本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(276)

著者: 本間宗究(本間裕) ほんまそうきゅう:ほんまゆたか : ポスト資本主研究会会員
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金融市場のメダカとクジラ

先日、日本の株式市場では、「ソフトバンクのデリバティブ取引」が大きな話題となったが、具体的には、総額で「約175億ドル(約1.8兆円)」もの資金を、「米国株やオプション取引に投資している状況」のことである。しかし、この点に関して興味深い事実は、海外で、「ソフトバンクは、金融市場におけるメダカにすぎない」という意見が出ていることであり、実際のところ、「米国のJPモルガン」は、「約2.6兆ドル(約275兆円)」もの金額を「株式関連のデリバティブ」に投資しているのである。

そのために、「ソフトバンクはメダカであり、本当のクジラはJPモルガンである」という理解が、現在の「世界的な常識」とも言えるようだが、私自身としては、この点について、大きな違和感を覚えている。つまり、「金融界の本当のクジラは、金利のデリバティブである」という理解のことだが、実際のところ、「デリバティブの総額」については、「2000年に約8000兆円」、「2008年前後に約8京円」、そして、「現在が約6京円」という展開となっているのである。

そして、この内訳としては、「約7割が金利関連のデリバティブ」という状況であり、実際のところ、「株式」や「為替」などのデリバティブについては、「債券や金利関連」と比較すると、きわめて小さなポジションとも言えるのである。また、「金融の大地震」とも言える「2006年から2009年のGFC(金融大混乱)」で発生した「インフレの大津波」は「金融界のブラックホール」に隠されていたことも見て取れるのである。

このように、今までは、「大津波が、水面下で潜行していた状況」でもあったが、今回の「ソフトバンクのデリバティブ取引」で見えてきた事実は、「実物資産」の「株式」にまで、「金融のメルトダウン」が進展してきた状況とも感じている。つまり、「デジタル通貨の枯渇」が顕著になり始めた結果として、「目に見えるインフレが株式にまで及んできた可能性」のことだが、この時に注目すべき点は、やはり、「金融界のクジラ」である「世界のデリバティブ」の現状、そして、将来の展望である。

具体的には、今後、わずかな「金利の上昇」により「デリバティブの完全崩壊」、そして、「デジタル通貨の完全消滅」が予想される事実のことだが、実際には、世界各国の国家財政が破たんすることにより、世界的な「紙幣の大増刷」が始まる可能性である。そして、この時に考えなければいけないことは、「世界の物価が、どれほどの上昇を見せるのか?」ということであり、実際には、人類史上、最大の規模になるものと感じている。(2020.9.10)

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西ローマ帝国滅亡の真因

近代の西洋文明に多大な影響を与えたと言われる「聖アウグスティヌス(西暦354年-430年)」に「神の国」という著書があるが、冒頭で説明されていることは、「キリスト教への改宗が、西ローマ帝国滅亡の原因ではない」ということだった。つまり、当時、盛んに議論されていたことは、「数百年にわたり繁栄してきた西ローマ帝国が、突如として崩壊した原因は、西暦392年に実施されたキリスト教の国教化である」ということであり、そのために、「聖アウグスティヌスは、キリスト教の擁護のために、神の国を著わした」という状況だったのである。

そして、これらの事実から理解できることは、「西暦410年」に起こった「蛮族によるローマ略奪」が「当時の人々に、きわめて大きな衝撃を与えた」という点であり、実際には、「この出来事により、多くの人々が、西ローマ帝国の滅亡を実感した可能性」のことである。つまり、約800年間も継続した「西洋の時代」が、「この事件をきっかけにして終焉の時を迎えた可能性」のことでもあるが、私自身としては、「約1600年後の2008年」に発生した「リーマンショック」が、実は、この事件に匹敵するのではないかとも感じている次第である。

別の言葉では、「デリバティブの大膨張」がピークを付けたのが、この時期であり、そのために、将来的には、「2006年から2009年のGFC(金融大混乱)により、西洋の物質文明が終焉の時を迎えた」というような説明が行われる可能性を想定しているのである。つまり、その後に実施された「量的緩和(QE)」については、典型的な「リフレーション(通貨膨張)政策」であり、実際には、「国民の資金を使い、政府の延命策が実施された状況」だったと理解される可能性のことである。

また、「1600年前の状況」から推測されることは、今後、「東洋の時代」、そして、「唯心論の時代」が訪れる可能性でもあるが、実際には、「人々のフロンティアスピリット(開拓者精神)」が、「物質」から「精神」に移行する展開のことである。つまり、人々の興味と関心が、「地位や名誉、あるいは、お金」という「人爵」から、「天爵」という「精神的な高貴さ」へ変化する可能性のことである。より具体的には、東洋において、1600年ほど前から、「仏教」が広く研究され始めたわけだが、私自身としては、「西暦800年前後」に完成した「弘法大師の真言密教」がこの点に関するピークだったようにも感じており、しかも、「西暦1600年前後」に出来上がった「時は金なり」と「正反対の性格」を持っていた状況だったようにも感じている。(2020.9.16)

本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion10175:201008〕