無用の用
老子に「無用の用」という言葉があるが、具体的には、「コップ」や「茶碗」などの容器、あるいは、「家」や「部屋」などの建物に関して、「本当に役立っているのは、中に存在する空間である」という理解のことである。つまり、多くの人々は、「茶器」や「高価なグラス」、あるいは、「立派なマンション」などに価値を見出しているが、「それらの物質が、人類に対して、どのような貢献をしているのか?」については、実際のところ、「空間において、どのような仕事が行われたのか?」が、より重要な点とも考えられるのである。
より具体的には、「戦国時代の武将が、何故、茶道を好んだのか?」を考えると、「質素な空間における一期一会の出会い」や「戦争で荒んだ心の安寧」を求めたからのようにも感じられるのである。つまり、本当に役立ったのは、「空間における人間の行為」だったものと想定されるが、今回、この点に関して気付かされたことは、「人間社会においても、同様の意味が当てはまるのではないか?」ということだった。
より詳しく申し上げると、「目に見える肉体」は「単なる容器」にすぎず、実際には、「目に見えない心」が重要な役割を果たしている可能性であり、また、このことが、仏教の「空」につながる可能性である。つまり、この世の仕組みとしては、最初に、「法界」が存在し、その中に、「人間社会」を含めた「大自然」が存在するものと考えられるが、この点に関して、最も重要なポイントは、「肉体を持った人間が、どのようにして、神の智慧を得ることができるのか?」ということのようにも感じられるのである。
別の言葉では、「洋の東西」を問わず、過去の人類が求めてきたものは、「人間とは、いったい、どのようなものか?」ということだったわけだが、「100年ほど前から発生している変化」としては、「量子力学」や「分子生物学」などの発展により、「人類が、急速に、神の智慧に近づき始めている状況」とも考えられるのである。つまり、「マクロの物理学」で得られた「既存の常識」が、「ミクロの物理学」などで打ち破られるとともに、「科学万能主義」の限界点が認識され始めた状況のことである。
そして、この点に関して、最も大きな役割を担ったのが、「マネーの大膨張」であり、実際には、「目に見えないデジタル通貨」となった「現代の通貨」が、「人々の意識」を大きく変化させた状況のことである。つまり、「最初に、人類を奢り高ぶらせ、その後に、人類の限界点を認識させる展開」のことでもあるが、現在は、「神様となったデジタル通貨が、紙切れへと堕落を始めた段階」とも言えるようである。(2021.7.6)
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存在の意味
哲学者の「ハイデッガー(1889年-1976年)」によると、「人類は、長い間、存在の意味を追い求めてきた」とのことだが、具体的には、「プラトンやアリストテレスなどのギリシャの哲学者」、そして、近代の「ヘーゲル(1770年-1831年)」などが、「存在の意味への問いを繰り返してきた」とも指摘しているのである。つまり、「なぜ、世の中には、いろいろなものが存在し、また、なぜ、いろいろな事象が発生するのか?」を考え続けてきたものと思われるのである。
別の言葉では、今回の「コロナ・ショック」などのように、「神も仏も存在するのか?」というほどの「悲惨な出来事」に直面した人々が、「歴史をたどりながら、さまざまな現象に対して、いろいろと思索を巡らせた状況」のことである。そして、現在は、「100年ほど前から始まった量子力学の研究」、あるいは、「50年ほど前から始まったデジタル通貨の大膨張」などにより、徐々に、「西洋の唯物論的な社会」から「東洋の唯心論的な社会」への移行が進展しているようにも感じられるのである。
つまり、「ライプニッツの予定調和」のとおりに、「世界の進化と発展」が継続している可能性のことだが、この時の問題点は、やはり、「人知」と「神の智慧」との違いとも言えるようである。別の言葉では、「人知の浅はかさ」により「神の真意」が理解できない可能性のことでもあるが、その結果として、「人々は、往々にして、絶望的な状態に陥る場面に遭遇する事態」が発生する可能性である。
ただし、この点については、「投資の基本」と似通った状況でもあり、実際には、「いろいろ銘柄が、なぜ、上がったり下がったりするのか?」、あるいは、「今後、どのような業種が成長し、また、どのような業種が衰退するのか?」などを考えることであるが、別の言葉では、「国家の興亡」も含めて、「歴史や時間のサイクル」を研究し、「根底に存在する神の思惑」を推理することである。
そして、このような観点から言えることは、これから800年間も継続が予想される「新アジア文明」に関して、「量子力学と言語学などの応用により、異次元の発展を見せる可能性」である。つまり、既存の「科学的な常識」が崩され、また、「貨幣価値の激減」などにより、「世界中の人々が、真剣に、存在の意味を考え始める可能性」でもあるが、この時の問題点は、「悲母観音」が象徴しているように、「人類の成長のためには、厳しい経験も必要である」という事実とも言えるようである。(2021.7.8)
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米国CPI5.4%上昇の衝撃
7月13日に発表された「米国6月の消費者物価指数」は「5.4%の上昇」という状況となり、海外では、大きな衝撃を持って受け止められたようである。つまり、周りを見回すと、いたるところで色々な商品の価格上昇が始まっており、そのために、今後の「狂乱的な物価の上昇」を危惧する人が増え始めているのである。別の言葉では、「パウエルFRB議長」が指摘する「一時的なインフレ」という説明について、「1971年のニクソンショックにおいても、『金と通貨との切り離しが一時的なものにすぎない』という説明があった」というように、「信用できない」という意見が聞かれる状況のことである。
そして、この点に関して憂慮すべき事実は、「通貨の目減り」が始まっている状況であり、実際には、「100万円の現金を持っていても、一年後には、95万円程度の購買力に落ち込む事態」である。つまり、現在、「米国のFF金利が0.1%」であり、「CPIとの差が5%以上の状態」というのは、「お金を持っていても、自然とお金の価値が失われる状況」を意味しているのである。
別の言葉では、「1991年のソ連」や「1923年のドイツ」のような状況が、世界各国で発生し始めているわけだが、ほとんどの人は、いまだに、「今までに起こらなかったことは、今後も起こらない」というような「根拠なき楽観論」に支配されているのである。つまり、「1923年のドイツ」においても、「最後に発生した6ヶ月間のハイパーインフレ」を経験するまでは、「ほとんどの人が、数か月後に、どのような悲惨な思いをするのかに気付かなかった」と言われているのである。
そのために、現時点で必要なことは、「現在が、ハイパーインフレ発生までの、どの時点に位置するのか?」を考えることでもあるが、「ドイツのハイパーインフレ」のケースでは、「1921年から22年の段階」とも想定されるようである。また、「1991年のソ連」においては、「国債価格の暴落」が「大インフレ発生の条件」でもあったが、現在、海外で憂慮され始めたことは、「流動性の消滅」である。
このように、現在は、「金融敗戦の前夜」とも思われるが、この点に関して、多くの日本人が言い始めたことは、「1945年と、より一層、似てきた状況」であり、実際には、今回の「東京オリンピック」が「インパール作戦に匹敵する可能性」である。そして、今後の注目点は、「金融界の大量破壊兵器」と言われた「デリバティブ」のバブル崩壊とも言えるようである。(2021.7.14)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
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