本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(261)

著者: 本間宗究(本間裕) ほんまそうきゅう:ほんまゆたか : ポスト資本主研究会会員
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ペントアップ需要とボトルネックインフレ

今回の「コロナ・ショック」は、世界中の人々の意識と行動を、ほぼ瞬間的に変化させたものと考えているが、今後は、この点を詳しく検証することにより、「デフレからインフレへのメカニズム」が見えてくるものと感じている。つまり、「実体経済のマヒ状態」から「マネー経済の破裂」に移行する状況のことだが、このときに有効な役割を果たすのが、「ペントアップ需要」と「ボトルネックインフレ」だと考えている。

より具体的には、最近、注目を浴びた「中国のリベンジ消費」のことでもあるが、このことは、典型的な「ペントアップ(折り曲げられた)需要」であり、実際には、「今まで我慢させられていた欲望が、一挙に表面化した状況」とも言えるのである。別の言葉では、「お金」が存在しながらも、「商品」に交換できる機会が存在しなかったために、潜在的な需要として、水面下で溜まっていた状況のことである。

そして、この時に注意すべき点は、今回の「マスク」のように、「需要が一挙に噴出したために、供給が間に合わなくなる事態」であり、このことは、いわゆる「劇場の火事」と呼ばれる「ボトルネックインフレ」を表しているものと考えている。つまり、「お金」と「商品」との関係性で、「デフレ」や「インフレ」が発生するわけだが、現在の「最大の注目点」は、「過去20年余りの超低金利状態において、どのような変化が発生したのか?」ということだと感じている。

具体的には、「デリバティブ」という金融商品に関して、「バブルが発生し、その後、崩壊を始めている状況」のことだが、この点に関して、「お金」と「商品」との関係性を考えると、現在の注目点は、大量の「お金」が存在しながらも、投資されるべき「商品」が消滅した状況とも考えられるのである。別の言葉では、本来、すでに、「大インフレ」が発生しているはずの状況でありながら、今までは、「中央銀行による国債などの買い付け」により、「実物資産への資金流出」が防がれていた可能性である。

つまり、現在は、人類史上、未曽有の規模で「潜在的なインフレ圧力」が高まっている段階とも思われるが、このことは、「金融面におけるペントアップ需要」とも考えられるのである。そして、「国債価格の暴落」とともに、一挙に、「実物資産へ、大量の資金が殺到する展開」を想定しているが、この時に注目すべき点は、やはり、「ボトルネックインフレ」という「需要に見合うだけ実物資産が供給できない状況」であり、その結果として、今後は、史上最大規模のインフレが世界的に発生するものと想定されるのである。(2020.5.22)

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世界的なインフレの大津波

現在の世界情勢としては、「アルゼンチンのデフォルト(債務不履行)」や「イランの株価急騰」からも明らかなように、「体力の弱い国々から、順番に、インフレ(通貨価値の下落)が始まっている状況」とも考えている。そして、今後は、最も体力の強い国々にまで、この動きが波及していくものと思われるが、この点に関して、現在、注目すべき事実は、「主要国間の通貨スワップ」とも言えるようである。

具体的には、「世界の主要国が、通貨スワップという形で資金の融通をしている状況」のことだが、実際のところ、「日銀」は、現在、「約25兆円」もの資金を、海外の中央銀行から借り入れているものと想定されるのである。つまり、「海外の中央銀行から資金を借り入れて、国債を買い付けることにより、超低金利状態を維持している状況」のことだが、このことは、「日本に、大量のお金が存在する」と信じ込んでいる人々には、全く、実感が伴わない事実とも言えるようである。

別の言葉では、「現在の日本」が、「ありとあらゆるところから資金を借り入れて、ようやく、金融システムが成り立っている状況」であり、今後は、「金利を上げなければ、貸してくれる人が存在しなくなるような段階」に差し掛かっている事実のことである。つまり、「1991年のソ連」と同様に、「銀行などからの借り入れができなくなった個人が、高利貸しに頼り始めるような状況」とも言えるのである。

別の言葉では、すでに、「インフレの大津波」が見え始めた段階、すなわち、「数か月後にも、世界全体を大インフレが襲い始める状況」のようにも感じているが、残念ながら、現在の日本では、いまだに、「デフレ」という言葉が独り歩きしている状況とも言えるようである。つまり、「実体経済の落ち込み」だけに目を奪われ、「マネー経済の実情」は、ほとんど注目されていない状況でもあるが、興味深い点は、すでに、「貴金属の実物が、手に入りにくくなった状況」だと考えている。

その結果として、今後は、「終戦前の日本人」と同様に、「実情に気づいた人から、徐々に、国債や預金から実物資産などへ、資金の移動が実施される展開」を想定しているが、当時の実情としては、「敗戦時においても、ほとんどの人々が、預金や国債などを、後生大事に抱えていた状況」だったのである。つまり、「後の祭り」の状態にならなければ、「実際に、どのようなことが起きていたのか?」に気づかないのが、「人間の性(さが)」であり、今回も、同じ失敗が繰り返されているものと感じている。(2020.5.23)

本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion9862:200620〕