本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(119)

著者: 本間宗究(本間裕) ほんまそうきゅう:ほんまゆたか : ポスト資本主研究会会員
タグ: , ,

金融界のドーピング現象

昨年まで「ダラス地方連銀の総裁」を務めた「リチャード・フィッシャー氏」が、「3月8日」に、米国の「CNBC」という報道番組に出演し、驚くべき発言をしている。具体的には、「我々は、金融システムに、ヘロインとコカインを注入した」、また、「現在は、リタリン(合法シャブと呼ばれる覚醒剤)」が使われている」というコメントだが、このことは、いわゆる「量的緩和(QE)」が、実際には、「リフレーション(通貨膨張)政策」であり、今後の「ハイパーインフレ」を予想させる状況とも言えるようである。

つまり、「中央銀行のバランスシートを大膨張させて、国債を買い付ける方法」が、実際には、「末期がん患者に、モルヒネを打つような状況である」と言いたかったようにも感じている。しかも、フィッシャー氏は、以前に、「FRBは、弾薬の尽きた巨大兵器となった」ともコメントしたそうだが、この点について、海外の「金融の専門家」は、「ウォール街のギャンブラーたちを、より一層、裕福にさせるために、市中の人々から預金を奪った」とも述べているのである。

具体的には、「日銀の状況」からも明らかなように、「当座預金」を増やしながら「国債を買い付ける」という行為は、実質上、「国民の預金を使って、国債を買い支えている状況」とも言えるのである。別の言葉では、「国民の知らないうちに、いつの間にか、預金が国債に換わっていた状況」のことだが、問題は、このような「金融界のドーピング現象」に限界点が訪れた時に、「どのような事が起こるのか?」ということである。

つまり、「お金」は「残高」であり、「インフレでしか、価値が減少しない」という性質があるが、今後は、今までの「量的緩和」が変化し、実際には、「日銀による資金の吸い上げ」から「資金が、紙幣の形で、急速に市場に出回る状況」が想定されるのである。より具体的には、現在の「日本のGDP」が「約500兆円」であるのに対し、「日本のM2が約920兆円」という状況は、「大量の資金」が供給されている状況を意味しているが、現在では、「日銀により、吸い上げられた状況」とも言えるのである。

しかも、今回は、「国債の買い支え」により、「マイナス金利」までもが発生したが、現在では、「MMFの完全消滅」のように、さまざまな問題が引き起こされている。つまり、「フィッシャー氏」が述べたように、現在は、「健全な金融システム」ではなく、「ヘロインやコカインにより、延命措置が計られている状態」とも考えられるのだが、今後は、たいへん近い将来に、この点について、何らかの大事件が発生するものと考えている。(2016.3.25)

-------------------------------------------

コンピューターの発展と人類の未来

先日、「コンピューターが、囲碁の第一人者に勝利した」という、衝撃的なニュースが流れたが、このことも、「人類の進化」を象徴する出来事だったものと感じている。つまり、「過去100年間の歴史」を振り返ると、さまざまな「技術進化」により、実に「便利な社会」が形成されたことが見て取れるが、具体的には、「自動車」や「ジェット機」、あるいは、「携帯電話」や「コンピューターネットワーク」などが普及したことにより、「人間の労働」が、大幅に減少したことが理解できるのである。

つまり、かつては、「公共料金の徴収」も、「個々の家庭に、集金人が訪れる」というような状況であり、また、「給料が、現金で支払われていた」という経験をした人も、数多く存在するのである。しかし、現在では、「世界中の人々が、コンピューターネットワークで繋がり、海外の人々と、瞬時に交信ができる状況」となっており、この結果として、さまざまな職業が消滅し、また、新たに生まれたことも理解できるのである。

また、古くは、「自動車の発展」により、「駕籠かき」などの職業が消滅したが、この点を、よく考えると、「労働価値とは、一体、どのようなものか?」という疑問点に行き着くようである。つまり、古典的な経済学では、「労働価値説」という理論が存在し、「商品の価値は、投入した労働力によって計られる」という考えが、信じられていたのである。しかし、実際には、「機械化」、「産業化」により、いろいろな商品が機械によって生産されるようになったために、いつの間にか、労働価値説は、学問的な効力を失ったのである。

このように、「自然科学」に関する「技術の進化」は、たいへん目覚ましいものがあったものと考えているが、問題は、「社会科学」の分野である、「経済学」や「哲学」、あるいは、「道徳」などが、ほとんど進化しなかった点が指摘できるようである。特に、「マネー理論」においては、「誰も、お金の謎を考える人がいなかった」というような状況であり、その結果として、「富の偏在」や「貧富の格差」が、世界的に進展したものと考えている。

具体的には、現在の「世界の富」が、ほとんど、「国家」や「メガバンク」によって支配されている状況のことである。つまり、具体的な数字を見ると、「世界で最もお金持ちである」と言われる「ビル・ゲーツ氏」でも、「約8.5兆円」にすぎず、「約10京円」と推測される「世界全体の金融資産」からは、実に、わずかな金額にすぎないのである。別の言葉では、現時点で、危惧すべきは、「コンピューターによって支配される社会」ではなく、「お金によって支配されている人類」とも考えられるのである。(2016.3.28)

本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔opinion6047:160422〕