本間宗究(本間裕)の「ちきゅうブッタ斬り」(123)

著者: 本間宗究(本間裕) ほんまそうきゅう:ほんまゆたか : ポスト資本主研究会会員
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量的緩和と金融引き締め

いまだに、「日本」では、「量的緩和の実態」が理解されていないようにも感じているが、「2001年」から始まったことは、かつての「準備預金」が、「当座預金」に名称変更されたことである。つまり、かつては、「準備預金の増加」が「金融引き締め」を意味していたのだが、「2001年以降」は、「当座預金の増加が、金融緩和である」という理解や解釈をされるようになったのである。

そして、このことが、「日本の失われた20年」が発生した、最も大きな原因の一つだと考えているが、具体的には、「名目GDP」が、「1995年以来、約500兆円で、横這いの状態」となっているのである。しかし、一方で、「マネーストック」である「M2」については、現在、「約923兆円」にまで増加しており、本来ならば、「過剰流動性相場」が発生していても不思議ではない状況とも言えるのである。

このように、現在の「日銀の量的緩和」については、実際のところ、「金融引き締め」であり、実際には、「約280兆円もの資金」が、「日銀」により吸い上げられた状況となっているのである。しかも、この時に、「ゼロ金利」や「マイナス金利」が実施されたために、より一層、「市中に、資金が出回らない状態」となっているのだが、このことは、「名ばかりの量的緩和」、あるいは、「実質上の金融引き締め」が実施されているために、「日本の景気が冷え込んでいる状況」とも考えられるのである。

しかし、これから予想されることは、「日銀が吸い上げた資金」が、「一挙に、市場に流れ出す状況」でもあるが、実際には、「約280兆円の当座預金」に関して、「日銀が維持できなくなる状況」のことである。具体的には、「国債価格の暴落」が始まると、全面的な「金利上昇」が起き、その結果として、「民間金融機関は、一斉に、当座預金の取り崩し」を始めるものと考えているが、残念ながら、現在の日本では、この点を憂慮する人が、ほとんど存在しない状況となっているのである。

つまり、かつての「銀行不倒神話」と同様に、「日銀は、決して、破綻することが無い」と信じられているようだが、実際には、「日に日に、日銀の資金繰りが悪化している状況」とも考えられるのである。具体的には、「マイナス金利」により、「保有している国債」に関して、大きな損失が出るとともに、依然として、「当座預金」に対しても、多くの部分に「0.1%の金利」を払っているからだが、この結果として、現在では、前述の「当座預金の取り崩し」が、間近に迫っている段階のようにも感じられるのである。(2016.5.2)

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ダメージの蓄積

今回の「熊本の大震災」では、「ダメージの蓄積」という言葉が使われたが、このことは、「度重なる地震により、徐々に、建物にダメージが蓄積されていき、最後に崩壊した状態」のことである。つまり、最初の「震度7」の地震で倒れなかった建物が、その後の地震により、崩壊したのだが、この点については、現在の「世界的な金融システム」と似たような状況とも考えられるようである。

別の言葉では、「市井の経済学者」と言われた「高橋亀吉氏」が強調されていた「限界点」の話に繋がるようにも感じているが、実際には、「100キロの荷物を載せることができる椅子に、徐々に、荷物を載せていく状況」のことである。つまり、最初に、「30キロの荷物」を載せても、その椅子はびくともしないのだが、その後、徐々に、荷物を載せていき、「総量が100キロを超えた時点で、椅子が、あっという間に崩壊する状況」のことである。

そして、この事実を、「高橋亀吉氏」は、経済学に、頻繁に応用されていたが、実際には、「どれほど無理な状態が継続可能なのか?」に関する考察であり、現在の状況に当てはめると、「世界の金融システムが、どこまで維持可能なのか?」ということである。つまり、「2007年のサブプライム問題」や「2008年のリーマンショック」、あるいは、その後の「量的緩和」の時に言われたことが、「世界経済が大恐慌の状態に陥る可能性」だったが、実際に起きたことは、「ゼロ金利」のみならず、「マイナス金利」だったのである。

つまり、「中央銀行の無謀な国債買い付け」により、世界の「国債価格」が、未曽有の規模で「バブルの状態」となったものと考えているが、現在では、この点が、全く無視されているのである。しかも、この時に、「中央銀行は、今後も、更なる国債の買い付けが可能である」と、固く信じ込まれているようだが、実際には、間もなく、限界点に達するものと思われるのである。

このように、現在では、「2000年のITバブル」や「1990年の日本株バブル」とは、比較にならない規模で、世界的な「国債バブル」が発生しているようだが、「バブル」には、「弾けた時に、始めて、その存在に気付く」という性質が存在する。そして、気付いた時には、すでに「手遅れの状況」となることも予想されるのだが、今までの度重なる「ダメージの蓄積」を考慮すると、現在では、時間的な余裕がなくなるとともに、今後は、未曽有の規模で、「インフレ(通貨価値の下落)」が発生するものと考えている。
(2016.5.2)

本間宗究のコラムhttp://www.tender-am.com/column.html より許可を得て転載。
〈記事出典コード〉サイトちきゅう座 http://www.chikyuza.net/
〔opinion6126:160601〕