世界的なインフレ税
6月12日付の日経新聞に掲載された「米国におけるインフレ税の衝撃」に関する記事は、全く納得がいかない内容だった。つまり、「税金の種類」としては、以前から申し上げているように、「見える税金」と「見えない税金」の2種類に大別が可能であり、また、「見える税金」についても、「現在の税金」である「消費税や所得税」、そして、「将来の税金」である「国債の発行」に分けることが可能な状況とも言えるのである。
また、「見えない税金」が、本来、「インフレ税」と呼ばれるものであり、この時にも、「国民が気付く段階」と「気付かない段階」に分類されるのである。具体的には、「量的緩和(QE)」などの「リフレーション政策」、すなわち、「国民の預金などを使い、超低金利状態を作り出した展開」については、「国民の預金を、国民が気付かないうちに、国債などに転換した状況」だったことも見て取れるのである。
そして、現在では、「国民が気付く段階でのインフレ税」が世界的に課され始めたわけだが、このことは、「インフレの大津波が、世界全体を襲い始めた状況」を表しているのである。別の言葉では、従来の手法である「量的緩和」が、「デジタル通貨の枯渇」により 実施不能な状況となったために、「中央銀行のバランスシートを、どのようにして膨張させるのか?」に関して、新な手法が模索され始めたのである。つまり、従来ならば、「紙幣の増刷」という手法が取られるわけだが、この副作用として発生する現象が「金融面での白血病」のために、現在では、「中銀デジタル通貨の発行」が模索されているのである。
しかし、この点については、現在、「デジタル通貨がリアル商品に流れ始めた状態」、あるいは、「金融界のブラックホールに隠れていたインフレ圧力が、一気に、実体経済にあふれ始めた状態」となっているのである。そして、このことが、「国民が気付き始めたインフレ税」を意味するわけだが、今後の展開としては、「値上がりするものに資金が集中する」という「お金の性質」が発揮される事態が予想されるのである。
つまり、「穀物」や「貴金属」、あるいは、「食肉」や「非鉄」などの「数量が限られた資源」に対して「大量の資金が殺到する展開」のことだが、このような状況下で予想されることは「物価指数の急騰」であり、また、この対抗策として取られる「金利の上昇」である。別の言葉では、古典的な意味での「大インフレの発生」であり、この点を理解することは、今後の数年間を生き延びる上で、必要不可欠の認識とも思われるが、残念ながら、現在でも、ほとんどの日本人は、この事実を認めたくないようにも感じられるのである。(2021.6.13)
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真の信用乗数
過去20年間は、「デリバティブが大膨張した期間」であり、この結果として、「経済理論」においても、従来とは違った展開となったようにも感じている。具体的には、「インフレ」や「デフレ」に関して、「デリバティブ」が過剰な影響を及ぼした可能性でもあるが、この点を理解するには、「どのような通貨が、どのような商品に流れたのか?」、あるいは、「真の信用乗数」を理解する必要性でもあった。
つまり、「信用乗数」とは「中央銀行が出したお金が、市場で何倍にまで膨れ上がったのか?」を計測する指数であり、このことから理解できることは、「通貨(マネー)に対する市場の信用度」ということである。別の言葉では、「この数値が高ければ高いほど、マネーに対する人々の信用度が高い状況」を表しており、私自身としては、今まで、「表面上の信用乗数」である「1990年前後の約13倍」がピークだと考えていた。
しかし、今回、「デリバティブの影響力」を改めて考慮すると、「簿外取引(オフバランス)で大膨張したデリバティブ」については、「信用乗数の計算に入れるべきではないか?」とも感じられたのである。つまり、「日本の信用乗数」については、現在、「日銀が出すベースマネーが約650兆円」、そして、「マネーストックのM2が約1168兆円」という状況であり、結果として、「約1.8倍の信用乗数」となっているのである。
そして、今回、この数字に調整を入れるべきだと考えているが、実際の方法としては、「2008年前後にピークを付けたデリバティブ」に関して、「世界全体で約8京円にまで達した残高が、信用乗数に対して、どのような影響を与えたのかを、イメージで把握する手法」しか取れないものと考えている。つまり、今回は、「世界の中央銀行が、協力して、相互の資金調達を図った」という状況であり、そのために、「真の信用乗数」は、「一国だけでは難しく、世界全体で考慮する必要性」が存在するものと思われるのである。
より具体的には、「金融界のブラックホール」の内部で、「世界全体の信用乗数が、2008年前後にピークを付け、その後、急速に収縮を始めている状況」のことだが、実際には、「私の想定以上に膨れ上がった信用乗数」が、現在、「1991年のソ連」などと同様に、「一挙に、1倍に近づいている段階」とも思われるのである。つまり、現在は、「インフレの大津波が、世界全体を襲い始めた段階」とも考えているが、この点に関して、注意すべき出来事は、やはり、「国債価格の暴落」、すなわち、「金利の急騰」が、「いつ、世界的に始まるのか?」だと感じている。(2021.6.15)
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中沢新一氏のレンマ学を読んで
中沢新一氏の「レンマ学」は、私の人生において、たいへん衝撃的な書だったが、その理由としては、「量子力学」と「言語学」という「まったく新たな境地」に、私自身を導いてくれたからである。しかも、「お金の謎」と「時間のサイクル」、そして、「心の謎」を考え続けてきた結果として、現在では、私自身の「心の仮説」が完成したものと考えているが、今回は、この仮説に関しても、私自身の確信が強まることが可能な状況だったのである。
別の言葉では、「精神世界から人間の世界へ、どのようにして情報が伝わるのか?」、あるいは、「人間は、どのようにして、神の智慧を取得するのか?」に関して、具体的なメカニズムが示された状況のことである。つまり、「巨視的物理学」である「古典的物理学」から「今後の物理学」、すなわち、「量子力学」という「微視的物理学」への移行により、「物質文明」から「精神文明」への道筋が見えてきた可能性である。
ただし、残念な点としては、「肉体」と「精神」の関係性において、「心が、どのような役割を果たしているのか?」が明快ではなく、また、「東洋の数字」とも言える「十干十二支」が理解されていない点である。つまり、明治以前の日本人は、「年、月、そして、日」の表記に「十干十二支」を用いてきたわけだが、この暦の面白い点は、「意味を持つ文字が、同時に数字を表している」という事実である。
より具体的には、「十干」が「物事の本質」や「目に見えない精神」を表し、一方で、「十二支」が「表面上の出来事」や「目に見える現象」を表し、また、それらの組み合わせで、さまざまな「未来の予言」も可能になるのである。つまり、中国の戦国時代に作り上げられた「四柱推命」などは、「年や月、そして、日と時間」の分析により、いろいろな予測が可能な状況だったのである。
そのために、今後の展望としては、「認知言語学」などの発展により「人間が使う言葉が、どのような可能性を秘めているのか?」、そして、「量子力学」の応用により、「仏教が切り開いた神の智慧に辿り着く方法論」などが、深く認識されるものと思われるのである。つまり、現代の「お金(マネー)」が、いかに頼りないものであることに気づかされた人類が、今後、より頼りがいのある「天や神の智慧」に向かい始める可能性のことだが、今回は、この点に関して、実に興味深い事実を教えられるとともに、今までの「私の道筋」に関して、より強い確信を持つことができた状況であり、後は、具体的な方法論を導き出すだけの段階のようにも感じられるのである。(2021.6.20)
本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
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〔opinion11129:210722〕