本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(92)

著者: 本間宗究(本間裕) ほんまそうきゅう:ほんまゆたか : ポスト資本主研究会会員
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FIFAの汚職事件

今回の「FIFAの汚職事件」については、世界中の人々が、驚かされたようだが、その理由としては、「世界的な広がり」であり、また、「金額の巨大さ」が挙げられるようだ。そして、同時に、この事件は、いろいろな疑問点を、我々に投げかけているようだが、具体的には、「なぜ、現代において、スポーツが人気化するのか?」、あるいは、「なぜ、巨額な資金が集まるのか?」ということなどである。

そして、この点を理解するためには、「古代オリンピック」にまで遡って、人類の歴史を研究する必要性があるようだが、現代人にとっては、「お金の謎」と同様に、誰も考えようともしない問題点でもあるようだ。つまり、「パンとサーカス」という言葉のとおりに、現代人は、「スポーツ」に熱狂し、実際に、「時間」と「お金」を使っているが、このことは、基本的に、「巨大な組織」の中で、「歯車」や「部品」のような存在となった個人が、「社会との疎外感」を埋めるための行為とも考えられるようである。

そして、いつものとおりに、「バブルの崩壊後に、大騒ぎをする人が続出する状況」が発生するものと思われるが、現時点で、最も重要なことは、「過去100年間に、どれほどの変化が、世界の金融界に起きたのか?」を考えることでもあるようだ。別の言葉では、「なぜ、現在の日本で、ゼロ金利状態が可能なのか?」、あるいは、「なぜ、日本の国家債務問題が、依然として、収まっているのか?」を考えることだが、今後は、この点が、日本人の最も大きな関心事になるものと考えている。

換言すると、自分の力で活躍する「スター選手」に憧れ、また、応援することにより、自分自身の「虚無感」を払おうとしているようにも思われるのである。しかも、この時、多くの人が、スポーツに熱中すればするほど、より多くの「資金」が集まり、また、強大な「利権」が発生するが、今回の「FIFA」については、この典型例だったようである。つまり、「組織化」が進行すればするほど、「隷従者」の数が多くなり、結果として、「腐敗」や「堕落」が進行するのだが、この点については、「古代オリンピック」でも、同様の状況だったようである。

具体的には、西暦4世紀ごろの「末期の古代オリンピック」では、「優勝者への過剰な褒章が、逆に大祭の腐敗を生んだ」とも伝えられているのである。そして、「祖国が優勝者に支払う報奨金は跳ね上がり、褒章欲しさに、不正を働くもの、審判を買収するものが出て、オリュンピア大祭は腐敗した」とも言われているが、このことは、現在の「スポーツ界」と似たような状況とも言えるようである。(2015.6.5)

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歴史大転換のメカニズム

現在は、歴史的な大転換期であり、具体的には、「文明法則史学」が教えるとおりに、「800年間」も続いた「西洋の時代」が終焉し、今後は、「東洋の時代」が幕を開けるものと考えている。そして、この点については、ご存じのとおりに、「西洋の没落」と「中国の台頭」が指摘できるようだが、実際に、「西暦2000年頃」からの変化については、誰もが予想しなかったほどの大きな規模だったようである。

そして、どのような時代の転換期にも、必ず、「争い」が起きるものと考えているが、今回は、「国債を守る陣営」と「金を信用する陣営」との間で、壮絶な戦いが繰り広げられたようである。しかし、この戦争は、目に見えないものであったために、ほとんどの人は、戦争の存在に気付かなかったようだが、この点については、今後、世界的な「国債価格の暴落」が起きた時に、はっきりと見えてくることになるようだ。

また、「争い」の展開については、「明治維新」が参考になるものと考えているが、ご存じのとおりに、「1853年」に「黒船」が来航してから、「1868年」の「明治維新」まで、「僅か15年で、幕藩体制が崩壊した」という状況だった。そのために、今回も、短期間の内に、より大きな規模で、世界的な大変化が起きるものと考えているが、基本的には、「国債を守る陣営」が、「幕藩体制」に匹敵し、また、「金を信用する陣営」が、「明治維新政府」に相当するようである。

ただし、実際には、「尊王攘夷から討幕へ」というように、「日本国内でも、いろいろな勢力変化が起きた状況」とも言えるようであり、今回も、単純な考えは排除する必要性があるものと考えている。つまり、今回は、世界に存在する「大量の資金」が、「今後、どのような状況になるのか?」を理解する必要性があり、また、この点に対する対応次第では、「官軍」と「賊軍」が、一瞬にして交代する可能性も存在するからである。

このように、大転換期に起きることは、いろいろな勢力の「戦い」だと考えているが、「明治維新」の場合には、現在の大河ドラマである「花燃ゆ」からも明らかなように、「長州の騎兵隊」が、大きな意味を持っていたようだ。つまり、一般の人々が、武士に代わって、政権に就いたわけだが、基本的には、「既得権の崩壊」が、歴史を動かすダイナミズムだったようである。そして、この点を、現在に当てはめると、「大インフレ」という「通貨価値の下落」が、大きな意味を持ってくるものと思われるが、このキッカケとなるのが、前述の「国債価格の大暴落」とも言えるようである。(2015.6.5)

本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔opinion5454:150702〕