本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(318)

著者: 本間宗究(本間裕) ほんまそうきゅう:ほんまゆたか : ポスト資本主研究会会員
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統計学の盲点

「目に見える事実しか信用しない」というように、「自然科学の信奉者となった現代人」にとって「統計上の数字」は、「科学の正当性を証明する手段の一つ」となっているようである。つまり、「統計に表れた数字を過信する状態」となっており、そのために、「世界の全体像が見えにくくなっている状況」のようにも感じられるが、この理由としては、「インフレ指数が把握する商品が、全体のわずかな部分にすぎず、しかも、操作が行われやすい状況」となっている点が指摘できるものと感じている。

別の言葉では、「金融システムの実情を知られたくない人々」、あるいは、「現在の超低金利状態を維持したい人々」などが、「自分の有利なように、統計数字を操作している可能性」も、いろいろな分野で指摘されているのである。そのために、現在、「世界の全体像」を知るためには、「単なる数字」を信用するだけではなく、「自分の感覚」を総動員させる必要性があるようにも感じられるのである。

より具体的には、「5個のリンゴ」という言葉が「どのような実態を表しているのか?」を改めて考えることでもあるが、実際には、それぞれのリンゴは、決して、同じ数字で説明されるようなものではなく、また、数字で表されることにより、個性が失われる可能性も考えられるのである。別の言葉では、「日本の失業率は約4%である」という説明が表わすように、「現在では、個人が社会の部品となり、その結果として、個人の活力が失われた状況」のようにも思われるが、このことも、「1600年前の西ローマ帝国時代」と同様に、「近代社会で、オリンピックが復活し、活発になった理由」とも言えるようである。

つまり、「西洋の時代」の最終局面においては、必ず、「物質文明」の代表である「マネー」が大膨張し、ピークを付けるわけだが、今回の問題点は、「統計学の悪用などにより、実態が見えなくなっている状況」とも考えられるのである。別の言葉では、「お金の性質」である「大インフレで雲散霧消するまで、通貨の膨張は継続する」という事実が理解されていないために、「デジタル通貨への過度な信用」などが生まれている状況のことである。

そのために、今後の展開としては、「竜宮から戻った浦島太郎が、玉手箱を開けて慌てる状況」、すなわち、「現在のデジタル通貨は、信用本位制の下でしか通用することができなかった」という事実に気付かされる時が到来するものと考えられるのである。ただし、歴史の面白い点は、その時から、本当の「人類の知恵」が活躍し始め、より創造的な時代が始まる可能性とも言えるようである。(2021.6.22)

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金利上昇のインパクト

6月25日に発表された「3月末の資金循環表」によると「日本国民の個人金融資産は約1946兆円」、そして、「個人の預金増額は約1056兆円」にまで増えているとのことである。つまり、日本人の多くは、依然として、「預金を持っていれば安全だ」と考え、「マイナスの実質金利」が意味する「すでに、預金の実質的な目減りが始まった状況」に気づいていないものと考えられるのである。

そして、今後、「金利が上昇すれば、以前のように、金利が貰える時代が再来する」とも考えているようだが、今回は、「短期金利が1%にまで上昇すると、どのようなことが起こるのか?」について具体的な説明を行ってみたいと考えている。つまり、「誰が金利を払うのか?」ということだが、「1056兆円の預金に対して、1%の金利は10.56兆円に相当する」という事実、あるいは、「民間金融機関、そして、日銀のバランスシートに、どのような変化が発生するのか?」を考えると、「決して、安穏としてはいられない状況」とも思われるのである。

より具体的に申し上げると、「1056兆円の預金」については、「民間の金融機関と日銀が、ほとんど全ての金額を、国債に転換した状況」、すなわち、「国民の預金を借りて、国債を買い付けた状況」とも言えるのである。別の言葉では、「日銀が、当座預金などの名目で短期資金を借りて、国債などの長期投資を行っている状況」、また、「民間銀行も、集まった預金の一部を、国債に投資している状況」となっているのである。

そして、この時の問題点は、「短期金利が1%にまで上昇すると、どのような危機が発生するのか?」ということだが、「日銀の決算発表」から見えることは、「国債投資から得られる利息は約1.1兆円で固定されながら、一方で、当座預金への利払いは、約5兆円にまで増える可能性」である。つまり、「大幅な赤字決算」が予想されるわけだが、この時に、「日銀が、どのようにして、赤字を埋めるのか?」については、基本的に 「日銀券の増刷」であることが、過去の歴史が教えることである。

ただし、「紙幣は、コンピューターネットワークの中を流れない」という「金融界の白血病」も予想されるために、「中央銀行の中央銀行」と呼ばれる「BIS(国際決済銀行)」は、現在、必死に、「中銀デジタル通貨(CDBC)の正当性」をアピールしようとしているようだが、実際には、「日本人」も「預金への信頼感」を失いつつあり、今後は、戦後の混乱時と同様に、「換物運動」に殺到する可能性も想定されるようである。(2021.6.27)

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BISのギブアップ宣言

6月29日に発表された「BIS(国際決済銀行)の年次レポート」では、「1980年代から始まった貧富の格差は、現在、あまりにも巨大なものとなり、すでに、金融政策では修復が不能な状態に陥っている」と述べられている。つまり、「中央銀行の中央銀行」と呼ばれる「BIS」は、今回、驚いたことに、「金融戦争の敗北宣言」とでも呼ぶべきコメントを発表したのである。

そして、この原因としては、やはり、「デリバティブのバブルと、その後の破裂」が指摘できるものと考えている。しかし、今回の年次レポートでは、残念なことに、この点が触れられておらず、単に、「貧富の格差が、現在、きわめて大きくなっている事実」や「大膨張した国家債務からの出口戦略として、すでに、最後の手段を取らざるを得ない状況」などが述べられているのである。別の言葉では、「中銀デジタル通貨の実現性」に触れてはいるものの、「通貨の歴史」や「通貨の本質」を熟知しているために、「これ以上の時間稼ぎができなくなった事実を暴露した状況」のようにも感じられたのである。

より具体的には、「過去のインフレ」などに言及しながら、「今後、どのような展開が予想されるのか?」について説明を始めているが、「1971年からの50年間で、どれほどの大変化が発生したのか?」を振り返ると、「BISといえども、今後の衝撃に対して、身構えざるを得ない状況」のようにも感じられるのである。つまり、現在の「デジタル通貨」に関して、今後、「ほとんど価値が無くなる状況」、すなわち、「金融敗戦後の大混乱に関して、誰も、想像ができない状態」も想定されるのである。

別の言葉では、「デリバティブのバブル崩壊」、そして、「金利やインフレ率の急騰」という大変化が、間もなく、想定されるわけだが、この点に気付いていない人々は、「第二次世界大戦後の日本人」と同様に、慌てて、「換物運動」、すなわち、「預金を現物に交換し始める動き」を始めるものと思われるのである。つまり、「食料」や「貴金属」などの実物資産に殺到する事態のことだが、残念ながら、現時点では、「オリンピックの後に、どれほどのコロナ患者が発生するのか?」が国民の主な関心事とも言えるようである。

そのために、現時点で必要なことは、「過去1年余りのコロナ・ショック」を忘れ、「それまでに、どのようなことが起こっていたのか?」を思い出すことであり、実際には、「異次元の金融緩和により、国民の資産が、ほとんど、食い潰されていた事実」を、よく振り返ることだと感じている。(2021.6.30)

本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion11162:210803〕