本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(95)

著者: 本間宗究(本間裕) ほんまそうきゅう:ほんまゆたか : ポスト資本主研究会会員
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ギリシャのデフォルト(債務不履行)

6月30日に、ギリシャが、実質上の「デフォルト(債務不履行)」に陥り、また、7月5日の「国民投票」においても、「ギリシャ国民は、EUからの提案を拒否する」という結果となった。そして、この事件は、これから想定される「金融大地震」の前兆のようにも思われるが、ほとんどの日本人にとっては、「対岸の火事」の状態とも言えるようである。つまり、「日本が、ギリシャのようになることは、絶対にありえない」と多寡を括っているようだが、実際のところは、「日本の方が、ギリシャよりも、酷い状態である」とも考えられるのである。

具体的には、「GDP」に対する「国家債務」の比率だが、ご存じのとおりに、「日本」の場合は、「約230%」と言われているように、「世界的、かつ、歴史的に見ても、人類が経験したことが無いほどの規模」となっているのである。しかし、この時に、説明として言われていることは、「約9割の債務は、国内投資家が保有している」ということであり、また、「日本全体としては、はるかに大きな資産が存在する」ということなどである。

つまり、「3・11の大震災」の前に、「原発の事故は、絶対にありえないことだ」という説明と、あまり違いの無い根拠で、「日本国債の安全性」が強調されているようだが、実際には、大事件が起きた後に、いろいろな解釈が出てくるものと考えている。別の言葉では、「どのようなバブルも、弾けるまでは、その存在に気付かない」という状態が、現在でも進行しているようだが、今回の「ギリシャ危機」は、前述のとおりに、本格的な金融大混乱の始まりとも言えるようである。

そして、今後は、体力の弱い国から、順番に、金融混乱が加速していくものと考えているが、これから大切なことは、「どのような資産が、金融大混乱期を生き延びることができるのか?」ということである。つまり、「日米欧」の国々が、「ギリシャ」と同様の状態になった時に、「どのような資産を保有していれば、価値の保全が図れるのか?」ということである。

また、この点を理解するためには、少なくとも、過去100年間の、「通貨制度」や「金融システム」の変遷を理解する必要性があるが、現時点でも、いまだに、この点が、ほとんど忘れ去られているようだ。その結果として、今後、日本に、金融混乱の波が訪れた時に、多くの人が、大騒ぎをするものと思われるが、実は、この点にも「深い意味」、あるいは、人智では計り知れない「天の思惑」が隠されている可能性もあるようだ。(2015.7.6)

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短期の「利益」と長期の「痛み」

6月28日に開かれた「BISの年次総会」のレポートを読むと、今まで以上の「悲壮感」が漂っているようにも感じられたが、この理由としては、やはり、「時間的な余裕」が無くなっている点が指摘できるようである。あるいは、すでに、本格的な「金融大混乱」が始まった点を憂慮している可能性も存在するが、今回、「カルアナ総裁」のコメントで、最も印象深かったことが、「短期の利益」と「長期の痛み」という言葉だった。

具体的には、現在の金融政策は、「短期の利益」だけが目標となっており、結果として、「長期間の痛み」を経験する可能性が高くなっているということであり、このことを象徴する出来事が、今回の「マイナス金利」でもあったようだ。つまり、現在の「超低金利状態」については、決して、「ニューノーマル」ではないというものだが、このことは、今後、「金利水準」が、大きく変化することを示唆しているようである。

別の言葉では、過去一年間の変化として、「原油価格の下落」と「ドル高」、そして、「世界的な超低金利状態」を指摘しているのだが、この時に、「現在の金利水準は、新たな均衡状態ではない」という点を、強く主張しているのである。そして、短期的には、世界経済や金融システムは、比較的、好調に見えるものの、将来の姿を考えると、決して、安心できるような状況ではないと考えているようである。

具体的には、すでに始まった「ギリシャの金融混乱」が、今後、他の国に波及していく可能性のことだが、この点について、「カルアナ総裁」は、「以前から、先送りの問題点を指摘していた」という状況だったのである。つまり、「量的緩和」という「国債の買い支え」が実施されなかったら、「世界の金融システムは、とっくに崩壊していたはずだ」と述べ、「先送りされた時間」の有効活用を提言していたのだが、実際には、全く逆の事態が発生したようである。

つまり、世界の「国債残高」、すなわち「国家債務」は、増え続ける一方であり、決して、根本的な解決が図られなかったのだが、歴史を尋ねると、このような状況が行き着く先は、典型的な「マネタイゼーション」とも言えるようである。具体的には、「紙幣の増刷」により、「全ての借金を棒引きにする方法」のことだが、この試金石となるのが、今回の「ギリシャ」とも考えられるようである。別の言葉では、現在の「瀬戸際外交」、あるいは、「EU]との「チキンレース」が、今後、どのような展開になるのかということだが、実際には、「EU」自体も、ギリシャと同様の危機に見舞われることになるようだ。(2015.7.6)

本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔opinion5540:150801〕