本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(321)

著者: 本間宗究(本間裕) ほんまそうきゅう:ほんまゆたか : ポスト資本主研究会会員
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ウェルズ・ファーゴの異変

7月9日付けの「ブルムバーグ」では、驚いたことに、「米銀のウェルズ・ファーゴが、既存の個人向け与信枠をすべて閉鎖し、同サービスの新規提供も取りやめる」との報道があった。つまり、「個人向けの貸し出しビジネスから、全面的な撤退を行う状況」のことであり、現在、この点に関して、いろいろな憶測が飛び交っていることも見て取れるが、私自身としては、「FRBの状況からも明らかなように、米国全体で、流動性の不足が発生している状態」だと考えている。

より具体的には、「2008年のリーマンショック」以降、「世界各国の中央銀行は、量的緩和(QE)の名のもとに、デリバティブの処理を実施してきた状況」だったが、現在では、「デジタル通貨の枯渇により、これ以上の処理が難しくなった状況」とも考えられるのである。つまり、従来の「中央銀行が民間から資金を借り入れて、国債の大量買い付けを行い、超低金利状態を維持する方法」が難しくなっているわけだが、この理由としては、「中央銀行の借り入れ」が難しくなった点が指摘できるのである。

別の言葉では、「お金の仕組み」、あるいは、「金融システムのメカニズム」からは、「中央銀行が、『紙幣の増刷』という最後の手段を行使せざるを得ない状況」とも言えるわけだが、この結果として予想される展開は、「金融面の白血病」、すなわち、「紙幣がコンピューターネットワークの中を流れることができない状況」とも考えられるのである。そのために、現在では、「米国のFRBが、リバースレポという短期資金の調達方法により、約1兆ドル(約110兆円)を市場から借り入れている状況」となっており、このことが、今回、「ウェルズ・ファーゴの異変」に繋がったものと想定されるのである。

そして、今後は、典型的な「クラウディングアウト」、すなわち、「国家の資金需要増が引き起こす金利上昇」が想定されるが、この点に関する問題点は、「大量に発行された債券の存在」とも言えるのである。つまり、「国家」のみならず「民間」においても、「大量の借金」が存在するために、「わずかな金利上昇が金利負担を増やし、その結果として、更なる借金を重ねる展開」が考えられるのである。

より具体的には、古典的な「インフレの発生」でもあるが、今回の問題点は、いまだに、「1971年のニクソンショック」から始まった「信用本位制」という新たな通貨制度の存在に気付いていない事態であり、また、今後、この点が理解された時には、「実物資産の調達」が難しくなっている可能性である。(2021.7.15)

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西洋哲学の存在論

「ハイデッガー(1889年-1976年)」の「存在と時間」によると、「西洋哲学の存在論」は、「アリストテレス(紀元前384年-332年)」の頃から議論が始まり、その後、「私は考える、故に、私は存在する(われ思う、故に、我あり)」という言葉で知られる「デカルト(1596年-1650年)」などに引き継がれたものの、いまだに、「私とは一体誰なのか?」、「考えるとは、どういうことか?」、あるいは、「存在とは、何を意味するのか?」などの疑問が解決できない状況とも指摘されている。

つまり、「存在の意味」という「なぜ、いろいろな現象が、実際に発生するのか?」という問題が、いまだに解決されていないわけだが、この点については、「人知」と「神の計らい」が、大きな意味を持っているようにも感じている。別の言葉では、私自身の「45年に及ぶ相場の経験」が参考になるものと思われるが、実際には、「人々の予想や既存の理論が、ほとんど役に立たなかった状況」のことである。

より具体的に申し上げると、「1971年のニクソンショック以降のマネー大膨張」については、「人類が、全く、予想できなかった展開」であるものの、「100年ほど前から始まったミクロの物理学革命」については、「神の計らい」であり、また、「目に見えないデジタル通貨が、どのような役割を果たすのか?」を想定したうえでの変化だったようにも感じられるのである。

つまり、「相場は常に正しく、また、実際に発生した現象は、すべてが神の思惑によるものである」ということが、現時点の「私の感想」でもあるが、この点に関して、「人知は、詭弁的な役割しか果たしていなかったのではないか?」とも思われるのである。別の言葉では、「神の智慧に到達できた人々が、実際の成功者だった」という感想のことでもあるが、同時に注意すべき点は、「神には、最初に持ち上げて、その後、谷底に落とす傾向」があるようにも考えられるのである。

具体的には、「バブルの発生と崩壊」に関する数多くの例からも明らかなように、「宇宙の法則」には、結局のところ、「長期の観点において、すべてが平等になる」という点に収束するものと想定されるのである。あるいは、「日々の生活を繰り返しながら、どれほどの深みにまで、自分の心を掘り下げ、神の智慧に到達が可能なのか?」ということでもあるが、これから想定される「世界的な金融敗戦」、そして、「インフレの大津波」については、この点に関する最も大きな具体例のようにも思われるのである。(2021.7.21)

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自然科学と社会科学の次元格差

100年ほど前から「自然科学の次元急上昇」という大きな変化が始まっていたものと思われるが、実際には、「マクロの物理学」と言われる「ニュートンの古典力学」が切り開いた「四次元の世界」から、「ミクロの物理学」と言われる「量子力学」が切り開いた「より高次の異次元世界」、すなわち、現在、「11次元の世界」までに認識されている状況のことである。つまり、「目に見える大自然界」から「目に見えない法界(ほっかい)」へ「自然科学者の興味と関心」が移行しているものと考えられるが、一方で、「人間社会を分析する学問」においては、「経済学」を筆頭にして、いまだに、「三次元」に留まっていることも見て取れるのである。

より具体的には、「現時点における実体経済だけの分析」にとどまっている状態のことだが、この結果として発生した事態としては、「マネーの大膨張が引き起こした地球の温暖化」とも考えられるのである。つまり、「一部のメガバンクが創り出したデリバティブ」、そして、「先進各国が、この事実を利用し、異常な超低金利状態を産み出した事実」により、現在では、「世界全体で、地球環境よりも、お金の方が大切である」というような意識が産み出されてしまったのである。

別の言葉では、「お金の謎」や「金融システムのメカニズム」などが解明されなかったために、「先進各国の当局者や一部のメガバンクが、大きな利権を獲得した状況」のことである。つまり、「過剰な債務を基本にした、異常な消費社会の形成」のことでもあるが、実際のところ、「大都市の形成」、そして、「高層ビルやタワーマンションなどが乱立する状態」については、すでに、「文明社会の墓場」と揶揄する人も出ているのである。

そして、今後の懸念としては、「超低金利状態が産み出す経済的な利益」よりも、「自然災害による経済損失」の方が、はるかに大きくなる状況、すなわち、「大自然の摂理が働き出した結果として、人類の淘汰が始まる展開」も想定されるのである。つまり、「社会科学の次元上昇が起こらない限り、自然災害が悪化し続ける可能性」のことでもあるが、現在の問題点としては、いまだに、「多額の投資により、自然環境が守られる」という錯覚が指摘できるようである。

別の言葉では、「大インフレによるマネーの消失」こそが、新たな時代を生み出す原動力になるものと考えているが、この点に関して参考になるのは、やはり、「明治維新」や「第二次世界大戦」の後に、「日本人」が見せた行動力だと感じている。(2021.7.22)

本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
〔opinion11220:210821〕