LINEの価値が300万円
先日、日経新聞に、「LINEの価値が300万円」という記事が出ていた。つまり、「いくら貰えたら、LINEを一年間やめますか?」という「仮定の問題」に対する答えが「300万円」であり、このことは、「実感している豊かさなのに、国内総生産(GDP)をはじめ、従来の経済統計では測り切れない消費者余剰である」と結論付けられているのである。
たいへん興味深い設問の設定であり、一見すると、正当な理論のようにも思われるが、「経済学の基本」である「商品」と「マネー」との関係性からは、「何が商品であり、また、誰が、その商品に対して、300万円の対価を払うのか?」が、まったく見えない状況とも言えるようである。つまり、「実体経済が、今まで、どのようにして成長してきたのか?」、そして、「この時に、マネー経済が、どのようにして発展してきたのか?」を考えると、「ある商品を使わないことに対する価格」などは、全く論外の思考法とも思われるのである。
別の言葉では、「三次元の抽象論、あるいは、観念論」にすぎず、「四次元の具体論」からは、本末転倒した理論とも言えるようだが、興味深い点は、「このような意見が出ても、誰も、不思議に思わない状況」、あるいは、「積極的に支持する人々が存在する状況」とも言えるようである。つまり、「本末転倒した時代」においては、「本末転倒した意見」が出る状況のことだが、このことを象徴する事態が、前述の「商品」と「マネー」の関係性とも考えられるのである。
具体的には、「1971年のニクソンショック」以降、私が提唱する「信用本位制」という通貨制度が始まり、現在では、「マネー経済」が「実体経済」の「約10倍」という規模にまで膨らんでいるのである。そして、人々は、「価値が高くなったお金」を稼ぐために、「命までをも削らざるを得ないような状況」となっているものと思われるが、このことは、「物質的な豊かさ」を追求した「西洋の時代」が、最終段階に入った状況を意味しているものと考えている。
つまり、「文明法則史学」が教えることは、「これから、精神的な豊かさを求める東洋の時代が始まる可能性」であり、また、「文明の交代期」には、「本末転倒現象」の発生により、「時代の大転換」が起こる状況である。そして、このような観点からは、決して、前述の意見も、驚くことはないものと思われるが、問題は、大混乱期に直面した時に、多くの人々が、パニック状態に陥る可能性だと考えている。(2019.3.7)
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日銀の政策転換!?
「日銀の金融政策」に、現在、大きな変化が発生しているものと考えている。具体的には、従来の「当座預金を増やして、国債を買い付ける方法」が行き詰まりを見せているために、最近では、「その他預金や政府預金の増加で、国債の買い増しを実施する方法」が採用された可能性である。別の言葉では、「量的緩和(QE)」の原資となっていた「当座預金」が増やせなくなったために、「奥の手」とも言える「海外の中央銀行」、あるいは、「政府」からの「借金」により、「国債」を買い付け、「超低金利の状態」を継続しようとする状況のことである。
そして、この点を、「お金の性質」から考えると、今までは、いわゆる「コンピューターマネー」の存在により、「量的緩和」が可能だったものと思われるが、「2018年9月」に起こったことは、「金融メルトダウン」の進行により、「コンピューターマネー」が枯渇し始めた状況でもあったようだ。その結果として、「金利の上昇」に慌てた「中央銀行」が、「BIS(国際決済銀行)」が、以前から指摘してきたように、「ありとあらゆる限りの手段」を行使し始めた状況とも思われるのである。
別の言葉では、「お金が借りられなくなった個人が、サラ金などに手を出したような状態」とも言えるようだが、今後の注目点は、やはり、「BIS」が指摘する「市場の反乱」、すなわち、「国債価格の暴落」でもあるようだ。つまり、「1991年のソ連」と同様に、「国債の買い手」が消滅し、「国債価格が暴落する状況(金利は急騰)」のことだが、この時に発生する現象は、「急激な金利とインフレ率の上昇」であり、また、「ギャロッピング・インフレ」と言われる「景気の好転」だと考えている。
このように、今回の「異次元の金融緩和」については、すでに、「金融政策の転換が、秘密裏に実施され始めた可能性」があるものと考えているが、最も難しかった点は、やはり、「一国だけの国家財政問題」ではなく、「全ての先進各国が、危機的な財政状態に陥る」というような「金融システムの問題」でもあった。別の言葉では、私が提唱する「信用本位制」において、「コンピューターマネー」が大量に作られるとともに、「約10年間にわたり、問題の先送りが可能だった」という状況のことである。
しかし、今後、最も注目すべき点は、「時間的な遅れ」が発生した事実が、「今後、どのような影響を与えるのか?」という点だが、実際には、「誰もが経験したことがないほどの規模で、世界的なハイパーインフレが発生する可能性」だと感じている。(2019.3.7)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion8560:190411〕