民主主義の未来
現在、「民主主義の未来」が危惧されている状況でもあるが、この点については、歴史をさかのぼりながら、「神と人との関係性」を考える必要性があるものと感じている。つまり、「神の見えざる手」を説いた「アダム・スミス(1723年-1790年)」や「神の絶対的真理の具現化」を考えた「ヘーゲル(1770年-1831年)」、そして、「宗教はアヘンである」と唱えた「マルクス(1818年-1883年)」や「神は死んだ」という言葉を普及させた「ニーチェ(1844年-1900年)」などのように、「神と人との関係性」が、時代とともに、大きく変化していったことも見て取れるのである。
別の言葉では、「西洋の唯物論的な思考」が普及した結果として、人々は、「神」よりも「富(お金)」に「救い」を求め始めたものと思われるが、現在では、ご存じのとおりに、「目に見えないデジタル通貨」が「現代の神様」となり、「お金があれば、何でもできる」と認識する人々が、急激に増えた状況とも言えるのである。別の言葉では、「貨幣の歴史」を辿ると明らかなように、「西暦400年前後」の「西ローマ帝国の末期」以降、現在は、最も「お金が増えた時代」、すなわち、「1600年ぶりのマネー大膨張」を謳歌している時代とも考えられるのである。
そのために、現時点で必要なことは、「人々の意識と行動が、時代とともに、どのような変化を見せたのか?」を深く分析することだと感じているが、具体的には、「聖アウグスティヌス(354年-430年)」が著した「神の国」などを参考にしながら、「西ローマ帝国崩壊後に、どのような世界が出現したのか?」を検証することである。つまり、「富におぼれた人々が、富の消滅とともに、神への信仰を深めた展開」のことでもあるが、この点に関して驚かされることは、「古代ギリシャ時代」に発展した「天文学」などが放棄され、「天動説」が全面的に信じ込まれた事実である。
より具体的には、「武力による世界制覇」をもくろんだ「西ローマ帝国」は、「文明法則史学」が教えるとおりに、「財政赤字とインフレにより、あっという間にほろんだ」という状況だったが、この点に関して、「聖アウグスティヌス」は、「人の国の愚かさ」と「神の国の素晴らしさ」を説いたのである。そして、このような考えが、その後、約1500年にもわたり、西洋の人々の基本的な認識となったわけだが、現在では、冒頭に述べたとおりに、再び、「民主主義」という「人の国」が、全面的な信頼を受けている状況となっており、そのために、「民主主義の未来」については、3000年前まで歴史をさかのぼりながら、根本から考え直すべきだと感じている。(2021.5.21)
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ペーパーゴールドの消滅危機
現在、欧州の金融市場で噂されていることは、「ペーパーゴールドの消滅危機」であり、実情としては、「金(ゴールド)の現物を保有していない銀行が、先物で大量のカラ売りしている状況」に関して、今後の数か月間で、「カラ売りのポジションを急激に減少させる可能性」のことである。つまり、「カラ売りの買い戻しにより、貴金属価格が急騰する可能性」が指摘されているが、多くの投資家の感想としては、「今まで、カラ売りに、さんざん悩まされてきた」という状況のために、「なぜ、現在、このような行動をとらざるを得ないのか?」という意見までもが出る状況となっているのである。
そして、この理由としては、「デリバティブ時限爆弾の破裂」とも思われるが、実際には、「アルケゴス・ショック」以降、「欧州金融機関の資金的な余力が失われた状態」となっているために、「小さな市場である金属のデリバティブを縮小させ始める可能性」とも考えられるのである。つまり、いまだに「約6京円」もの残高が存在する「デリバティブ」については、ほとんどが、「金利関連のデリバティブ」であり、今までは、「世界の金融市場をコントロールすることにより、超低金利状態が維持でき、デリバティブの崩壊を防ぐことができた状況」だったのである。
しかし、最近では、「デジタル通貨の枯渇」や「実体経済への資金染み出し」などにより、徐々に、「世界的な金利上昇」、そして、「商品価格の急騰」という変化が発生しているのである。つまり、「金融機関の資金繰り」に関して、いろいろな問題が発生してきたものと思われるが、その結果として、「金融機関の自己資本規制」である「バーゼル3」が注目され始めている状況のようにも思われるのである。
より具体的には、「BIS (国際決済銀行)」を中心にした「世界各国の金融当局者」が目指すことは、「マクロプルーデンス」という「金融システムの安定」でもあったが、具体策としては、「中央銀行が、国民の資金を借りて、超低金利状態を作り出す方法」しか取ってこられなかったのである。別の言葉では、「時間稼ぎ」と「問題の先送り」しかできない状況だったわけだが、この結果として発生した変化が、前述の「アルケゴス」をキッカケにした「デリバティブ爆弾の連鎖破裂」とも考えられるのである。
そのために、今後の注目点としては、「貴金属の価格が、年末までに、どれほどの急騰を見せるのか?」、また、「世界の金利が、同期間に、どれほどの上昇を見せるのか?」ということだと考えている。(2021.5.22)
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中銀デジタル通貨の実現可能性
5月25日付けの日経新聞に、「米国のFRBが、重い腰を上げて、CBDC(中央銀行のデジタル通貨)の発行を検討中である」という意見、すなわち、「デジタルドルの発行可能性」の記事が出たが、この点については、「お金の原点」や「今までの推移」を検討する必要性があるものと感じている。別の言葉では、「紙幣の大増刷」に直面した「世界各国の中央銀行」が「紙幣の代わりに、デジタル通貨の発行可能性を考えた状況」のことでもある、この時に必要とされるのは、「商品と通貨の関係性」の理解とも考えている。
より具体的には、「中央銀行が、どのような根拠や方法により、デジタル通貨の発行が可能なのか?」ということだが、実際には、「お金の根本」に存在する「信用」が重要な意味を持っているのである。つまり、100年ほど前に設立された「世界各国の中央銀行」については、それまでに蓄積された「国家の信用」、すなわち、「発展した実体経済」や「成長途上の民間銀行」などの「基礎」が存在したことも見て取れるのである。
別の言葉では、産業革命以降、「実体経済の成長」に伴い、より巨額の資金が必要とされたものの、「金貨本位制」のもとでは「資金供給量の制限」が存在したのである。そのために、その後、「三種類の金本位制」や「私が提唱する信用本位制」の移行が発生したわけだが、現時点で必要なことは、「中央銀行のデジタル通貨の大量発行が実現した時に、どのような事態が想定されるのか?」ということであり、基本的には、「実物資産への資金大流入」、すなわち、「大インフレ」が予想されるものと考えている。
つまり、「お金の性質」としては「価値のある商品に資金が集まり、価格が上昇する」という点が指摘できるが、今後、仮に、「大量のCBDC(中央銀行のデジタル通貨)」が発行された場合には、「世界中の人々が、希少価値を持つ実物資産に殺到し始める状況」が想定されるのである。別の言葉では、「紙幣」と「デジタル通貨」の違いは、「発行コスト」であり、また、「金融界の白血病を引き起こさない可能性」とも考えているが、「CBDC発行の結果」として予想されることは、「国家信用の激減」であり、また、「紙幣に対する需要の急増、そして、目に見えない通貨に対する危機意識の高まり」とも感じられるのである。
より具体的に申し上げると、「金利も付かず、目にも見えない通貨」が大量発行されたときには、「金融システム」の根本である「民間銀行の存在意義」が脅かされるだけではなく、「実体経済」に対しても、壊滅的な打撃を与えるものと考えているが、最も重要な点は、やはり、古典的な意味での「インフレ(通貨価値の下落)」が発生する可能性である。(2021.5.25)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
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〔opinion11048:210625〕