明治維新後の日本人
哲学者の「梅原猛氏」によると、「明治維新後の日本人」は、「廃仏毀釈」などにより「仏教」を切り捨てるとともに、「国家神道」などの簡素な思想のもとに、「西洋の列強に追いつくこと」が主要な目的になったと言われている。つまり、西洋の進んだ科学技術文明に追いつくために、「富国強兵」というスローガンを掲げ、「国家を挙げて、西洋化への道筋を一心不乱に歩んだ状況」のことである。
そして、結果としては、「日清、日露の戦争」や「第一次世界大戦」までは、順調な道筋を歩んでいたようだが、問題は、「第二次世界大戦」の前後に、「軍部の暴走」が起きたことにあった。具体的には、「敗戦」を経験するとともに、「日本の国土が焼け野原の状態に陥った状況」のことだが、このことは、「強兵」の部分が、完全に失敗に終わったことを意味しているものと考えている。
また、その後は、ご存知のとおりに、「富国」という、「経済面での発展」に国民の力が注がれ、結果としては、「奇跡的な高度経済成長」を経験し、「世界第二位の経済力」を実現することができたが、問題は、その後の展開にあった。具体的には、「バブルの発生と崩壊」、そして、「失われた30年」と呼ばれるほどの「経済の低迷」により、現在では、「日本の競争力」が世界的に低下した状態となってしまったのである。
つまり、「富国」の面でも、再度、「敗戦」を迎えようとしているものと思われるが、このことを、「時間のサイクル」で考えると、奇妙な事実が浮かび上がってくるようにも感じている。具体的には、「明治維新から77年後の1945年」に「軍事的な敗戦」を経験し、数多くの犠牲者が出た状況でもあったが、その後の展開としては、「現在が、戦後から74年目に相当する」という事実も見て取れるのである。
そして、この間の推移については、「お金儲け」に邁進した人々が、「忙しさ」により、文字どおりに「心を亡くした状況」であり、この原因としては、「西洋的な価値観」を追い求めすぎた結果として、「東洋的な価値観」を失った点も指摘できるようである。また、現在、発生している「さまざまな殺人事件」についても、「心の謎」や「心の闇」を解明することが、現在、最も重要なポイントだと思われるが、基本的には、「1945年から77年後の2022年前後」に想定される「日本の金融敗戦」が、「1945年の敗戦」と同様に、人々の認識を大転換させることに関して、大きな役割を果たす可能性が高いものと考えている。(2019.6.3)
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FRBの金融政策に関する討論会
6月4日からの2日間、「FRB」が主催し、「金融政策の討論会」が実施されたが、会の冒頭で行われた「パウエル議長の演説」を熟読すると「世界の金融情勢が、きわめて危機的な段階に入っている事実」を改めて認識させられたようにも感じている。具体的には、「金利のELB(Effective Lower Bound)」について詳しく説明しながら、「米国の金利がELBの状態に陥った時に、どのような手段が取れるのか?」に関して「大きな恐怖心を抱いている状況」のようにも思われたからである。
より詳しく申し上げると、「1999年」と「現在」とを比較しながら、「1999年に、日本の金利がELBの状態に陥ったが、一方で、米国金利については、まったく心配する状況ではなかった」、しかし、「現在では、2008年と同様に、米国金利のELBが差し迫った大問題となっている」とも述べられているのである。つまり、「金融危機」に陥った時に、「金利を上げ下げする自由度」のことを「金利のELB」と呼んでいるものと思われるが、実際には、「実質金利の下限」を意味しているものと考えている。
つまり、「1999年のアメリカ」は、「8年間の経済成長、そして、1.4%のコアインフレ」というように、「5.2%の政策金利」に関して、「金利を下げることの自由度」には全く問題が無い状況だったものと想定されるのである。しかし、現在では、ご存知のとおりに、「米中の貿易戦争」などをキッカケにして、再び、「政策金利の低下」を促す圧力が高まっており、「パウエル議長」としては、「どのような手段を取るべきか?」で悩んでいるようにも感じられたのである。
ただし、私自身としては、「金利のELB」という表現が、たいへん気に掛かったが、その理由としては、「パウエル議長のホンネが出た可能性」が指摘できるものと考えている。つまり、「日本」においては、「1999年から、実質上のゼロ金利政策が継続している状況」であるが、この点に関して、「かりに、金利が上昇したとすると、どのような事態が発生したのか?」を想定すると、実際には、「民間銀行」のみならず、「日銀」までもが「金利負担」に耐え切れなかった状況も考えられるのである。
別の言葉では、「パウエル議長」が恐れる「金利のELB」とは、これから想定される「金利の上昇期」において、「どの国の金融機関が、金利負担に関して、もっとも脆弱なのか?」を判断する材料とも感じられたが、この点に関して、最も危惧すべき国は、やはり、「日本」とも言えるようである。(2019.6.6)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion8776:190702〕