本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(102)

著者: 本間宗究(本間裕) ほんまそうきゅう:ほんまゆたか : ポスト資本主研究会会員
タグ: , ,

社債金利の上昇

9月12日付けの日経新聞によると、「今年の初めから、社債金利の急騰が始まっている」とのことだが、このことは、典型的な「クラウディング・アウト」の状態を意味しているようである。つまり、「国家の資金需要」が強くなりすぎて、「民間の金融機関」や「民間企業」などに、「資金が回りにくい状況」が発生しているようだが、今後は、この動きが、「国債価格」にまで反映されるものと考えている。つまり、「国債の金利上昇(価格の下落)」であり、また、「ゼロ金利政策の終焉」のことだが、この点については、今までの推移を考えると、実に、恐ろしい結論が見えてくるようである。

より詳しく申し上げると、今まで、「日銀」は、「異次元の金融緩和」という名の下に、「民間からの資金吸い上げ」を実施しており、実際には、「量的緩和」と名付けられた、「当座預金の増加」が実施されていたのである。つまり、「約230兆円」もの資金を、「0.1%の金利」を支払うことにより、「民間の金融機関」から借り入れているが、この結果として、「民間部門で、資金不足が起き始めている可能性」が存在するのである。

別の言葉では、「国民の預金」に関して、「日銀が、間接的に、国債に振り替えている状況」のことだが、実際には、「民間の金融機関に預けられた預金」などが、国民の知らないうちに、いつの間にか、国債に投資されていたのである。しかも、この時に、「日銀トレード」という言葉までもが生まれ、このことは、「日銀が買うから、国債の価格が下がるはずがない」というような「バブル的な発想」が、「いつの間にか、日本人の間に浸透した状況」を意味しているのである。

つまり、典型的な「国債バブルの発生」のことだが、この事実を裏付けるように、現在では、「誰も、国債価格の下落を危惧しない状況」が起きているようである。別の言葉では、「バブルは、弾けた時に、初めて、その存在に気付く」というような状態となっているようだが、今回の「国債バブル」については、「未曽有の規模で、大きなリスクが存在する」ものと考えている。

具体的には、「1991年のソ連崩壊」の時と、似たような状況となっている可能性のことだが、当時の「ソ連」では、「国債価格の暴落」とともに、「大インフレ」が発生した。そして、「経済の教科書」のとおりに、「年金生活者」や「サラリーマン」などが、ほとんど、資産価値を失うこととなったが、現在の日本では、「約4000万人もの年金生活者」が存在し、「今後、どのような事になるのか?」が危ぶまれる状況とも言えるのである。(2015.9.16)

-------------------------------------------

堤防の決壊」と「火山の噴火」

今回の「鬼怒川などの堤防決壊」を見ると、改めて、「大自然の力」を認識するとともに、「天災と人災との関係性」を、再考せざるを得ないようにも感じている。つまり、東洋学では、古来、「人間の意識が歪むことにより、天の警告である、天災が起きる」と言われているが、実際には、「大膨張した世界のマネー」が、「地球の温暖化」を引き起こし、その結果として、さまざまな自然災害を引き起こしているようにも思われるのである。

しかも、この時に、「北極海の氷が溶けたから、資源開発などの、新たなビジネスチャンスが誕生した」と考える人々も、数多く存在し、その結果として、更なる「天災」が発生しているようにも感じられるのである。つまり、「過剰なマネーの存在」が、「過剰なビジネス需要」を喚起し、結果として、「地球が悲鳴を上げているような状態」となっているようにも思われるのである。

別の言葉では、「西洋的な考え方」である、「人間が、自然を支配する」という意識が、世界中に広がった結果として、現在の災害を引き起こしているようだが、この時に考えなければいけないことは、「いつまで、このような状態が継続するのか?」という点である。つまり、現在の「ゼロ金利政策」や「異常な超低金利状態」、あるいは、「デリバティブ(金融派生商品)」や「国債」などの「バブル」が存在することにより、現在、世界的に「自然災害」が発生しているようだが、この時に、「人類は、どこまで、金融のコントロールが可能なのか?」ということである。

具体的には、「世界各国の中央銀行が、大量に国債を買い付けた結果として、現在のような異常事態が発生している可能性」のことだが、実際には、典型的な「金融のコントロール(制御)」により、強引に、いろいろな資産価格が抑え込まれている状況とも感じられるのである。別の言葉では、「世界のマネーが、堤防に沿って、川を流れている状況」のようにも思われるが、この時に考えなければいけない点は、「金融界における堤防決壊」とも言えるのである。

つまり、すでに始まった「社債金利の上昇」のように、いろいろな市場で、コントロールが効かなくなる可能性のことである。しかも、今回は、「堤防の決壊」に続き、「阿蘇山の噴火」までもが起きており、このことは、「溢れ出した資金が、さまざまな資産価格を急騰させる状況」を想起させるようだが、実は、このことが、典型的な「ギャロッピング・インフレ」を意味しているのである。(2015.9.17)

本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔opinion5726:151014〕