本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(390)

著者: 本間宗究(本間裕) ほんまそうきゅう:ほんまゆたか : ポスト資本主研究会会員
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FTXの破綻

「時間や暦のサイクル理論」から想定していた「11月初旬の金融混乱」は、「FTXの破綻」という結果となったが、このことは、「2001年の9・11事件」において、「目に見える金融ツインタワーへ突入したジェット機の役割を果たした状況」のようにも感じている。つまり、現在では、「約500兆ドルのOTC金利デリバティブ」と「約330兆ドルの世界債務」という「目に見えない金融ツインタワー」がそびえ立っており、このことが、「世界的なインフレや金利上昇の根本的な原因」とも言えるのである。

そのために、今まで、「タイミングの問題」に腐心してきたが、今回は、「2月24日に発生したウクライナへの軍事侵攻」や「9・11事件における四機のジェット機ナンバー」、そして、「1945年8月の原爆投下事件」などから、「11月の初旬」が導きだされた状況でもあった。ただし、私自身の未熟さとしては、「FTXの破綻」を考えていなかった点が指摘できるが、「未来予測のための必要条件」としては、シュペングラーが指摘する「成ること」に妄想を抱くのではなく、「成ったこと」を受け入れ、「時空における世界の全体像」というジグソーパズルを埋めることだと考えている。

別の言葉では、「なぜ、今回、FTXの破綻が発生したのか?」に関して、原因を考えながら、今後の展開を予想することでもあるが、実際には、「1971年のニクソンショック」をキッカケとして誕生した「信用本位制と呼ぶべき通貨制度」、そして、その後の「デリバティブとデジタル通貨の大膨張」が、根本的な原因とも言えるのである。また、今後の展開としては、「紙幣の増刷」、あるいは、「CBDC(中央銀行デジタル通貨)の発行」が議論されているが、実際には、「不安に駆られた国民が、紙幣とCBDCの、どちらを受け入れるのか?」が、大きな注目点になるものと感じている。

より詳しく申し上げると、今後、最も注目すべき点の一つは、「1998年の長銀国有化」の際に議論された「資金の貸し出しか、それとも、資本注入か?」という問題であり、実際には、「金融システムを安定させるためには、負債の増加ではなく、自己資本への資金注入が必要とされる状況」が予想されるのである。

そして、このような状況下で、国民が選択する行動は、過去のパターンのとおりに、「紙幣を引き出して、市場で実物資産へ交換を始める展開」であり、その結果として予想される事態は、「人類史上、未曽有の規模でのハイパーインフレ」でもあるが、この点に関して、現在は、まだ「序の口の段階」にすぎないものと感じている。(2022.11.16)
 
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デジタル円の盲点

最近、「BIS(国際決済銀行)」を中心にして、各国で、「中央銀行デジタル通貨(CBDC)」の研究や実験が盛んに行われているが、この理由としては、「中央銀行のバランスシートを、どのようにして再膨張させるのか?」の模索が指摘できるものと考えている。つまり、現在は、「量的緩和(QE)」から「量的縮小(QT)」への移行期と報道されているが、実際には、「資金繰りに窮した中央銀行を救済するために、日銀券などの紙幣ではなく、デジタル円などの中央銀行デジタル通貨の発行」が目論まれているのである。

より具体的には、「最後の手段」とも言える「紙幣の大増刷」に関して、「紙幣がコンピューターネットワークの中を流れることができず、金融界の白血病とでも呼ぶべき大問題を引き起こす可能性」が危惧されているのである。そのために、「日銀券などの紙幣」ではなく、「デジタル円などのCBDCの発行」が模索されるとともに、現在、「この方法は、理論的に、実現可能な状況ではないか?」と理解されているのである。

つまり、「日銀のバランスシート」を例にとると、「デジタル円を発行し、500兆円余りの当座預金や政府預金を返済する方法」により、「日銀が赤字に陥り、資本注入が実施される可能性」が消滅する状況も想定されるのである。そして、世界各国の中央銀行が、一斉に、この方法を取ることにより、「金融システム崩壊の問題」が解消される可能性も考えられるが、この時の問題点は、やはり、「通貨の供給量を、どのように制限するのか?」、あるいは、「国民の通貨への信用を、どのようにして維持するのか?」が挙げられるのである。

別の言葉では、「過去20年余りの期間」は、「デリバティブの大膨張が創り出した、大量のデジタル通貨の存在」により、「実物資産を基本とする実体経済」と「デジタル通貨を基本とする仮想現実的なマネー経済」との間で、「資金移動の制限」が可能な状況だったのである。しかし、今後は、「世界各国が、デジタル通貨の発行により、無制限の資本供給に踏み切る可能性」が危惧される結果として、「通貨への信用」が破壊されるとともに、「大量の資金が、一斉に、有限の実物資産へ流れ始める可能性」も憂慮されるのである。

つまり、「大量のCBDC」という「政府通貨」の存在と、「量的に制限された実物資産」の関係性において、「通貨価値の下落」、すなわち、「実物資産価格の急騰」が発生する展開が想定されるのである。別の言葉では、「触ったものが、すべて金(ゴールド)に変わったミダス王」のように、「大量のデジタル通貨(お金)が存在しながらも、一方で、生活のための食料などが手に入らない状況」のことである。(2022.11.24)
 
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日銀保有国債の含み損

11月28日に発表された「日銀の上半期決算」では、「日銀が保有する国債の時価評価額が、2013年の異次元金融緩和導入後、初めて含み損に転じた」と報道されているが、このことは、「金融機関が避けるべき手法」である「短期借り、長期貸し」の問題点が表面化した状況を表わしているものと考えている。別の言葉では、今まで、「歴史的な超低金利状態」により隠されていた「金融界のブラックホール」の一部が露呈したものと思われるが、今後の注意点としては、「日銀のバランスシート」に関して、「資産項目と負債項目との両方から苦境に陥る可能性」が挙げられるようである。

つまり、「約500兆円もの当座預金を借りて、約530兆円もの国債に投資した状況」については、「短期金利が急騰しても、国債投資からの金利収入が増えない状況」となっているために、「今後の金利急騰局面」に際しては、「国債価格の暴落が引き起こす含み損」だけではなく、「短期資金の調達に伴う金利負担」が危惧される状況となっているのである。具体的には、仮に、「1%の金利」を「当座預金」に支払うとすると、それだけで、「約5兆円」が必要とされるために、結果として、「日銀の損益が、一挙に赤字に転落する可能性」も指摘できるのである。

このように、「過去20年あまりの超低金利状態」に関しては、「異次元の金融緩和」という「歴史的な金融政策の誤り」が、非難されるのではなく、賞賛されていた状況でもあった。つまり、「金融界のブラックホールに、すべての問題点が飲み込まれていた状態」だったものと思われるが、現在では、「世界的な金利上昇」により、「金融界のホーキング放射」とも呼ぶべき、「問題の露呈化」が始まった状況のようにも思われるのである。

そのために、これから必要とされるものは、「金融政策のハト派とタカ派」というような「曖昧な議論」ではなく、「何が問題点なのかを、具体的な数字で突き詰める態度」のようにも感じている。つまり、「目に見えない金融ツインタワーがそびえたっている状況」であり、また、「実体経済に比較して、きわめて巨大なマネー経済が存在する事実」を、正確に理解することである。

そして、今後は、この点が理解されるまで、「インフレの大津波」が、世界を襲う展開を想定しているが、具体的には、現在の約「1:10」という「実体経済とマネー経済の比率」に関して、今後、「1:1」にまで変化する状況のことであり、実際には、「100:100」、あるいは、それ以上の大膨張が、両方の分野で発生するものと考えている。(2022.11.29)
 
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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