本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(262)

著者: 本間宗究(本間裕) ほんまそうきゅう:ほんまゆたか : ポスト資本主研究会会員
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巨人の肩にのる小人

「万有引力」を発見し、「近代科学技術」が発展するキッカケを作った「ニュートン」は、「私がかなたを見渡せたのだとしたら、それは巨人の肩の上に乗っていたからである」という「有名な言葉」を残したが、具体的には、「コペルニクスの地動説」や「ケプラーの法則」などが、「巨人の一人」として指摘できるようである。つまり、「天文学のサイクル論」が見つかった結果として、「重力の発見」が可能だったものと考えているが、この事実を、現在の「社会科学」にあてはめると、すでに、数多くの「巨人」が存在した状況のようにも感じている。

具体的には、「文明法則史学」を発見した「村山節氏」であり、また、「枢軸時代」を発見した「カール・ヤスパース氏」などのことだが、基本的には、「数千年前から、数多くの巨人が存在し、その結果として、現在の社会的な繁栄が存在している状況」のようにも感じている。つまり、「お釈迦さま」や「ソクラテス」などが、「第一の枢軸時代における巨人」だと考えているが、現在の「第二の枢軸時代」においては、残念ながら、この点が曖昧な状況のようにも思われるのである。

別の言葉では、「自然科学」や「科学技術」については、すでに、急激な発展を見せたものの、「技術を使いこなす人々」に関して、「心の謎」や「お金の謎」が解けていないために、現在、さまざまな問題が発生している状況のことである。より具体的には、「日本の歴史」を考えた場合、「明治維新からの約77年間」については、「富国強兵」というスローガンを掲げ、「前半は好調だったものの、後半は、軍部の暴走で国民が大きな被害を受けた状況」だったことも見て取れるのである。

そして、「敗戦から75年目を迎えた現在」では、「経済面や金融面での発展」を望んだ日本人が、「敗戦後の前半部分」では、実体経済の成長を享受することが可能だったという展開だったものの、「後半部分」では、第二次世界大戦の末期と同様に、官僚の暴走により、大きな被害を受ける可能性が高まっているのである。

つまり、「国家財政」が破綻した場合には、「金融面での焼け野原」が発生するものと思われるが、実際には、「異次元の金融緩和」などの言葉に踊らされ、「不都合なものは見たくない」というような心理が働いている段階とも思われるのである。具体的には、「誰も、現実を直視しようとしない事態」のことだが、実は、このような展開こそが、「巨人の肩にのる小人」が現れるための「必要条件」のようにも感じられるのである。(2020.6.1)

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デジタル化の落とし穴

「コロナ・ショック」の影響を受け、現在は、一種の「デジタル化のバブル」とでも呼ぶべき様相を呈しているが、この点には、大きな注意が必要だと感じている。つまり、「映像」なども含めた「情報」については、確かに、「デジタル化の恩恵」は、きわめて大きなものでもあるが、この時に誤解されていることは、「通貨(マネー)」に対する影響とも言えるのである。具体的には、現在の通貨制度である「信用本位制」において、基本的な貨幣となっている「デジタル通貨」、あるいは、「コンピューターマネー」が、これから想定される「大インフレ」の時代に、全く役に立たなくなる可能性のことである。

つまり、目に見えない「単なる数字」である「デジタル通貨」については、「コンピューターネットワーク」という「仮想現実の世界」でしか、力を発揮できない性質が存在するのである。別の言葉では、「1971年のニクソンショック」、そして、「1980年代初頭に誕生したデリバティブ(金融派生商品)」などの要因により、過去数十年間、「デジタル通貨」が、世界的に、大きな影響力を持ったわけだが、現在では、これらの条件に対して、全く、逆の動きが発生していることも理解できるのである。

具体的には、「20年以上も継続した、世界的な超低金利状態」、そして、「中央銀行を中心にした、強引な国債の買い支え」などの要因が、「2019年の9月17日」に米国で発生した「資金の逆流」により、現在、大きな転換期を迎えているのである。つまり、「僅かな金利上昇」により、「信用本位制」の崩壊や、「デジタル通貨」の消滅が、実際には、あっという間に、世界的に発生するものと思われるのである。

そして、このタイミングを判断する方法としては、「先進各国の中央銀行における資金繰り」が、参考になるものと考えているが、実際には、「日銀」のみならず、「米国のFRB」や「ECB(欧州中央銀行)」においても、「紙幣の増刷以外に、残された手段が無くなった状況」とも考えらえるのである。

そのために、これから考慮すべき点は、「どれほど有効、かつ、正確な情報が、世界的に共有されるのか?」ということであり、決して、「デジタル通貨で、お金儲けを企てること」ではないものと考えている。つまり、今回の「デジタル化」については、「情報を選別することにより、経済学や心理学などの社会科学を、どのようにして発展させるのか?」に対して、時間とエネルギーを使うべきであり、決して、「デジタル通貨のバブル」に踊らされるという「落とし穴」にはまらないことだと思われるのである。(2020.6.3)

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コロナ増税の方法論

現在、「コロナ増税」に関する議論が活発化し始めているようだが、具体的には、「今回の給付金が、将来、われわれの税金として跳ね返ってくる可能性」のことである。つまり、今後、「3・11の大震災」と同様に、「直接的な税金が課される方法」が議論されたり、あるいは、「景気が好転するまで増税は不可能である」というような意見が出たりする状況のことだが、このことも、結局は、「三次元の経済学」のとおりに、「過去の歴史を見ず、また、具体的な数字による検証を忘れた議論」とも言えるようである。

別の言葉では、「人類が、今までに、どのような経験をしてきたのか?」という「四次元の経済学」が、現在の日本では、全く忘れ去られた状況のようにも思われるのである。つまり、間もなく、「古典的なインフレ税」という、きわめて明快単純な答えが導かれるものと考えているが、実際には、「長期間にわたり、本当のインフレを経験せずに済んだ日本人」にとって、「税金の種類」、あるいは、「インフレ税」などは、「死語」、あるいは、「過去の遺物」となっている状況のようにも感じられるのである。

そのために、今回は、「戦後の日本で、どのような税金が課せられたのか?」を、再度、説明させていただくが、基本的には、「目に見える税金」として、「消費税」や「所得税」などの「現在の税金」、また、「国債」という「将来の税金」が存在していることも見て取れるのである。そして、もう一つの「目に見えない税金」としては、「インフレ税」が存在するわけだが、このことは、「江戸時代の貨幣改悪」のように、「通貨価値の下落による実質的な増税」のことである。

また、この時にも、「国民が気付く税金と気付かない税金」の二種類が存在するが、実際には、「中央銀行のバランスシートを、どのようにして膨張させるのか?」による区別のことである。つまり、現在の「リフレーション政策」、すなわち、「国民の預金などを使い、国債を買う方法」が「国民が気付かない方法」であり、一方で、「紙幣の増刷で資金繰りを賄う方法」が「国民が気付くインフレ税」のことである。

そして、現在は、「リフレーション政策」が行き詰まりを見せ、間もなく、誰もが認識できる「インフレ税」が課される段階に差し掛かってきたわけだが、実際には、「いまだに悠長な議論が行われている状況」とも言えるのである。つまり、「第二次世界大戦の末期」 と同様に、多くの人が、日本の金融敗戦を否定している状況となっており、これほどまでの「落差」が、その後、「日本人の覚醒」に繋がったようにも感じている。(2020.6.4)

本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion9896:200701〕