国債入札のマイナス金利
10月23日に起きた「3ヶ月物短期国債入札のマイナス金利」については、たいへん驚かされたが、一方で、「国債バブル」や「信用バブル」の存在を裏付けるような出来事だったものと考えている。つまり、「3ヶ月後に、投資資金が目減りする」という事実を理解しながら、「この国債を購入する」ということは、「満期までに、日銀が、より高い価格で、この国債を購入してくれるのではないか?」という期待感が存在するものと思われるのである。
別の言葉では、「上がるから買う、買うから上がる」というような、典型的な「バブル現象」だった可能性もあるようだが、このことは、「木の葉が沈んで、石が浮かぶ」という、「相場において、ときおり見られる事態」とも考えられるようである。つまり、「相場の転換期」においては、往々にして、きわめて異常な現象が発生することが多くなるのだが、今回も、同様の状況だったようにも思われるのである。
そして、このような時には、「極端なケース」を想定することにより、「現在の状況が、どれほど異常なのか?」を確認することが大切だと考えているが、実際には、「このような状況が継続した場合には、借金をすると、借金の元本が減少する」という事態のことである。そして、「多くの人が、借金を望む状態」も予想されるのだが、実際には、「目先のことだけを考え、長期的な展望を失った状態」とも考えられるようである。具体的には、「金利が上昇した場合に、どのような状況になるのか?」を考えていない状況のことである。
別の言葉では、「20年近くも継続したゼロ金利政策」を振り返ると、多くの人が、刹那的な考えを持ちがちになるということだが、「今まで続いてきたのだから、将来も、同様の状況が継続するだろう」という「安易な考え方」のことである。そして、この点については、「20世紀初頭のイギリス」でも、同様の状況が発生したようだが、実際には、「コンソル公債」の価格が、30年以上も上昇を続け、その後、「1923年」に起きた「ドイツのハイパーインフレ」の時に、ほとんど価値を失ってしまったのである。
また、この点について、「ケインズ」は、「異常な事態が30年間も継続すると、多くの人々は、このことが永遠に続くと錯覚してしまった」とも述べているのだが、今回の「世界的な超低金利状態」については、歴史上、未曽有の事態とも言えるのである。そのために、今後の展開が、たいへん危惧されるのだが、やはり、「バブルは、崩壊した時に初めて、その存在に気付く」という事態が、今回も、繰り返されるようである。(2014.10.27)
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日本の金利上昇リスク
10月17日に「日銀」が発表した「金融システムレポート」では、「日本の金利上昇リスク」について、たいへん興味深い報告がなされていた。具体的には、「金利が1%から3%上昇した時に、国債を保有する金融機関に、どれほどの損失が発生するのか?」ということだが、実際には、「1%のパラレルシフト(均等な金利上昇)」が起きた場合で、「約7.6兆円の損失」が予想され、また、「3%のパラレルシフト」の場合には、「約19.3兆円の損失」が発生するとも考えられているのである。
ただし、「日銀」としては、「この程度の金利上昇では、大きな問題は発生しない」と考えているようであり、「日銀の国債買い付け」により、「金融システムの安定は保たれる」とも想定しているようである。別の言葉では、「異次元の金融緩和」は継続可能であり、また、「現在の政策には問題が無い」と考えているようだが、私自身の感想としては、「極めて楽観的な意見」であり、実際には、「机上の空論」のようにも思われた次第である。
つまり、最初の指摘点としては、現在、問題になり始めた「デリバティブ(金融派生商品)」が、ほとんど議論されていないということである。別の言葉では、現在の「超低金利状態」というのは、「金融理論」や「過去の経験則」から考えると、極めて不自然な「力」によってもたらされたものであるとも言えるのである。
具体的には、「金利」は「お金の値段」であり、「お金の需給関係」によって「金利」が決定されるものと考えているが、現在の状態は、「デリバティブ」という「歴史上からも、稀に見るほどの、珍しい金融商品」が、「過去数十年間で、大膨張した結果の産物である」とも想定できるのである。別の言葉では、「1971年のニクソンショック」以降、「金本位制」から「信用本位制」へと変化し、「現在の通貨」そのものが、「コンピューターの中に存在する単なる数字」に変わってしまったという事実のことである。
その結果として、現在では、「大量の資金」が存在し、結果として、「史上最低の超低金利状態」が生まれたのだが、このことは、典型的な「バブル状態」とも考えられるようである。そして、今後は、「中央銀行の中央銀行」と言われる「BIS」が、「6月の年次総会」で指摘したように、「市場の反乱」が起きるものと考えているが、この時には、「日銀」の想定する「単純な金利上昇リスク」ではなく、「金融システム」や「通貨制度」の崩壊まで考える必要性があるようだ。つまり、「現代のお金は、絵に描いた餅にすぎない」という事実が、世界的に理解される状況のことである。(2014.10.27)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔opinion5053:141121〕