本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(97)

著者: 本間宗究(本間裕) ほんまそうきゅう:ほんまゆたか : ポスト資本主研究会会員
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ノーを言い始めた日本人!?

今回の「東芝による粉飾決算騒動」には、たいへん驚かされたが、この事件を熟慮すると、いろいろなことが見えてくるようにも感じている。具体的には、「社長に対して、ノーと言えない役員たちの姿」であり、実際には、「自己保身」のために、「見ざる、言わざる、聞かざる」のような状態になった可能性である。つまり、「目先の利益」を計ったために、結局は、「長期の利益」である「企業の信頼」を失ったようだが、このような状況は、現在の日本で、数多く見られるようである。

具体的には、「安倍首相に対して、ノーと言えない国会議員」が、与党には、数多く存在するようだが、同時に、このような状況については、「日銀」でも発生しているようである。つまり、現在の「異次元の金融緩和」について問題視する発言が、ほとんど聞かれないのだが、実際には、「日銀のバランスシート」を大膨張させているだけとも言えるのである。別の言葉では、「目先の利益」を求めたことにより、「長期の痛み」が予想される状況とのことだが、この点については、今回、「中央銀行の中央銀行」と呼ばれる「BIS」の年次総会で、「カルアナ総裁」が喝破したことでもある。

そして、この事実からは、現在、「世界中の人々が、臭いものにふたをして、自分の生活だけを考えるような状態」になっている姿が推測されるが、実際には、「刹那主義」が窮まった状況とも言えるようである。つまり、「明日がどうなろうとも、知ったことではない」というような態度のことだが、このような「事なかれ主義」については、歴史を尋ねると、いろいろ例が見られるようである。特に、「江戸時代の末期」にも、多くの旗本たちが、このような状態に陥ったようだが、実際には、「黒船の来航」に際して、ほとんど、有効な手段が取れず、右往左往したような状況となり、その結果として起きたことが、「幕藩体制の崩壊」という、歴史に残る大事件だったのである。

しかし、一方で、現在の日本人は、「7月15日」に実行された「安保法案の強行採決」に対して、「ノー」を表明し始めており、この時に、若者や女性も、数多く、デモ行動に参加している。そして、この観点からは、ようやく、私が期待していた「日本人の覚醒」が始まった可能性も存在するようだが、この点については、今後の「2カ月間」で、どのような変化が起きるのかが、大きな注目点とも言えるようである。つまり、「一般大衆が、政治を動かし始める可能性」のことであり、「明治維新」の時のように、「多くの人々が、世直しを求めて、『ええじゃないか』と、踊り叫んだ状態」のことだが、はたして、今回は、どのような展開になるのだろうか。(2015.7.27)

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金融システム崩壊の砂時計

現在の「金融システム」と「実体経済」との関係性を、グラフで作成すると、まさに、「砂時計」のような状態になっている。具体的には、膨れ上がった「マネー経済」が、「砂時計の半分」を占めており、一方で、「実体経済」の部分が、もう一つの半分を表している状況のことである。そして、現在では、「マネー経済」を代表する金融商品である「デリバティブ(金融派生商品)」が、「2007年の金融混乱」以降、実質上、形骸化している状態とも言え、この事実を隠蔽するために、いわゆる「量的緩和(QE)」が実施されたものと考えている。

具体的には、「世界各国の中央銀行が、バランスシートを大膨張させて、国債を、大量に買い付けた」という事実のことだが、このことは、本来、典型的な「リフレーション政策」と呼ばれていた。つまり、「国家の信用」を維持するために、「中央銀行」が、「無理矢理に、国債を買い支え、また、超低金利状態を維持した政策」のことだが、今回、驚かされたことは、「日米欧の先進国が、力を合わせると、国債のマイナス金利という異常な事態までもが発生した」という事実である。

しかし、この点については、「BISのカルアナ総裁」が断言しているように、「決して、新たな均衡点ではない」という状況でもあり、実際には、間もなく、大きな転換点が訪れるものと考えている。具体的には、「アメリカ」を中心にして、「出口戦略」という「金利上昇」、あるいは、「金融の正常化」が始まる事態のことだが、この時の問題点は、「大膨張した世界のマネーを、どのようにして処理するのか?」ということである。

つまり、「お金」は「残高(ストック)」であり、基本的には、「インフレでしか、実質の残高が減少しない」という点だが、現在では、この点を憂慮する人が、ほとんど、存在しなくなったようにも思われるのである。あるいは、「中央銀行による国債の買い支え」についても、当然のことながら、「限界点」が存在するが、現在では、多くの人が、「日銀は、打ち出の小槌を持っている」と錯覚しているようにも感じられるのである。

別の言葉では、「紙幣の増刷」を実施した時に、「全ての国家債務問題は、表面上、片が付く」という点が忘れ去られているようだが、現在、「金融システム崩壊の砂時計」は、まさに、この限界点にまで達しようとしている。つまり、これから、「大量の紙幣」が、世界的に増刷された時に、多くの資金が、実物資産に流れ込む状況が想定されるのだが、このキッカケとなるのが、「貴金属価格の暴騰」だと考えている。(2015.7.27)

本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔opinion5598:150822〕