本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(249)

著者: 本間宗究(本間裕) ほんまそうきゅう:ほんまゆたか : ポスト資本主研究会会員
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ROE神話の暴走

現在、「ROE神話の暴走」が危惧されているが、私自身としては、以前から、「当期純利益÷株主資本」という計算式で算出される「ROE(株主資本利益率)」に対して、大きな疑問を抱いていた。つまり、「株式の価値」については、基本的に、「どれほど独創的な商品や仕組みなどを生み出し、また、どれほど多くの人々に受け入れられるのか?」が、最も重要なポイントと考えていたからである。

別の言葉では、「負債」を増やし、「株主資本」を減らすことにより、「ROEが操作される可能性」を危惧していたわけだが、実際には、世界全体で、「マネーの大膨張」が発生し、その結果として、「行き過ぎた金融資本主義」の時代が形成されたものと考えている。つまり、「お金が神様となった時代」が産み出されたわけだが、このような状況下では、「権力の暴走」という「お金を持った人々が、どのような無謀な意見でも押し通す状況」となったことも見て取れるのである。

あるいは、「無理が通れば、道理が引っ込む」という諺のとおりに、「本末転倒した社会」が形成されたわけだが、実際には、「ゼロ金利が当たり前」、あるいは、「お金を借りた人が、反対に、金利を貰う状況」までもが発生しているのである。つまり、「石が浮かび、木の葉が沈む」というような状況のことでもあるが、現在では、「この点を不思議に思う人までもが、ほとんど消滅した状態」とも言えるのである。

そして、単純に、「リスクオン」や「リスクオフ」などの言葉を使用し、「何が、本当のリスクなのか?」が理解されない状況となっているようだが、この点に関して、最も重要なポイントは、やはり、「ストック」と「フロー」との関係性だと感じている。つまり、「実体経済」が「フロー」であり、「将来的に、取引が継続される保証がない状況」でありながら、一方で、「マネー経済」については「ストック」という「残高」のために、「お金は、利益を求めて動き回る状況」となっているのである。

しかも、この点に関して、最も注目すべき点は、現在の「マネー経済」については、「約10京円」という「実体経済の約10倍」という規模となっており、「今後、このマネーが、どこへ動くのか」により、世界全体が、大きな影響を受けることが見て取れるのである。つまり、今までは、「マネー経済」の中で暴れまわっていた状況だったものが、最近では、「実体経済」へと流れ始めた可能性があり、この結果として想定されることは、「未曽有の規模での大インフレ」とも言えるようである。(2020.1.13)

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経済成長のメカニズム

現在の「世界的な混迷」の要因として、現代人が、「経済成長のメカニズム」を理解できていない点が挙げられるようだが、具体的には、「実体経済」と「マネー経済」、あるいは、「商品」と「マネー(お金)」に関して、「性質的に、どのような違いがあるのか?」が理解できていない点である。つまり、「商品」や「実体経済」というのは「フロー」であり「次の取引が行われるかが保証されていない状況」でありながら、一方で、この時に使用された「マネー」は「ストック」という「所有者が交代しながらも、利潤により、残高が徐々に増加する性質」を持っているのである。

その結果として、「西暦1200年」から始まった「西洋の時代」の最終局面では、「お金が最も大切である」という認識を持つ「資本主義」が形成されたわけだが、この点に関して、最も注目すべき事実は、やはり、「1971年以降に誕生した、信用本位制という通貨制度」だと考えている。つまり、「過去50年弱の期間に、商品とマネーとが、具体的に、どのような変化を遂げたのか?」を考えることにより、「これから、どのような社会、あるいは、時代が形成されるのか?」が見えてくるものと思われるのである。

より具体的には、最後の段階で誕生した「デリバティブ(金融派生商品)」に関して、「商品」と「マネー」との「二面性」を理解することでもあるが、実際には、「2008年のリーマンショック」前後に、「商品」の特徴である「フロー」の性質が失われ、その後は、「マネー」の特徴である「ストック」の性質が前面に出たものと思われるのである。しかも、この点に関して、最も重要なポイントは、「より巨大な新商品が誕生しない限り、すでに存在しているマネーが堕落を始める状況」とも言えるのである。

つまり、「マネー残高」の増加に伴い、「より付加価値の高い商品」を生み出す必要性が存在するわけだが、実際には、今回の「デリバティブ」以降、「経済成長を促進させる商品」が誕生していないことも見て取れるのである。別の言葉では、「約8京円」という規模にまで膨れ上がった「デリバティブ」を上回る規模の「商品」については、実際のところ、「誕生が、すでに不可能な状況」とも考えられるのである。

そして、結果としては、「ケインズ」が指摘するとおりに、「通貨の堕落」がもたらす「破壊の力」が世界的に働き始めた状況となっているようだが、基本的には、「東洋の時代」を表す「唯心論」、そして、「市場経済」から「共同体」への大転換が、今後、急速に進展する状況を想定している次第である。(2020.1.13)

本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion9438:200210〕