本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(222)

著者: 本間宗究(本間裕) ほんまそうきゅう:ほんまゆたか : ポスト資本主研究会会員
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金融商品の特性

1999年から、筑波大学名誉教授の「降旗節雄先生」が主宰する「ポスト資本主義研究会」に参加し、研究を重ねてきたが、先生が亡くなられるまでの10年間、最も大きな問題の一つとなったのが、「金融商品を、どのようにして理解するのか?」という点だった。つまり、「降旗先生」は、「金融商品は、本当の商品ではない」という考えを持っておられたが、私自身は、「金融商品も、商品としての特性を兼ね備えているために、商品として認識すべきである」という主張を貫き通したのである。

しかも、この時に重要な点は、「金融商品は、通貨と商品の両方の特性を兼ね備えている」という事実であり、実際に、「ビットコイン」については、「お金を出して購入する商品」でありながら、一方で、「ビットコインを売却して、自動車やスマホなどの実物商品の購入も可能である」という状況となっているのである。そのために、「この点を、どのようにして理解するのか?」という議論を、長く続けてきたが、残念ながら、「降旗先生」は、「志しの半ばで、あの世に旅立たれた」という状況でもあった。

ただし、「後世の者は畏るべし」という言葉のとおりに、「長生きすると、実際の世の中を確かめることが可能であり、自然に答えが見えてくるのではないか?」とも感じている。つまり、「後に生まれた人には、先人の意見を確かめる役割が存在する」とも考えているが、現時点では、やはり、「信用本位制」と「コンピューターマネー」に関する理解が、「金融商品の特性」を考える上で、最も重要なポイントだったようにも思われるのである。

より具体的には、「金融商品が、コンピューターと、そのネットワークが産み出した商品だった可能性」のことだが、実際には、「影も形も存在しない、単なる数字」が「根本的な通貨」となり、「さまざまな金融商品を生み出した状況」のことである。別の言葉では、過去数十年間に、「デリバティブ(金融派生商品)」の大膨張により、「マイナス金利」が世界的に発生した状況のことである。

このように、「通貨の基本」は「信用」であり、「世界に存在した大量の信用」が「金融商品」という「形」になったわけだが、今後の問題点は、「紙幣は、コンピューターネットワークの中を流れることができない」という厳然たる事実である。つまり、現在の「ベネズエラ」のような「ハイパーインフレ」の状況下では、「キャッシュレス社会」などは、実現不可能な状況とも思われるが、「先進各国」においても、間もなく、「資金繰りの行き詰まりにより、大量の紙幣が発行される事態」が予想される状況とも言えるのである。(2019.3.23)

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通貨制度の寿命

「人間」に寿命があるように、「通貨制度」にも寿命があり、この点に関して、ケインズは「約50年」という期間を考えていたようだ。つまり、「過去の歴史」を検証すると、「約50年」という期間で「既存の通貨制度が崩壊する状況」を想定していたようだが、実際には、「中央銀行が、世界的に創られたのは、約100年前にすぎない」というように、「より複雑な変遷」をたどった可能性があるようにも感じている。

そして、現在の通貨制度については、間違いなく、「1971年のニクソンショック」をキッカケにして、私が提唱する「信用本位制」が始まったものと考えているが、今回、気付かされたことは、「今までの約50年間」について、きわめて単純なメカニズムが働いていた可能性である。具体的には、「マネーの大膨張」について、「三段階の信用創造」、あるいは、「三段階のバブルが発生し、崩壊した状況」のことだが、実際には、「1970年代」に「貴金属のバブル」が発生し、崩壊した状況が見て取れるのである。

つまり、「信用創造の第一段階」は、「中央銀行」によるものであり、この時には、「金本位制」が終了し、「大量の紙幣」が創り出されたことも理解できるのである。そして、その次に発生したのが、「日本」を中心にした「土地と株式のバブル」だったが、この結果として起こった変化は、「第二段階の信用創造」であり、実際には、「民間銀行の預金」が大量に生み出された状況でもあった。

また、最後に発生した、人類史上最大のバブルは、やはり、「金融界の大量破壊兵器」と呼ばれた「デリバティブ(金融派生商品)」だったものと考えている。具体的には、「2008年前後」に「約8京円」という規模にまで膨れ上がったわけだが、現在では、「最後の貸し手」である「中央銀行」が、世界全体で「デリバティブのバブル崩壊」を処理しようとしている状況とも言えるのである。

つまり、「量的緩和(QE)」の「正体」、あるいは、「真相」は、単に、「デリバティブの後始末」にすぎなかったものと考えているが、この時の問題は、「中央銀行のバランスシート急拡大」であり、実際のところ、「日米欧の中央銀行が、約4倍の規模にまで膨らみながら、いまだに、デリバティブの4分の1程度しか処理しきれていない状況」だと考えている。その結果として、現在では、「最後の手段」である「紙幣の大増刷」しか残されていない状況とも言えるようだが、今後、想定されることは、やはり、約50年間も継続した「信用本位制」に「寿命」が訪れる可能性でもあるようだ。(2019.3.24)

本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion8600:190427〕