スイスの国民投票
11月30日に、「スイスの国民投票」が実施されたが、内容としては、「中央銀行が保有する金(ゴールド)」に関して「国民の審判を仰ぐ」というものだった。具体的には、「海外に保有する金を、全て、自国に移転する」、「中央銀行の総資産の20%を金にする」、そして、「金の売却は行わない」というものだが、結果としては、大差の否決だったものの、このような投票が行われたことは「時代の転換点」を表しているようだ。
つまり、「1971年のニクソンショック」以降、世界の中央銀行は、長年にわたり、「金(ゴールド)」を売却してきたが、この理由としては、「金は金利が付かず、持っている必要性が無い」ということだった。そして、2000年前後の底値では、「金は石ころになった」とまで言われたが、その前後から始まったのが、「中国」や「ロシア」、あるいは、「インド」などによる「大量の買い付け」だった。
その結果として、現在では、「西洋諸国」から「東洋の国々」へと、大量に「金」が移転するとともに、「アメリカのフォートノックスに、本当に、金が存在するのか?」という点について、アメリカの内部から疑問が噴出するような状況となっている。そして、昨年の「ドイツ」に続き、今回は、「オランダ」が、米国に保管してある金を自国に移転したが、このことは、ヨーロッパの国々で、急速に、「金を手元に置く必要性」を感じたからとも言えるようだ。その結果として、現在では、「西洋諸国」から「東洋の国々」へと、大量に「金」が移転するとともに、「アメリカのフォートノックスに、本当に、金が存在するのか?」という点について、アメリカの内部から疑問が噴出するような状況となっている。そして、昨年の「ドイツ」に続き、今回は、「オランダ」が、米国に保管してある金を自国に移転したが、このことは、ヨーロッパの国々で、急速に、「金を手元に置く必要性」を感じたからとも言えるようだ。。
つまり、「第二のリーマン事件」が噂されるような状況下で、多くの国々が、「本当に安全な資産は、一体、何なのか?」を考え始めたようにも思われるのである。そして、このことは、現在の「信用本位制」に対する「不信感の増幅」であるとともに、本来の中央銀行の役割が「通貨の番人」であることを思い出してきたからとも考えられるが、この時に、「金の時価総額」と「世界のマネー総額」を考えると、実に、危機的な状況になっていることが理解できるのである。
つまり、本来の「お金」は、文字通り「金(ゴールド)」だったが、現在では、「約800兆円」の時価総額にすぎず、一方で、「世界のマネー総額」は、なんと、「10京円」を超える金額にまで大膨張している。そのために、今後は、「金価格の急騰」により、この差が埋められるものと考えているが、その時に、「金利」や「インフレ率」が、どの程度にまで上昇するかが、全く見当もつかないような状況となっており、このことが、本当の意味での「金融大混乱」とも言えるのである。(2014.11.26)
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オランダの金(ゴールド)
11月21日(日本時間の11月22日)に、突如として、「オランダの中央銀行が、アメリカに預けている金(ゴールド)の一部を、本国に返還した」というニュースが流れた。具体的には、「約312トンの内、122トンを、すでに、本国に移送した」というものだが、この点については、11月30日の「スイスの国民投票」と相まって、世界の金融市場に関する「重大な出来事」とも考えられるようである。
つまり、ヨーロッパの中央銀行が、「通貨の本質」を考え始めるとともに、現在の「金融システム」や「通貨制度」に対して、大きな危機意識を持ち始めた可能性のことである。別の言葉では、「第二のリーマン事件」が噂される状況下で、本当の「お金」とも言える「金」を、自国に取り戻そうとしているようだが、海外では、「GOLD(金)」は、「GOD(神)」や「GOOD(良)」と「同義語」であるとも言われている。
このように、現在では、「中国」や「インド」、「ロシア」などに加え、ヨーロッパの中央銀行までもが、「実物資産」である「金」を、手元に置こうとしているが、このことは、「フィアットマネー」という「政府の信用を基にした金融商品」に対する信頼感が減少していることが、最も大きな原因とも言えるようである。つまり、「1971年のニクソンショック」以降、「影も形も存在しない、単なる数字」が「最も主要な通貨」となり、世界を駆け巡っているが、現在では、ようやく、この点に対する危機意識が芽生えてきたようにも思われるのである。
そして、今後は、この動きが、一挙に、加速する可能性が高まっているが、実際に、「世界的な株高」と同時に、「絵画」や「ダイヤモンド」などの市場において、バブル的な動きが起き始めている。つまり、世界の富裕層は、自分の資産価値を守るために、「稀少価値を持つ商品」に投資をしているようだが、問題は、「この動きが、何時、一般庶民にまで広がるのか?」ということである。
別の言葉では、「日本人の預金神話」が崩壊した時に、「日本人が、どのような行動を取るのか?」ということだが、最も恐ろしいシナリオとしては、「日本人が、恐怖心に駆られ、パニック状態に陥る」ということである。つまり、第二次世界大戦後の混乱状態が繰り返されることだが、このことを避ける方法としては、できるだけ早いうちに、資産の分散投資を実行することであり、また、6か月分の食糧を確保することだと考えているが、現時点では、いまだに、ほとんどの人が、この可能性を考慮していないようである。(2014.11.26)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔opinion5082:141222〕