「優先順位が違うのではないか?」とも思われるからである。
また、「中国」や「韓国」との「首脳会談」を実現せずに、「仮想敵国との間で、実際の紛争が起きた時の自衛問題」を議論することにも、大きな違和感を覚えざるを得ないようである。つまり、「孫子の兵法」のとおりに、「戦いを避けることが、最も重要な作戦」とも思われるのだが、実際には、反対に、「戦い」に関する認識を、国民の間に、広めようとしているようにも思われるのである。
そのために、「なぜ、今、集団的自衛権なのか?」という理由を考えると、この裏側には、「米国政府による、大幅な軍事費削減」が存在するようである。具体的には、「2013年度予算案」で「約86兆円」の規模だったものが、「2014年度予算案」では「約62兆円」へと、大胆な削減が予定されているのである。そして、このことは、当然のことながら、「日米の安保体制」にも、大きな影響を与えるものと思われるが、具体的には、「日本の国防については、主に、日本人自身が担当せざるを得ない状況」のことであり、確かに、この可能性については、除外できないようにも思われる次第である。
このように、現在の「アメリカ」には、「覇権国家」として「世界の安全を守る」という役割が難しくなっている可能性もあるようだが、この裏側に存在する「最も強力な経済力」についても、現在では、暗雲が立ち込めてきたようにも感じている。つまり、今までは、「デリバティブの大膨張」や「量的緩和政策の推進」などにより、「世界に冠たる金融力」を誇示することができたのだが、現在では、「TARP」という「不良債権救済プログラムの予算」までもが削減されようとしているのである。
具体的には、「2008年のリーマンショック」以降、「市場安定化の資金」として、「TARP」が計上されていたのだが、今回は、「量的緩和の終了宣言」と同時に、この予算が削減されているのである。そのために、今後は、「金融混乱の激化」が予想されるとともに、「大膨張した世界のマネー」が、本格的に動き出すものと考えているが、この「先駆け」となっているのが、現在の「世界的な株高」とも言えるようである。(2014.5.26)
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貴金属の価格操作
「イギリスの金融管理庁(FCA)」は、5月23日に、英金融大手バークレイズの元トレーダーが金価格を不正に操作したことにより、同社に「2603万3500ポンド(約44億6470万円)」の罰金支払いを命じた。また、不正を行った元トレーダー個人にも「9万5600ポンド(約1640万円)」の支払いを命じたが、このことは、以前の「LIBOR(ロンドン銀行間取引金利)の不正操作」と同様に、「現在の金融市場が、いかに、歪んだ状態になっているのか?」を、証明したような事件とも言えるようである。
つまり、「金利」のみならず、「為替」や「貴金属」などの市場価格が、「本来、あるべき水準から、乖離した位置に存在している」とも言えるのである。具体的には、「デフォルトの危機」に瀕した「アメリカ」で、依然として、「ゼロ金利政策」が実施され、また、「量的緩和」の名のもとに、「中央銀行が、依然として、大量に国債を買い付けている」という状況などのことである。
そして、この理由としては、「金利が正常な水準にまで戻った時に、どのような事が起きるのか?」を考えれば明らかなようだが、最近、海外では、「4月14日」に発生した「日本国債の商い不成立」が、大きな注目を浴びているようである。つまり、「世界で、最も大きな国債市場」の一つである「日本」で、「新発10年国債の商いが成立しなかった」という「異例の事態」が発生したのだが、この点については、さまざまな憶測や意見が出ている状況となっているのである。
このように、現在では、「世界の金融市場」において、「いろいろな事件」が発生するとともに、「これから、どのような事が起きるのか?」という疑問や危機感が増幅しているようである。別の言葉では、ようやく、現在の「通貨制度」や「金融システム」に関する「問題意識」が、多くの人に芽生えてきたようだが、この時に考えなければいけないことは、「お金とは、本来、どのようなものか?」ということである。
あるいは、「なぜ、現在、大量の資金が、世界に存在するのか?」ということでもあるが、この点については、今までに申し上げた通りに、「1971年のニクソンショック」をキッカケにして、「世界的なマネーの大膨張」が起きたことが、最も大きな原因だったのである。つまり、「コンピューターの中に存在する、単なる数字」が、現代の「通貨」となり、「人々の信用や錯覚」を元にして、歴史的な規模で大膨張したのだが、今回の「金の価格操作」については、この点を見直すための、たいへん重要な事件だったようである。(2014.5.26)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
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〔opinion4893:140624 〕