本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(331)

著者: 本間宗究(本間裕) ほんまそうきゅう:ほんまゆたか : ポスト資本主研究会会員
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中国の恒大集団は第二のリーマンとなるのか?

現在、「中国の恒大集団が、第二のリーマンとなるのか?」という疑問が高まっているが、この点については、「金融システムの正確な分析で、理解や予測が可能ではないか?」と考えている。つまり、「リーマンショックが、なぜ、発生したのか?」、そして、「その後、どのような変化が起こったのか?」を、具体的な数字で分析することにより、「今後、どのような変化が訪れるのか?」が見えてくる可能性のことである。

具体的に申し上げると、「2008年のリーマンショック」については、すでに、海外で「GFC(金融大混乱)」という言葉が使われているように、「民間銀行が簿外で保有するデリバティブの残高がピークを付け、減少を始めたこと」が、最も大きな要因だったものと考えられるのである。そして、その後の展開としては、「中央銀行による、いわゆる量的緩和(QE)が実施され、その結果として、マイナス金利まで発生した」という状況だったが、このことは、「デリバティブが産み出したデジタル通貨を利用して、デリバティブバブルの崩壊を隠蔽しようとした動き」とも言えるのである。

つまり、ピーク時に「約8京円」だった規模が、「約6京円」に収縮したものの、現在では、デジタル通貨の枯渇により、「世界各国の中央銀行が、間もなく、大きな決断を迫られている状況」とも言えるのである。別の言葉では、今まで、「民間から資金を借りて、国債の買い付けを実施してきた」という状況だったが、現在では、「借りる資金が枯渇し始め、紙幣の増刷を迫られている段階」となっているのである。

このように、「デリバティブという金融タワー」の残高ピークで発生した事件が「リーマンショック」であり、また、その後、「もう一つの金融タワー」の積み上がりがピークを付けた段階で発生したのが、今回の「中国の恒大集団事件」だったのである。そして、この時の注目点は、「誰が、不良債権を引き受けることができるのか?」ということだが、「2008年当時は、中央銀行が引き受け手となったものの、現在では、紙幣の増刷で国民が引き受け手となる方法しか残されていない状況」とも言えるのである。

そして、このことが、典型的、かつ、古典的な「インフレ」を意味するわけだが、今回、最も難しかった点は、やはり、「デリバティブの二面性」、すなわち、「金融商品と通貨が同時に産み出された状況」とも言えるようである。あるいは、「通貨と商品の非対称性」、すなわち、「商品はフローでありながら、通貨はストックであり、インフレでしか消滅しない」という性質だったものと感じている。(2021.9.28)

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中央銀行に残された手段

現在、世界的に議論されていることは、「テーパリング(量的緩和の縮小)や利上げの時期」でもあるが、この点に関して注意すべきポイントは、「現在、どれほどの金利負担が発生しているのか?」、あるいは、「金利上昇が、金融システムに対して、どのような影響を及ぼすのか?」だと考えている。つまり、多くの人々が、「20年以上も継続した超低金利や最近のマイナス金利の状態」に慣れ切ったために、「負債残高と金利の相関関係」を忘れ去った可能性があるようにも感じられるのである。

具体的に申し上げると、「マイナス金利の効用」としては、「国家の債務残高に関して、増加スピードの減少」が挙げられるが、一方で、「金融システムの全体像」からは、「民間金融機関が、金利分を負担した構図」も見えてくるのである。別の言葉では、「量的緩和(QE)の実施により、国家の財政問題は、時間的な猶予を得ることが可能だった」という状況だったが、一方では、残高が増えた展開だったことも理解できるのである。

つまり、「超低金利やマイナス金利に慣れ切った現代人は、金利負担の重みや金利を受け取るメリットを忘れたのではないか?」ということだが、実際のところ、「日銀は、短期金利が0.3%に上昇するだけで、赤字に陥る可能性」が存在し、また、「日本の国家は、金利が5%に上昇すると、税収のほとんどが金利負担で消滅する可能性」も考えられるのである。別の言葉では、今後、最も注目すべき点は、「大量に積み上がった負債を、どのようにして処理するのか?」という「きわめて当たり前の問題」とも言えるわけだが、実際には、「MMT(現代貨幣理論)」などの「バブル期に特有の詭弁的な理論の出現」により、ほとんどの人々が煙に巻かれた状況となっているのである。

そのために、今後、最も注目すべき点は、「中央銀行が、どのような手段を講じるのか?」ということであり、実際には、「紙幣の増刷」しか残されていない状況とも思われるが、最近、議論され始めたことは、前述の「金利上昇による出口戦略」、すなわち、「インフレに対応するためには金利を上げるべきだ」という意見とも言えるのである。つまり、このことは、典型的な「三次元の経済学」であり、「過去の推移が全く無視された状況」とも言えるわけだが、残念ながら、現在でも、この点を批判する人が現れない状況となっているのである。

そのために、今後の注目点は、今まで以上に、マスコミの議論に踊らされないことであり、また、未曽有の金融混乱に備えることであり、実際には、「1923年のドイツのハイパーインフレ」を参考にして、今後の展開を予想することである。(2021.9.29)

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追い詰められた米国の債務上限問題

9月30日の米国議会では、「12月3日までのつなぎ予算は署名されたものの、債務上限問題が切り離された」と報道されている。つまり、「10月18日に期限を迎える」と言われている「米国の債務上限」については、いまだに解決されていない状態となっているが、今回は、今までとは違う大問題が隠れているものと感じている。具体的には、「上限を増額しても、国債の買い手が存在しなくなる可能性」のことだが、この問題を判断するポイントは、やはり、「米国FRBのバランスシート」にあるものと考えている。

より詳しく申し上げると、「9月29日現在のバランスシート」から判断できることは、「総額が約8.5兆ドル(約943兆円)」という状況であるものの、「負債項目」に関して、最近、劇的な変化が発生している事態である。つまり、「レバースレポ」という「超短期の負債」が急増している展開のことだが、実際には、現在の残高が「約1.7兆ドル((約188兆円))」というように、「一年前の約0.11兆ドル(約12.2兆円)」と比較すると、信じられないほどの激増状態となっているのである。

そして、この理由としては、「国債の買い手」が激減した点に加えて、「量的緩和(QE)の行き詰まり」が指摘できるものと考えている。別の言葉では、「FRBの資金繰り」に関して、「資金の出し手」がいなくなった状況が想定されるわけだが、実際には、「借金が難しくなった個人が、サラ金に手を出したような状態」とも思われるのである。そして、このような状況下で考えなければいけない点は、「仮に、国債の上限が増額されても、資金繰りの問題は解決しない」という事実である。

別の言葉では、「1991年のソ連」と同様に、「国債の買い手」が消滅した時に、「ほぼ瞬間的に、金利の急騰が発生する」という展開が想定されるわけだが、現時点でも、「ほとんどの人が、この事態を憂慮していない状況」とも言えるようである。つまり、「天災や人災は、人々が忘れた時に発生する」という言葉のように、今回は、「コロナよりも財政破たんが引き起こすインフレの方が気がかりの状態」とも思われるのである。

そして、このことは、「相場の格言」とも言える「人々が恐れる事態は発生せず、予期していなかった事件が発生する」という事態とも合致するものと考えている。つまり、「ソ連崩壊から30年目の2021年」に、「目に見えない金融ツインタワーの崩壊が、世界的な大インフレを引き起こした」というような展開のことだが、「10月の相場」については、このような認識をもって見守る必要性が存在するものと感じている。(2021.10.2)

本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。

〈記事出典コード〉サイトちきゅう座http://www.chikyuza.net/
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