貴金属市場の実情
「金(ゴールド)価格の現状」は「短期間の調整期を経て、再度、急騰局面を迎えた段階」とも考えているが、現在、この点に関して、海外で注目されていることは、「先物と現物との間で、大きなせめぎ合いが発生している状況」である。つまり、「金や銀の価格」については、20年以上も前から、「メガバンクによる操作が行われているのではないか?」と疑問視されており、実際には、「JPモルガンへの制裁金」からも明らかなように、「先物を中心にして、価格の抑圧が実施されていた状況」だったのである。
そして、現在、最も注目されている事実は、「大量の先物売りが存在する状況」であり、また、「中央銀行が保有する金が、民間に貸し出されている可能性」でもあるが、この理由としては、「貴金属をはじめとした実物資産価格の上昇が、既存のインフレ率上昇に繋がり、結果として、金利デリバティブを崩壊させる懸念」が存在するからである。別の言葉では、金利の上昇が、「金融システム」を崩壊させる可能性が懸念されたわけだが、この結果として発生した現象が、貴金属市場における「現物の枯渇」であり、実際には、「大量の先物売りが解消できない状況」だったのである。
そして、このような状況については、現在、世界的に発生している、「実体経済」と「マネー経済」との「格差」を象徴する出来事のようにも感じているが、実際には、現時点でも、「実体経済の約10倍の規模のマネー経済が存在する状況」となっているのである。つまり、「大量のマネー」が存在するものの、実際には、「張り子のトラ」のような状況であり、「貴金属」などの実物資産を買おうとしても、「現物が不足している状況」、あるいは、「数倍、あるいは、数十倍の価格上昇が必要とされる状況」とも言えるのである。
より具体的には、今までが、「デジタル通貨が、デリバティブなどの金融商品に投資されていた状況」であり、この時の必要条件が、「超低金利の壁で、マネー経済から実体経済への資金流出を防ぐこと」だったのである。別の言葉では、「中央銀行が、国民の預金などを借りながら、国債を大量に買い付ける方法」が実施されていたわけだが、現在では、「デジタル通貨の枯渇」、そして、「紙幣の増刷」が始まったことも見て取れるのである。
そして、この事実に気づいた人から、「貴金属」や「割安株」、そして、「食料品」などの実物資産を買い始めたものと考えられるが、この点に関する問題点は、やはり、「現存するマネーの金額が巨大すぎる状況」であり、この結果として、今後は、「未曽有の規模での大インフレが世界的に発生する可能性」が高くなったものと考えている。(2020.10.19)
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急速に悪化する各国の財政状況
10月14日に発表された「IMF(国際通貨基金)のレポート」によると、「2020年の世界全体の政府債務残高は、国内総生産(GDP)合計の98・7%に達し、前年比で15・7ポイント上昇する」と予想されている。しかも、「日本」については、「前年比で28,2ポイント増の266.2%」という、きわめて危機的な事態に陥る状況も予想されるわけだが、実際には、いまだに、「超低金利状態」が継続し、また、「個人の預金も増え続けている状況」となっているのである。
つまり、「国家の債務残高」については、時間の経過とともに、より一層、膨らんでいる状況でありながら、一方で、「今後、この債務が、どのようにして返済されるのか?」については、依然として、無視され続けている状況とも言えるのである。別の言葉では、「2011年の原発問題」と同様に、「今まで大丈夫だったから、これからも、同様の事態が継続するだろう」というような「根拠のない楽観論」が支配している状況のようにも感じられるのである。
そして、「臨界点」という「事態が急変する時期」に見舞われた時に、「国民がパニック状態に陥る可能性」も想定されるが、実際には、不思議なほどの安心感が存在している状況のようにも感じている。つまり、「デフレの時代だから、金利が上昇することはないだろう」、あるいは、「日本は先進国だから、国家財政が破綻することはないだろう」などの意見が信じ込まれている状況のことである。
より具体的には、「日銀が、個人の銀行預金を借りて、国債を買い付け、超低金利状態を維持する」という方法により、「金融システムの安定性」が保たれてきたわけだが、現在では、この方法に限界点が訪れている状況とも言えるのである。つまり、「日銀の資金調達法」に関して、「デジタル通貨から紙幣へ」という劇的な大転換が発生する可能性が高まっている状況のことである。
そして、この事実に気付いた人から、徐々に、「実物資産への資金移動」を始めている状況とも思われるが、実際には、「お金があっても、現物不足により、品物が買えない状況」が発生し始めているのである。つまり、「ボトルネックインフレ」が、世界のいろいろな分野で発生し始めている状況とも言えるわけだが、この点については、今後、「金利の上昇」、あるいは、「国債価格の暴落」により、ほぼ瞬間的に、世界全体に認識される事態が訪れるものと考えている。(2020.10.20)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion10297:201118〕