本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(271)

著者: 本間宗究(本間裕) ほんまそうきゅう:ほんまゆたか : ポスト資本主研究会会員
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断末魔の叫び声をあげる世界のマネー

現在、日本国内や海外で、頻繁に見受けられる質問は、「コロナ・ショックで実体経済がマヒ状態となっていながら、なぜ、株式や貴金属の価格が上昇を続けているのか?」というものである。つまり、「実体経済」だけを見て、「マネー経済」が理解できず、また、「デリバティブという金融商品の性質」が解明できていないために、理論的な混乱が発生し、このような質問が出ている状況とも思われるのである。

そして、今後の展開としては、「1971年のニクソンショック以降、どれほど巨額のマネー(お金)が創り出されたのか?」が理解できない限り、「より一層、訳の分からない相場が継続する状況」も想定されるようである。別の言葉では、「マネーの性質」を理解すれば、「現在の相場が、きわめて単純明快な展開となっている事実」に気付くものと思われるが、実際には、私自身においても、「最後の落とし穴」とも言える「インフレ指数の盲点」に気付くまでに、「約20年」という時間を必要としたのである。

より詳しく申し上げると、「デリバティブの大膨張」と「金融のメルトダウン」の仕組みについては、「人類史上、初めての出来事」のために、過去の教科書が、全く役に立たず、独自の理論を生み出す必要性が存在したのである。そして、結論としては、「通貨と商品の性質」を深く理解することにより、現在が、「古典的なインフレ相場の再来」、あるいは、「世界のマネーが断末魔の叫び声を上げている状態」とも理解できたのである。

つまり、現在のような「巨額のデジタル通貨」が誕生するまでには、「西ローマ帝国の崩壊以降、約1600年の時間が必要だった」という状況のことである。そして、現在は、当時と同様に、「財政赤字」と「インフレ」により、「現代の資本主義文明」そのものが崩壊の危機を迎えている状態とも感じているが、実際には、多くの人々が、「世界全体で、デジタル通貨が紙幣に交換されようとしている事実」を理解した結果として、大量の資金が、実物資産に流れ始めている状況とも言えるのである。

より具体的には、1971年から始まった「信用本位制」という通貨制度が、現在、崩壊を始めており、そのために、今後は、「1923年のドイツ」や「1945年の日本」、あるいは、「1991年のソ連」などで発生した「インフレ(通貨価値の減少)」を、はるかに上回る規模の「世界的な大インフレ」が想定されるのである。しかも、現在では、この「蠢(うごめ)き」が、徐々に始まっている段階、すなわち、「インフレの大津波」が世界を襲い始めた状況のようにも感じている次第である。(2020.8.3)

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本当のインフレ

今から40年ほど前、アメリカの大学で受けた「経済学の試験」では、問題が一つであり、教科書の持ち込みが可能な状況でもあった。具体的には、「インフレとは何か?」という設問だったが、40年近くが経過した現在、改めて、この問題を考えると、心から納得できる答えが導き出せたものと感じている。つまり、当時は、「インフレやデフレは貨幣的現象である」という「教科書的な答え」は理解していたものの、「貨幣と商品との関係性」を意味する「貨幣的現象」が理解できていなかったようにも思われるのである。

より具体的には、「過去200年間に、どのような商品が誕生し、また、どのような通貨が発行されたのか?」が理解できていなかったために、「理屈の無間地獄」という「三次元の落とし穴」に陥った可能性のことである。つまり、「理屈と膏薬は、どこにでも付く」という言葉のとおりに、「どのような意見にも、一部には真実が隠されている」という状況であり、その結果として、「群盲、象を撫でる」という「お釈迦様の教え」のとおりに、「自分の意見が正しい」と信じる人々の争いが、経済理論で発生した状況のことである。

そして、この問題の解決法としては、「19世紀が、一次産業、そして、初期の二次産業が発展した段階」であり、また、この時に、「金貨本位制」という「きわめて少量の通貨で世界経済が賄われた実情」を理解することだと考えている。つまり、「19世紀の半ば」に発生した「米国のゴールドラッシュ」の時には、「実体経済」に変化がない状況下で、「通貨の供給量」が増えたために、「物価の上昇」に繋がった展開だったのである。

また、戦後の世界では、最初に、「工業製品などの二次産業」が発展し、「預金」や「債券」などの「お金(マネー)」が供給されたわけだが、その後は、「サービス品などの三次産業」、そして、「デリバティブを中心とした金融商品」が産み出された状況だったことも見て取れるのである。つまり、「1971年のニクソンショック」以降、「デジタル通貨」が発展したわけだが、この時の問題点は、「インフレ率を計測する指標」において、「一次産品」や「二次産品」だけが対象になっている事実である。

このように、現在では、「多様な商品」と「多様な通貨」が存在するために、本当の意味での「インフレ率」を計測するためには、「全ての商品」と「全ての通貨」との関係性を考慮する必要性が存在するものと考えている。そして、この観点から、今後、最も注目すべきことは、「デジタル通貨」が完全に消滅し、「大量の紙幣」が発行されたときに、「どの商品に、人々の資金が殺到するのか?」ということだと感じている。(2020.8.7)

本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion10075:200901〕