本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(170)

著者: 本間宗究(本間裕) ほんまそうきゅう:ほんまゆたか : ポスト資本主研究会会員
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FRBが保有する金の残高推移

現在、海外では、「金(ゴールド)」に関するコラムや調査レポートが、数多く出ているが、このことは、人々の関心の高まりを表しているものと考えている。つまり、どのような商品においても、「需要」が発生するためには、「人々の興味と関心の高まり」が、重要な役割を果たしており、また、「需要」の増加に伴って「供給」が増えるという「メカニズム」が考えられるからである。

そして、今回は、「コサレス氏」という金融専門家のコラムを紹介させていただくが、内容としては、「過去100年間に、FRBが保有する金の残高が、どのような推移を見せたのか?」というものである。具体的には、「第一次世界大戦」の前に、「1000トン」にも満たなかった残高が、「二つの大戦」の後には、「2万2000トン」という「世界全体の約8割」を占めるほどにまで急増した状況のことだが、その後は、「1944年のブレトンウッズ協定」により、「一オンス当たり35ドル」という公的価格が設定され、「1971年のニクソンショック」の前には、「約8000トン」にまで急減したのである。

つまり、「第一次世界大戦の始まり」から「第二次世界大戦の終了」まで「約31年」という期間にわたり、「金の残高」が劇的な急増をしたために、当時の「米国政府」には、「金残高の減少に対する危機感」が存在しなかったものと推測されるのである。別の言葉では、「ドルは、金と同じぐらいの優良資産である」と考えたようだが、この意見に疑問を持ったのが、「ドイツ」や「フランス」などの「ヨーロッパ諸国」でもあった。

そして、「ドル」よりも「金」の方に、より大きな信頼感を置き、徐々に、「金への交換」をした結果が、前述のとおりに、「1万4000トンもの金残高の減少」となったのである。また、この事実に驚き、慌てた「ニクソン大統領」は、「史上初めての試み」である「通貨」と「貴金属」との関連性を断つ暴挙に訴えたが、この結果として発生した出来事が、いわゆる「マネーの大膨張」でもあった。

具体的には、「糸の切れた凧のような状況」で、「デリバティブ」が大膨張し、また、「国家の債務問題が、世界的にコントロール不能な状態となりつつある状況」のことである。そして、この点について、「コサレス氏」は、「歴史の教訓」として、「問題が大きくなりすぎた場合、往々にして、政府が対応不能な事態に陥る」という結論を述べているが、現在の「世界的なマネーの大膨張」や「国家の債務問題」も、間もなく、同様の結末を迎えるものと考えている。(2017.9.13)

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人民元建ての原油先物取引

「9月10日付の日経新聞」によると、「中国政府は、年内にも、上海エネルギー取引所で、人民元建ての原油先物取引を開始する予定」であり、しかも、この時に、「人民元が金と交換できる可能性」も報じられている。そして、かりに、この取引が実現すると、世界全体の「力関係(パワーバランス)」において、劇的な変化が生じる可能性が存在するようだ。つまり、「世界の覇権国家」に関して、現在の「米国」から、将来の「中国」への移行を象徴する出来事のようにも思われるが、基本的に、「原油や穀物、あるいは、貴金属などが、どの通貨で取引されるのか?」が「覇権国家」を見るうえで、最も重要な要因だと考えている。

具体的には、「1950年前後」に発生したことが、それまでの「大英帝国」から「アメリカ合衆国」への「覇権の移行」だったが、この前後に、さまざまな商品が、「ポンド建て」から「ドル建て」へと変化したことも見て取れるのである。このように、現在、「中国」が目論んでいることは、強大な「軍事力」と「経済力」を背景にして、「人民元の流通」を増やしながら、「世界における存在感」を増やすことであり、この時に、「上海協力機構(SCO)」を強化しながら、「金本位制」への復帰とも推測されている。

そして、前述の「金に交換可能な人民元建ての原油先物取引」については、まさに、この目論見を実行するための「最も有効な手段の一つ」とも考えられるようである。また、この時に、「サウジアラビア」を「アメリカ」から疎遠にして、「自分たちの陣営」に取り込もうとする動きも報道されているが、実際には、「アラムコ」の上場に関して、「中国が、大量の株式を購入する計画」とも噂されているのである。そして、この推測が正しく、「サウジアラビア」が「中国」と接近するような事態になると、まさに、「中国が世界を制覇する」というような状況が考えられるようだが、私自身としては、「そうは、簡単に問屋が卸さないのではないか?」とも感じている。

つまり、「文明法則史学」が教える「東西文明の転換」と、私自身が考案した「五次元経済学の基礎理論」を合わせて考えると、今後は、「世界の覇権国家」という考え方自体が、時代錯誤になる可能性が存在するものと思われるからである。別の言葉では、「西洋の時代」においては、「唯物論」や「マネー」などが「基本的な価値観」だったが、今後、予想される「東洋の時代」においては、「高貴な精神性」、あるいは、「唯心論」が「中心的な価値観」になるものと思われるのである。具体的には、「人々の興味と関心」が、大きく変化し、今までとは、まったく違った社会が形成される可能性を想定している。(2017.9.13)

本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion7024:171011〕