本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(251)

著者: 本間宗究(本間裕) ほんまそうきゅう:ほんまゆたか : ポスト資本主研究会会員
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迷走するFRBの資産政策

現在、「FRBの資産政策」に対して、世界の注目が集まっているが、この点に関して最も重要な態度は、「決して、三次元の経済学を信用しないこと」であり、実際には、「現在の状況だけの議論」を避けることである。そして、この理由としては、「FRBが、なぜ、現在、短期国債の買い付けを行っているのか?」、あるいは、「なぜ、昨年の9月に、突如として短期金利が上昇したのか?」などが理解されていないために、結果として、「すべてが不毛の議論に終始しがちの状況」とも思われるからである。

そのために、現時点で必要なことは、「四次元の経済学」、すなわち、「歴史を遡り、 具体的な数字で、現在の混乱の発生原因を理解する態度」であり、実際には、「最低でも1971年のニクソンショックにまで時間を遡り、その後、どのような展開が繰り広げられたのか?」を、具体的な数字で研究することである。そして、このような観点から、現在の「FRBの資産政策」を眺めると、きわめて明確な結論が導かれるようだが、実際には、「民間部門が保有するデリバティブ」が危機的な状況に陥っており、その結果として、「金融システムが、世界的に崩壊する可能性」である。

つまり、「過去10年余りの量的緩和(QE)」については、基本的に、「民間の金融機関が保持していたデリバティブ」に対して「どのような影響を与えたのか?」を理解する必要性があるものと考えている。具体的には、「2008年前後のピーク時に、約8京円という規模にまで大膨張した状況」が、その後、「約2京円の残高縮小」に直面した展開のことだが、この時に発生した変化は、「想定元本の約10分の1と推測される不良資産」を処理するために、「約2000兆円の資金」が「世界的な中央銀行の資産増加によって賄われた状況」だったものと想定されるのである。

別の言葉では、「国民の資産を借りて国債を買い付け、結果として、超低金利状態を作り出した状況」のことでもあるが、この点については、「コンピューターマネーが存在し、かつ、国民が気付かない限り、この手法が有効だった」とも考えられるのである。しかし、「昨年の9月17日」に発生した「翌日物金利の急騰」については、「従来の手法が行き詰った状況」を表しているものと推測されるのである。

その結果として、「FRB」は、「一時しのぎの手法」である「短期国債の買い付け」に頼ったようだが、現在では、「1991年のソ連」と同様に、「紙幣の増刷」以外に「打つ手」が無くなった状況とも想定されるのである。(2020.2.13)

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ブラックスワンからグリーンスワンへ

最近、「BIS(国際決済銀行)」は、「グリーンスワン」という言葉を使い始めたが、このことは、「金融問題の質が変化した状況」を表しているものと考えている。つまり、以前は、「ブラックスワン」という言葉により、「マーケット(市場)において、事前にほとんど予想できず、起きた時の衝撃が大きい事象」が危惧されており、私自身としては、「2008年のリーマン・ショック」が、実は、典型的な「ブラックスワン」だったものと感じている。

 別の言葉では、私が想定する「金融界のブラックホール」の内部で、「人々の恐怖心」が「ブラックスワン」を生み出したものと感じている。そして、その後の「量的緩和(QE)」については、「デリバティブの大膨張」によって創られた「大量のマネー」が、世界全体に広がる状況を表しており、この結果として発生した現象が、「過剰な債務」と「過大な景気刺激」だったものと考えている。

つまり、「世界的な超低金利状態」が生み出され、「人々が、こぞって、竜宮城のような生活を送った状況」のことだが、現在では、「マイナス金利の悪影響」が、さまざまな分野で発生しているものと思われるのである。具体的には、最初に、「地球環境の悪化」であり、この点が、今回、「グリーンスワン」という言葉で説明されているようだが、実際には、「超低金利状態の蓋」が継続不能になった結果、「金融界のブラックホールが、ホワイトホールに変化した状況」を表しているようにも感じられるのである。

つまり、「政府の思惑」としては、「金融システムの崩壊」を防ぐために、「ありとあらゆる手段を使い、現在の、超低金利状態を維持すること」でもあったが、現在では、さまざまな副作用を生み出していることも見て取れるのである。具体的には、「民間金融機関」、そして、「民間企業や個人」の「疲弊」のことだが、実際のところ、「マイナス金利」が意味することは「政府が、国民から資金を搾取すること」とも言えるのである。

別の言葉では、「国民の預金を借りて、国債を買い上げる方法」だけではなく、「マイナス金利の実施」により、「国民から、金利を受け取る方法」までもが実施されたのである。しかも、「金融界のブラックホール」の中では、「すべてが闇の中」というような状況でもあったが、今回の「グリーンスワン」については、英語の「グリーンライト(青信号)」が意味するように、「闇の中に隠れていた部分が、すべて表に出始めるサイン」のようにも感じている。(2020.2.11)

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新型肺炎が意味するもの

昨年末の「ゴーン容疑者の密出国」については、「人類の煩悩」を表す「除夜の鐘」が鳴り終わったことを表しているものと思われたが、その後に発生した「新型肺炎」については、すでに「移行期に伴う大混乱」が始まった状況のようにも感じている。つまり、現在は、文明法則史学が教えるとおりに、「西洋の唯物論」から「東洋の唯心論」への移行期であり、この時に、われわれに突き付けられている「最大の選択」は、「お金を選ぶのか、それとも、命を選ぶのか?」ということだと考えている。

そして、この点については、今から400年ほど前から始まった「時は金なり」という認識そのものに、根本的な原因が存在したようだが、実際のところ、「西洋の物質文明」の特徴としては、「自然環境は、人間が支配するべきである」という「認識」であり、また、「お金儲けのためなら、地球環境を破壊しても良い」というような「意識と行動」だったのである。つまり、「お金がなければ生活ができない」、そのために、「経済の成長が、環境問題よりも優先する」というような認識が、現代の「常識」となったわけだが、この点に、大きな一石を投じたのが、昨年の「グレタさん」でもあったようだ。

そして、今後は、いろいろな大事件の発生により、世界中の人々が、「お金が大事なのか、それとも命なのか?」という問題に悩まされるものと考えているが、この点に関して、大きなヒントとなったのが、今回の「新型肺炎」だったものと感じている。つまり、「世界中の人々」が、今回の新型肺炎に関心を抱いただけではなく、過剰なまでの防衛反応に走った状況のことだが、実際には、「日本において、あっという間に、マスクが店頭から消えた」というような展開となったのである。

別の言葉では、現在、「実体経済」に比べて「約10倍」というような規模にまで膨れ上がった「マネー経済」が存在するために、「人々の僅かな意識変化が、特定の商品に対して、過剰なまでの需要を発生させる可能性」も想定されるのである。しかも、この時に、「自分の命」を左右するほどの「大問題」に直面した時には、より大きな混乱につながる可能性も存在するわけだが、実際には、「金融面での大混乱」を考えている。

つまり、今後、注目すべき点は、「実体経済」が悪化した時に、「過剰なマネー経済が、どのような動きを見せるのか?」だと感じているが、実際には、今まで、「金融商品」の内部にとどまっていた「デジタル通貨」が、今後、いろいろな「実物商品」へ向かい始めることにより、「大インフレ」を発生させる可能性である。(2020.2.2)

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ヤスパースの枢軸時代

最近の問題点は、ほとんどが、「技術科学の進歩」に対する「精神面での発展の遅れ」に由来するものと思われるが、このことは、まさに、「ドラえもん」と「のび太」の関係性とも言えるようである。つまり、「ドラえもんの四次元ポケットから、いろいろな新商品が出るものの、のび太が正しく使いこなせない状況」のことだが、今回、驚かされたことは、「枢軸時代」という言葉により、このような状況が、数十年前に説明されていた事実だった。

 具体的には、ドイツの哲学者であり、精神科医の「カール・ヤスパース(1883年-1969年)」が、今から半世紀以上も前に述べていたことだったのである。しかも、この時に重要な点は、今回が「第二の枢軸時代」であり、「第一の枢軸時代」については、今から「約2500年前」に発生していたという事実である。

つまり、当時は、「農業革命」がもたらした「物質文明の長足的な進歩」が、その後、「精神文明の急速な発展に繋がった」とも説明されているが、現在は、「工業革命」がもたらした「物質文明の長足的な進歩」が、間もなく、「精神文明の急速な発展」につながる可能性について言及しているのである。具体的には、「文明法則史学」が教えるとおりに、「富のバブル」が崩壊したときから、新たな「東洋の時代」、すなわち、「今までよりも、はるかに進化した精神文明の時代」が到来する可能性のことである。

より具体的には、「人類は、絶えざる進化と発展の過程にある」という言葉のとおりに、「約6000年前に、お金が発明され、その後は、約4000年前に、農業と文字が発明された」というような状況のことである。つまり、「第一の枢軸時代」においては、農業の発展がもたらした「時間的な余裕」が、さまざまな「精神文明の発達」に繋がったものと思われるが、現在の問題点としては、いまだに、「お金の謎」が解けず、結果として、「お金」だけに囚われている状況も指摘できるようである。

つまり、「精神面での発展の遅れ」の実情のことだが、実際には、「影も形も存在しない現代の通貨に惑わされている状況」とも言えるようである。しかし、これから想定される変化は、やはり、「神から紙への移行」であり、実際には、「現代の神様」となった「デジタル通貨」が、わずかな金利の上昇で、一斉に、「紙幣」に交換される状況のことである。このように、現在の「金融システム」は、これほどの大問題を含んでいる状況でもあるが、この点に関する「救い」は、その後、「心の謎」が解けることにより、「全く新たな、そして、より良い時代が始まる可能性」だと感じている。(2020.2.2)

本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion9532:200311〕