金利上昇の波紋
8月末現在で、「日銀のバランスシート」は、総額が「約361兆円」にまで拡大しており、また、「当座預金残高」は「約231兆円」にまで増えている。そして、「国債の保有額」は、「約306兆円」という、前代未聞の金額にまで増えているが、この時に考えなければいけない点は、「金利上昇の波紋」であり、具体的には、「短期借り、長期貸し」の恐ろしさだと考えている。
つまり、今後、世界的な「金利上昇」が起きた時に、「日銀のバランスシートが、どのように変化するのか?」ということであり、また、その時に、「日本のみならず、世界の金融システムは、どのような状態に陥るのか?」という点である。具体的には、現在、「当座預金の超過分」に対して、「0.1%金利」を払っているが、今後、「金利の上昇」が起きた場合には、金利支払い分が急増することも予想されるのである。
しかも、この時に考えなければいけない点は、「短期資金を借りて、長期国債へ投資している状況」のことだが、実際には、「恐怖心を感じざるを得ない状態」とも言えるようである。つまり、今後、短期金利が「0.5%」にまで上昇しただけで、「金利の支払額は、1兆円を超える状態」となるが、一方で、「保有国債から得られる金利は、固定されているために、変化しない状況」だからである。
別の言葉では、「若干の金利上昇で、日銀の資金繰りが、きわめて危機的な状況に陥る」ことが予想されるのだが、同時に考えなければいけない点は、「その時に、継続して、国債を買い続けられるのか?」ということである。つまり、「国債を売却すれば、国家財政が破綻状態に陥る可能性」が存在するために、現在の「日銀」は、「どのような手段を用いようとも、国債を買い続けなければいけない運命」となっているのである。
そして、このことが、数年前から、「中央銀行の中央銀行」と呼ばれる「BIS]が指摘し続けてきたことだが、具体的には、「各国の中央銀行は、最後に、どのような手段でも用いる」、しかし、「最後に市場の反乱が起き、その後は、後追いで、急速な金利の上昇に追い込まれる」という可能性である。つまり、「1991年のソ連」で起きたことと、似たような状況のことだが、不思議な点は、これほどまでの状況になりながら、誰も、この点を指摘しないことである。しかし、実際には、「ケインズ」が主張する「通貨の堕落過程では、100万人に一人も気づかないうちに事態が進行する」という展開となっているようにも感じられるのである。(2015.9.8)
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民族の大移動
村山節氏が創られた「文明法則史学」によると、「800年に一度、東西文明の交代が起きる」とのことであり、また、その時には、「完熟文明の形成」と「民族の大移動」が伴うそうである。具体的には、「西暦400年前後の西ローマ帝国」であり、また、「西暦1200年前後」の「中国の宋文明」からも明らかなように、「巨大都市の形成」という「完熟文明」が形成されたものの、その後は、「財政赤字」や「インフレ」などにより、きわめて短期間の内に、「巨大都市の崩壊」が起きたことが見て取れるのである。
そして、その時には、必ず、「人口の大移動」が起きるそうだが、実際には、「前半」と「後半」とに分かれていることも理解できるようである。つまり、前半は、「豊かな文明」を求めて、人々が、大都市に移動したが、後半においては、「大都市での生活」が苦しくなり、多くの人が、地方や海外へ移動したのである。具体的には、「ゲルマン民族の大移動」や「元の侵攻」などのことだが、今回の「ヨーロッパに殺到する難民」を見ていると、すでに、後半部分が、世界的に始まった可能性も考えられるようである。
つまり、「アメリカの正義」を浸透させようとして、「アフガン」や「イラク」などを攻撃したことが、結果として、「内戦状態」を引き起こし、実際には、「人々が住めないような状況」を作り出したものと考えている。別の言葉では、「覇権国」であり、また、「世界の警察国家」と言われる「アメリカ」が、今回の難民に関して、直接的、間接的な影響を持っていたようだが、今後の注目点は、「先進各国は、本当に大丈夫なのか?」ということでもあるようだ。
具体的には、「日本」において、「約4000万人の公的年金受給者」や「約200万人の生活保護受給者」が存在するが、今後は、「わずかな金利上昇で、日銀による国債の買い支えが難しくなる可能性」が存在するのである。つまり、先進各国の「金融システム」や「通貨制度」は、現在、「中央銀行による国債の買い支え」によって、かろうじて維持されている状況とも言えるのだが、今後、この点に問題が起きた時には、「多くの国民が、生活苦に追い込まれる可能性」も存在するのである。
別の言葉では、現在の先進諸国は、「1991年のソ連」と、きわめて似たような状況となっているが、当時のソ連で起きたことは、「国債の消化が難しくなり、あっという間に、紙幣の大増刷に追い込まれた」という展開だった。そして、現在では、世界各国で、同様の事態が発生する可能性が、きわめて高くなっているのである。(2015.9.7)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
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〔opinion5710 :151005〕