黒田日銀総裁のバズーカ砲
10月29日の「FOMCの声明文」に続き、「10月31日」には、「日銀の追加金融緩和」が発表された。そして、このことは、「黒田日銀総裁のバズーカ砲」と呼ばれ、市場からは、好意を持って受け止められたようだが、実際には、大きな注意が必要だと感じている。具体的には、「アメリカの量的緩和終了」が発表された時に、「日銀による、更なる量的緩和が、本当に可能なのか?」ということである。
つまり、「日銀が、どのようにして、国債などの購入資金を調達するのか?」という点が気にかかるのだが、実際には、「80兆円の国債買い付け」が「単なる口先介入」に終わる可能性も存在するようだ。具体的には、「当座預金の増加」に限界点が存在するものと考えており、また、「日本だけが、単独で、量的緩和を継続できるのか?」という問題点も気にかかるのである。
つまり、大幅な「円安」に見舞われた時に、「日本の超低金利状態」が継続できない可能性が存在し、この時には、「国債価格の暴落(金利の急騰)」が起きるものと思われるのである。その結果として、「日銀による紙幣の増刷」が始まることも予想されるのだが、この時には、「インフレ率の急騰」も考えられるのである。つまり、「国民が、実態に気付き、慌てて、実物資産の購入を始める状況」のことだが、過去のケースでは、「紙幣の増刷」が始まると、その後、本格的な「インフレ(通貨価値の下落)」が発生することが見て取れるのである。
そして、現在の日本も、同様のパターンを辿りつつあるものと考えているが、この時に注目すべき点は、やはり、「ケインズの言葉」であり、実際には、「通貨の堕落過程では、百万人に一人も気づかないような状態で、崩壊の力が働く」というものである。別の言葉では、「株価の急騰」や「資産価格の高騰」という「名目的な価格上昇」に目を奪われるために、「通貨価値の下落」には、ほとんど注目されない状況のことである。
また、このような状況が、私が最も危惧する「ギャロッピング・インフレ」から「ハイパーインフレ」への「移行過程」でもあるのだが、この点については、今後、「円安」と「株高」の状況を見ながら、「国債価格が、どのように変化するのか?」に注目する必要性があるようだ。具体的には、「日経平均が2万円にまで上昇するのに、どれほどの時間がかかるのか?」ということだが、実際には、「誰もが信じられないほどのスピードで、株価や貴金属価格の上昇が起きる」というような展開も考えられるようである。(2014.11.3)
-------------------------------------------
GPIFの資産構成変化と消費税
10月末に、「GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の資産構成」が変更されたが、この裏側には、たいへん重要な意味が隠されているようだ。つまり、マスコミでも報道されているように、現在では、「消費税率の再上昇」のために「株価の上昇」や「更なる好景気」が必要とされており、そのために、「年金資金」までも動員することにより、「株価の上昇」が目論まれたようである。
また、その時には、当然のことながら、「国債の売却」が「GPIF」によって実施されることが想定されるのだが、この準備のために、「日銀の国債買い増し」が発表されたようである。つまり、「日銀が受け皿となり、GPIFの売却予定分を買い付ける」という方法のことだが、このことは、あまりにも短絡的、かつ、無謀な方法とも言えるようである。具体的には、「日銀には、打ち出の小槌は存在しない」という点が指摘できるとともに、実際には、「無制限の国債買い付けは、ほぼ不可能である」という状況でもあるからだ。
別の言葉では、現在が、典型的な「国債バブル」、あるいは、「信用バブル」の状態であり、実際に、多くの人々が、「日銀が国債を買うから、国債価格が下がることはない」と、本気で信じ込んでいるようにも思われるのである。つまり、「過去のバブル」と同様に、「価格が、永遠に上がり続けるのではないか?」というような状況になっているようだが、実は、このような状況こそが、「大天井の兆候」とも考えられるのである。
そして、今後は、「ある日突然に、国債の買い手がいなくなる」、あるいは、「突如として、国債価格の暴落が始まる」というような事態も想定されるのだが、この原因として考えられるのが、「デリバティブ(金融派生商品)の完全崩壊」とも思われるのである。つまり、今年の2月に起きた「ビットコイン事件」と同様に、「デリバティブ」に関して大事件が起き、「短期間の内に、約700兆ドル(約8京円)」もの残高が、雲散霧消するような事態」が想定されるのである。
つまり、「1980年代の初め」に、全く存在していなかった「デリバティブ」が、「約30年」という期間に、この金額にまで大膨張したわけだが、「お金の性質」や「金融システムの仕組み」から考えると、ほぼ瞬間的に、消滅する可能性が存在するのである。そして、この時になって初めて、世界中の人々が、「行き過ぎた金融資本主義」の弊害を熟慮することになるようだが、現在では、すでに手遅れであり、今後は、世界中の人々が、「金融界の大量破壊兵器」の威力を実感することになるようだ。(2014.11.4)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔opinion5062:141201〕